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故盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領をモデルにした映画、『弁護人』にテジクッパが出てきます。『弁護人』は、稼ぎがよかった税務専門弁護士が司法試験の勉強をする頃から常連だったテジクッパ店の息子の濡れ衣を晴らしながら人権派弁護士に変身した話です。 映画のおかげでテジクッパはスンデグッ(豚の腸詰めスープ)の亜流という汚名(?)を晴らして、全国的に名を広めました。しかしまだソウルでは特別に探そうとしない限り、あまり見当たらないメニューです。 チェーン店を運営するお店がいくつかありますが、ソウルの人の好みに合わせてスープが透明で、豚肉よりは豚骨を使って、圧力釜でソルロンタン(牛骨スープ)を作るようにスープを煮出すので味にコクがありません。ソウルでテジクッパを食べてみた釜山の人々の評価は一言で「テジクッパとは言いにくい」です。 テジクッパの材料は名前のままです。豚の色々な部位を入れて煮込んだスープに、ご飯を混ぜた食べ物です。お店によってご飯が入った状態で出てきたり、スープとご飯を別々に出したりもします。嶺南(ヨンナム)圏でも釜山が有名ですが、蔚山(ウルサン)慶尚南道(キョンサンナムド)全域にテジクッパの店が広がっていて、大邱(テグ)と慶北(キョンブク)の内陸地方でも、よく見られます。 テジクッパは本来、38度線の北側で食べてた食べ物です。韓半島が真っ二つになった後、38度線を越えて南に来た移住民や朝鮮戦争の時に故郷を捨てて避難して来た失郷民によって伝播されました。当時、避難民が最も多く集まったところが釜山だったため、故郷に帰れない失郷民の哀歓が込められたテジクッパが釜山の郷土料理に変わりました。 歳月が流れて本来のレシピが変わったので釜山の郷土料理だと称しても決して過ぎた表現ではありません。本来、北側のスタイルはキムチチゲのようにキムチとウゴジ(白菜の外葉)を一緒に入れて作ったり、牛骨スープに素麺を入れてました。テジクッパの老舗では、まだ素麺を入れるそうなので、当時の食べ方が残っているということですね。 テジクッパと似た食べ物は全羅道(チョルラド)と済州(チェジュ)にもありますが、調理方法や味は全然違います。 事実、嶺南圏でも伝統的なテジクッパの味は釜山と密陽(ミルヤン)だけで出会えるいうのが釜山の人々の主張です。 ここで、詩の一節を紹介します。紹介する詩はチェ・ヨンチョルの「野性は光る」です。 野性を練磨しようとテジクッパを食べに行く それだけでなくチョングジ* ニンニク タマネギ 塩辛がある 青い水がぽたぽたと落ちるハンコを押しに行く にやりと笑っている豚の頭に会いに行く (中略) にやりと笑う豚の頭で野性が目覚める 一人でテジクッパを食べる額で野性は光る *チョングジ = ニラ 『弁護人』の主人公がテジクッパの常連なので闘争心を燃やす民主化の闘士として立ち上がったのでしょうか? 牛肉を主な材料とするソルロンタンとは違って、テジクッパの味はシンプルです。それに豚の臭いが充満するので好き嫌いが別れます。 より多くのお客さんを引き寄せるために豚の臭いをなくすのが営業の決め手のようですが、必ずそうとういわけではありません。 長い間、商売をしてきた美味しいお店では、ずっとスープを煮続けるので、お店に近づいただけでも特有の臭いが漂ってきます。テジクッパを好んで食べる人の中にも、この臭いを嫌う人がたくさんいます。 テジクッパの濃い味を生かしながら、臭みを抑える料理の腕前によって美味しいお店の価値が変わることはあります。しかし、どんなこだわりかは分かりませんが、臭みを消す努力をしないテジクッパ店もたくさんあります。よく言えば、 伝統を追求するお店と言えますが、口に合わなかった場合はつらいだけでしょう。だから自分の食の好みを考慮して、しっかり選んで食べに行ってこそ後腐れがありません。 一つ豆知識を紹介します。 肉汁の豚の臭みを完全に消すには半日以上は煮込まなければならないそうです。 なので、きちんとしたテジクッパ店の中には深夜も休まないで24時間営業する所が多いです。夜中に開いているテジクッパ店があれば、まともな料理が出される可能性が非常に高いです。 豚肉をベースにした肉汁や、日本の福岡の名物、豚骨ラーメンが好きな人は全く拒否感を感じないでしょう。 |