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仮想通貨から手を引く銀行業界


■ 仮想通貨から手を引く銀行 ■

新韓銀行は来る15日から、仮想通貨取引所にまわる金脈を封鎖することにした。主な仮想通貨取引所であるビッソム、コービット、イヤー・ラボ(EYA LABS)で新韓銀行の口座を利用していたトレーダーは、資金を新たに投入することが不可能になる。資金洗浄防止の義務履行のためのチェックリストが増えたことで、各市中銀行が導入を準備している実名口座システムの開始時期も、これまで予想していた今月20日よりも遅れるものと見られる。

銀行業界によると12日、仮想通貨取引に関連して違法かどうかを取り締まる政府の強硬な基調が続き、各市中銀行はこれまで維持していた仮想口座を閉鎖したり、新たに導入する実名口座システムの導入も遅らせるなど混乱が生じている。

まず最初に行動に乗り出したのは新韓銀行だ。新韓銀行の関係者は、「これまでに作られた仮想口座に対しても15日から追加の入金を禁止して、出金のみ可能なようにする予定」だとし、「資金洗浄防止システムを精巧化するまで入金は止める予定であり、実名口座システムも、このようなシステムを拡充するまで導入が遅れるだろう」と語った。この関係者は続けて「暫定的だが、20日頃に話が出ていた実名制システムは、金融当局と議論を完了するまで延期されるだろう」とし、「金融当局と世論の方向性をもう少し見なければならない」と語った。

実名確認入出金サービスは、トレーダーの実名口座と仮想通貨の取り扱い業者の同一銀行口座のみ入出金を可能にする仮想口座サービスで、トレーダーの身元を正確に確認できるという利点がある。仮想通貨取引を陰性化するよりも、実名確認入出金サービスのほうが取引の陽性化と課税基盤の確保などで好ましいとの指摘があるが、仮想通貨の取引をめぐる政府の強硬な基調が続き、銀行業界でまずは顔色をうかがいに乗り出したものと分析される。

新韓銀行がこのような決定を下した理由は、仮想通貨市場に参与して得ることができる利点は小さいことに比べてリスクは大きいからだ。第一金融圏の関係者は「金融情報分析院(FIU)が、仮想通貨を利用した資金洗浄の痕跡が発見すると口座を貸した銀行も処罰するという立場を明らかにしたことで、銀行の立場ではリスクが大きくなった」とし、「他の銀行に比べて仮想通貨で得る収益が大きくない新韓銀行は、手を引くのが賢明だと判断した」と説明した。

■ 混乱する銀行業界 ■

NH農協や企業銀行など、仮想通貨の口座を運営している他の銀行も当局のガイドラインに神経を尖らせている。

各市中銀行の混乱が大きくなる中で、金融委員会と金融監督院はこの日の午後、実名確認入出金サービスの導入を準備中の6つの都市銀行(新韓銀行、農協銀行、国民銀行、ハナ銀行、企業銀行、光州銀行)の実務者とチーム長級の会議を招集し、準備状況を点検した。金融当局の関係者は、「1月中に実名制システムを予定通り導入する方針に変わりはない」とし、「政府が銀行の取引をすべて止めるようにするという噂も事実と異なる」と述べた。

しかし銀行の混乱はおさまらない。ある銀行の関係者は、「政府が長期的には取引所の閉鎖を準備しながら、それまで弥縫策(びぼうさく)として口座実名への転換を誘導するものと見られる」とし、「いずれ仮想通貨市場がなくなるなら、コストをかけて実名口座システムを導入するよりもこの時点で手を引くのが利益だろう」と語った。

政府が一貫性のあるガイドライン無しに行ったり来たりすることで、一線の銀行で混乱が加重されている。ある都市銀行の関係者は「11日、法務部の仮想通貨取引所閉鎖の記者会見と青瓦台の翻意で混乱を経験し、企業・新韓など一部の銀行で手を引くだろうという話が内部的に出てきた」とし、「今回の会議は銀行業界の混乱を深めるための実務者会議だと思っている」とした。

当局が仮想口座本人確認を強化し、実名口座への接続などのフォローアップの手順を急いで下そうとしているという批判も出ている。当局と業界が数ヶ月調整して自主規制案まで用意した状況なのに、いざとなると政府は「取引所閉鎖」などの刺激的な言語だけを吐き出すだけで、実質的な規制には手をこまねいているという指摘だ。別のある関係者は「実名制施行と関連して、15日と22日など何度か議論されてきたが、まだ明確な指示がない状況」だとし、「政府の口だけを眺めている」と語った。

NH農協銀行側は、「今すぐ仮想口座入金禁止(廃止)や実名制導入の撤回を検討したことはない」とし、「政府の方針に従うつもり」だと述べた。農協銀行はビッソムやコインワンなどの国内の大規模仮想通貨取引所と提携して、仮想口座の発行と実名制移行サービスを開発してきた。企業銀行の関係者は「実名制システムの準備は完了したが、当局のガイドを待っているところ」だと話した。

当局は9日、農協と新韓や国民の6つの銀行の仮想口座の、発行現場の第一次点検調査に乗り出し、この日一部の銀行に2次調査を行ったものと伝えられた。

当局の仮想口座現場点検と関連し、今後の資金洗浄防止義務の履行状況が変数になりうるという観測もある。ある銀行の関係者は、「銀行ごとに資金洗浄防止システムが正しく設定されているかどうか、金融情報分析院(FIU)と金融監督院が強くうかがっている」とし、「一部の銀行が新たなガイドラインを設けるのに時間がかかることもある」と語った。仮想口座サービスを提供していないハナ銀行は、そもそも仮想通貨と距離を置く形だ。ハナ銀行の関係者は、「現在の状況は混乱しているだけに、さらに状況を見ながら実名認証口座の導入など、仮想通貨取引関連サービスの提供を慎重に決定するつもりだ」と明らかにした。
  • [毎日経済_イ・スンユン記者/キム・ヂョンフン記者/チョン・ヂュウォン記者]
  • 入力 2018-01-13 00:06:05




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