A. | イタリア・ミラノに本社を置くハッキング専門会社「ハッキングチーム」があります。会社名そのものが非常に妙ですね。ハッキングで生活している会社なのです。 2015年7月5日の深夜(現地時間)、この会社が大騒ぎになりました。誰かがメインコンピュータの内部情報を丸ごと引き抜いてインターネットに載せてしまったのです。ツイッターのアカウントまで奪取し、名前を「ハッキングされたチーム」と変えてあざ笑いました。 そのとき、ハッキングチームの顧客に韓国の「国家情報院」が含まれているという事実も明らかになりました。「陸軍5163部隊」という名前で取引をしていたのですが、これは国家情報院のカモフラージュネームです。 国家情報院はハッキングチームに「カカオトーク検閲」機能を要求したという事実が確認され、国内の人事を査察しようとしたという情況が明らかになりました。のみならず、サムスンのスマートフォン「ギャラクシー」をイタリアに送って「カスタムハッキング」を依頼し、米国のスマートフォンメッセンジャー「バイバー」をハッキングしてほしいと要請したという事実も確認されました。また国産のワクチンプログラムであるアンラボを回避できるようにしてほしいと要求したという事実も明らかになり、衝撃を与えました。 論難を無視することができなくなった国家情報院は7月14日、国会情報委員会で「購入したという事実は正しいが、国民には使用していない」と釈明しました。 国家情報院がハッキングプログラムの購入を試みた時期は2010年です。このころに「ナナテック」という代行業者が国家情報院を代理してハッキングチームと接触し、ハッキングチームは2010年12月7日にソウルのあるホテルで製品を試演しました。交渉の末、2011年12月に契約が締結され、2015年7月まで5回にわたってアフターサービスを受けました。 国家情報院がハッキングチームに支払ったお金は8億ウォンで、国家情報院の農協口座からハッキングチームのドイツ銀行の口座に送金した領収書も出てきました。 国家情報院がナナテックを通じてハッキングチームとやりとりしたメールを見ると、国内の人事を対象に査察した可能性が大きく見えますが、国家情報院は「対北用」または「南派スパイ用」という主張を曲げませんでした。 関係者の中で唯一実名が公開されたナナテックのホ・ソング代表は、ハンギョレ新聞とのインタビューで「国家情報院のターゲットは、中国内の韓国人だった」と主張しました。 政府と捜査当局が微温的な態度を見せるなか、核心人物であるホ・ソングが海外に出国し、7月18日には国家情報院の3次長傘下技術開発局でハッキングプログラムの購入と運用実務を担当していたチーム長級の職員であるイム某氏が、自分の「マティス」乗用車で着火炭を燃やしたとされて遺体で発見されました。 イム氏は自殺直前まで国家情報院の内部で職務と関連した強度の高い特別監察を受けてきたといいます。しかし、彼の死は釈然としない部分があまりにも多くありました。 内国人の査察が無いのであれば、それを証明する根拠になるであろう資料を削除するというのが矛盾しているうえ、ほんとうに自殺したのかどうかも様々な疑惑が提起されました。 そして韓国GMから生産販売されているマティスは韓国で代表的な小型車で、主婦たちが買い物に行くときに乗って行くほどの車です。国家情報院で20年以上勤務して年俸が1億ウォンを超えるイム氏が、発売されて10年も経つマティスを半月前に買ったという事実そのものも不思議です。 国家情報院の職員たちが死亡現場に来て、証拠を操作した可能性など複数の疑惑がありましたが、警察は単純な自殺として捜査を終えました。 政権が変わったあと、国家情報院の積弊清算のために各種の政治工作事件を調査すると乗り出すやいなや、息子の死に疑問を抱いてきたイム氏の父親が「殺されたのだ」と他殺疑惑を提起しました。 2年以上も放置したあとに他殺疑惑を提起したことについては「葬儀の日程が長くなることもある」という警察の脅迫があったうえ、当時は陸士に在学中だった孫娘に被害があるか心配でイム氏の妻の引き止めがあったと打ち明けました。 イム氏の自殺について再調査が入った状態です。当然、彼が関与していた不法査察も再調査の対象となるでしょう。 |