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[筆洞情談] 安哲秀の声


  • [筆洞情談] 安哲秀の声
『メラビアン(Mehrabian)の法則』というのがある。相手の印象や好感を決定する要因のうち、視覚と聴覚がそれぞれ55%・38%を占め、言葉の内容は7%に過ぎないという理論だ。米国カリフォルニア大学名誉教授アルバート・メラビアン(Albert Mehrabian)の主張だが、声の割合が思ったより大きい。声は先天的に生まれ持ったものだが、私たちは声に人の内面が投影されていると信じていたりもする。それゆえ声が魅力的な、最近の言葉で「クルソンデ(甘い声)」の異性に簡単に引き付けられる。

特にカリスマとリーダーシップを表わし、大衆を圧倒しなければならない政治家に声は非常に重要な武器だ。ウィンストン・チャーチル(Winston Churchill)の声は大きな体から出る重低音の響きがあり、長い余韻を残し、イギリス特有の抑揚とアクセントを使って知性美を漂わせた。アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)の声は、トーンが高く和音が良いうえクライマックスで短く切れ強く発音する話法を駆使して大衆扇動に適していた。

安哲秀(アン・チョルス)国民の党大統領候補が、最近声を重低音に変えたのも「声の価値」を会得したためと思われる。彼のハイトーンの薄い声とボソボソした話法は、道理はあるが覇気、闘志とは距離が遠かった。重みが無いためメッセージの伝達力も落ちた。そうした彼が咆哮するような力強い声に一気に変えた。ロッカーが主に使用する泣き叫ぶような唱法である「グローリング(growling)」だという。声帯を引っ掻くようなハスキーな音色のために「ルイ・アンストロング(ルイ・アームストロングとアン・チョルスを合わせた言葉)」というニックネームもできた。腹式呼吸法を活用し、独学をしたというが過去より断固として訴える力があるのは事実だ。

安哲秀候補は、最近の記者会見で変化した声についての質問に、「自分自身も変えることができないなら国を変えることができない」と努力したという点を強調した。赤ん坊のように言うとして「ベビートーク」という冷やかしを受けた自分の声と演説がコンプレックスだったのだろう。映画『英国王のスピーチ』でどもり癖のあった英国王ジョージ6世が渾身の力を尽くして、自分の弱点を克服する過程が連想される。

彼の新しい声には好き嫌いが分かれるが、「努力に点数を与えたい」という反応が少なくない。

最近、彼の支持率上昇に声がどれだけ貢献したかを測定するのは難しい。しかし肯定的な影響を及ぼしたことは明らかである。安哲秀候補の声の変身はいったんは無罪だ。しかし今、国民が彼のトラのような声の中に込められた政策と変化意志に、より耳を傾け始めたことを忘れてはいけない。
  • 毎日経済 シム・ユニ 論説委員 | (C) mk.co.kr
  • 入力 2017-04-12 09:29:16




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