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SKイノベーション「バッテリー分離膜」で世界一めざす


2008年末当時、崔泰源(チェ・テウォン)SKグループ会長はSKイノベーション研究所を訪問し、リチウムイオン電池の分離膜(LiBS)事業の現状報告を受けた。世界金融危機の影響で投資環境は容易でない状況だったが、チェ会長は増設が必要だという役員の慎重な報告に、逆に「ひとつだけでいいだろうか、2つにしよう」と大胆なアプローチを注文した。当時の決定で忠清北道のチュンピョン工場に生産ライン2つを追加で稼動させ、業界の後発走者だったSKイノベーションは2014年には分離膜製造で世界2位に登板することになった。

半導体事業に続き、電気自動車用バッテリー事業でもチェ会長の積極的な投資本能が光を放っている。電気自動車用バッテリーを構成する主要素材であり、高付加価値を創出する「分離膜」部門で、10年ぶりに果敢な増設投資が展開されているからだ。業界は世界1位のサプライヤである旭化成と2位のSKイノベーションのあいだの競争構図で、早ければ2021年ごろにSKイノベーションが世界1位のサプライヤに跳躍する可能性をあげている。

バッテリー分離膜はリチウムイオン電池内の陽極と陰極の間に位置している。薄いフィルム状の素材で、電極間の直接的な接触を防ぎつつ、微孔でリチウムイオンのみを通過させて電流を発生させる。日本と米国の企業による寡占市場で、SKイノベーションは2000年代の初めに独自っで技術を開発しはじめて、ついに2004年には国内初であり世界で3番目に独自開発に成功した。

忠清北道清州工場の1~3号ラインで分離膜を製造し始めて、商業生産2年めの2007年から黒字転換を実現し、バッテリ事業が収益性を高める高付加価値領域であることを証明した。特に商業生産の初期にはスマートフォンなどの情報技術(IT)デバイスを中心とした素材事業で市場規模は大きくなかったが、電気自動車市場がますます大きくなり、電気自動車用バッテリー用分離膜の需要が伸び始めた。チェ会長が2008年末に果敢な増設投資を断行したのも、電気自動車市場のこのような高成長の流れを看破したためだ。

商業生産9年を迎えた2014年には清州・チュンピョン工場で総5つのラインをフル稼働し、世界第2位の供給社に上がったSKイノベーションは、現在は1位の旭化成と熾烈なリード争いを繰り広げている。

今年の年末までに国内増設が完了したら、清州・チュンピョン工場で総13ラインがフル稼働する。これに加えて昨年10月、総4000億ウォンを投資して中国の江蘇省常州市に分離膜の生産設備4基を導入することを決定した。

SKイノベーションの分離膜の生産量は、2020年に中国本土で本格的に量産を行うと来年は8億5000万平方メートル規模に増え、旭化成の生産能力にかなり近接すると予想される。

日本のバッテリー業界によると、旭化成の分離膜の生産能力は2020年には最大11億平方メートルに達する見込みだ。業界関係者は、「米国(ジョージア州)とヨーロッパ(ハンガリー)でバッテリー工場の新規投資を進めているSKイノベーションは、分離膜の現地生産ラインを追加で構築する2021年ごろには生産能力で旭化成を追い越すこともありうる」とし、「 SKの内部でもいま増設投資をしなければ市場先行獲得の機会を逃すという認識が形成されたと聞いている」とした。内部的には2025年ころに目標を設定した世界1位の生産能力を、2021から2022年に前倒しにしたという。

これと関連し、キム・ジュンSKイノベーション社長は昨年10月に常州に対する投資計画を発表し、「世界2位の湿式分離膜の市場占有率を1位に引き上げる基盤を整えた」と語ったことがある。

業界の関係者は、「昨年の世界自動車市場で首位のフォルクスワーゲンとメルセデス・ベンツが、電気自動車市場に対する大規模な投資を相次いで発表した」とし、「2大顧客企業の投資発表だけでも、素材サプライヤであるSKイノベーションと旭化成のあいだの増設競争はいっそう加熱するだろう」と説明した。

SKイノベーションは現在、分離膜素材事業をはじめとするバッテリー部門の実績を公開していないが、業界では分離膜部門だけで今年は800億ウォン台の営業利益が、2021年には3000億ウォン台に急上昇すると予想している。
  • 毎日経済_イ・ヂェチョル記者 | (C) mk.co.kr
  • 入力 2019-01-27 20:26:45




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