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ツール・ド・フランス完走したがん患者を支えたスタンダードグラフェン社代表


  • ツール・ド・フランス完走したがん患者を支えたスタンダードグラフェン社代表
最近「世界商品投資の大家」ジム・ロジャーズから投資を誘致して世間の注目をあつめた、「夢の新素材」グラフェン製造企業のスタンダードグラフェン(Standard Graphene)社のイ・ヂョンフン代表(45・写真)。イ代表は、末期がんで闘病中に自転車レースの最高峰「ツール・ド・フランス」を完走した故イ・ユンヒョクさんの後援者だという事実が遅まきながら知られて話題だ。

2009年大会に参加した一年後に亡くなったイ・ユンヒョクさんは、自分の挑戦過程を描いたドキュメンタリー映画『トゥール:私の生涯最高の49日』の公開に合わせて再照明されている。この映画は全世界で200人あまりしかかからないというまれな癌(線維形成性小細胞腫瘍)の末期判定を受けた26歳の青年が、不屈の意志で49日間3500キロメートルに及ぶレースを完走した過程を記録した。撮影を終えてから7年めに公開するこの映画は、穏やかな感動を伝えて公開前から話題を集めている。

イ・ヂェフン代表は2009年、自転車レースのスターであるランス・アームストロングに感銘を受けたユンヒョクさんが、ツール・ド・フランスの参加費用の問題で悩んでいるときに気軽にスポンサーを買って出た。当時、ユンヒョクさんはつらい抗癌治療を行いながら、大会参加企画書を持って支援団体と企業を訪ね後援を要請したが、頻繁に断られて失意に陥っていた。

当時、蔚山で原発関連の中堅企業を運営していたイ代表は、会社の事情に余裕がなかったにも拘わらず、ユンヒョクさんとスタッフの大会参加費の全額を支援した。イ代表の支援でユンヒョクさんは大会参加を終え、彼の話が映画に製作されることになった。

イ代表は「ユンヒョクさんに会ったとき、病気の気配がはっきり感じられて大会に参加できるかどうか心配だったが、最後になるかわからない夢に向かって挑戦するユンヒョクさんと話を交わして、夢を必ず成し遂げてほしいと思った」とし、「小さな支えだけれど、条件なしの後援を約束して応援した」と語る。

ある末期がん患者の夢に向かったチャレンジ精神を後援していたイ代表は最近、同じ理由で世界的な投資家の投資を誘致した。 「投資の鬼才」ジム・ロジャーズが彼の会社に投資して、顧問を引き受けることになったのだ。

スタンダードグラフェン社は、蔚山テクノパーク精密化学素材技術研究所に入居している小さなベンチャー企業で、従業員は代表を含めて15人に過ぎない。売上高も微々たる水準だ。夢の新素材と呼ばれるグラフェンを大量生産できる技術を持っているが、同種の業界にもほとんど知られていないこの企業が投資を誘致するやいなや、その背景に関心が集まった。

イ代表は「昨年5月、知人の紹介でシンガポールでロジャース会長に会ったが、ロジャース会長はグラフェン事業の説明を15分ほど聞いて中断させ、説明した内容をすべて信じると言っていくつかの質問を投げかけた」と、投資誘致の過程を打ち明けた。

イ代表は、「グラフェンの大量生産が可能なのか、自分を豊かに与えることができる、確信していると頼むには問題ないとした」とし、「ロジャーズ会長が両親に会いたがった。その理由を尋ねたところ、なんとなく会いたいというので、その年の夏に母を連れてシンガポールに行った。シンガポールではロジャース会長の家族と時間を過ごした後に投資が決定され、韓国訪問と記者懇談会への出席も快く応じてくれた」と語った。

イ代表は、「他の企業が不動産投資に集中するときも、技術が世界を変えるという信念で会社を運営した」とし、「この考えにロジャース会長も同意し、偏見なしに会社の将来価値に良い評価をくだしたようだ」と語った。
  • 蔚山=ソ・デヒョン記者
  • 入力 2017-01-31 18:02:47




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