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[コラム] 有名税


新人記者の頃、思いがけずテレビに出演したことがある。北韓(北朝鮮)に拉致された漁師が送還された後、開かれた記者会見に参加して、1分余り顔が出た。

当時は、テレビに出られたらいいなと思っていた頃なので、記者会見の場に行きながら、意味もなく肩に力が入り、若干自分のことを誇らしく思って、新米に譲ってくれた先輩たちに有難かった。

そのようなことが二度、繰り返された後、先輩たちが記者会見を譲ったのではなくて、新米に押し付けたという事実を知ることになった。

初めて行った書店で本を選んでいた時だった。
「記者の方なので本が好きなようですね」
書店の主人が知り合いのように声をかけてきたので、慌ててしまった。
「私が記者であることは、どうして分かったのですか?」
「テレビに出てたじゃないですか」

最近のようにケーブルテレビ、インターネット放送、このようなものがなかった時代のテレビ放送はKBS、MBCの二つだけだった。だからありきたりで退屈な北に拉致された漁夫送還の記者会見も見てた人がいたようだ。

本を買った後もなぜか気まずかった。これからは内容がちょっといやらしい通俗小説などは買いにくいと心配にもなった。

テレビに映った時間があまりにも短かったため、少ししてから私を知る人は、ほとんどいなくなった。自由を取り戻したのだ。

有名税というのは恐ろしい。隣のおじさんだったら、そのまま通り過ぎるようなささいなことも有名人が関連したとすれば話が膨らむ。有名税は話を盛り上げるイーストであり、コクミを加える調味料だ。

韓国人が最も信頼するジャーナリスト、ソン・ソッキ、JTBC代表が最近困っているのも有名税のせいだろう。平凡な会社員が接触事故を起こしたからといって質問攻めにする記者がいるだろうか? 若い女性とそういう関係なのか?そのような疑問を抱くだろうか?

有名税は気分をよくさせる妙薬である反面、疲れさせたりもする。そのため、名前で暮らしを維持する人々も適当に有名になりたいと思ったりもする。でもそれは言葉だけで「適当に」は自分勝手に決められるものではない。有名税というのは自分が得たくて得るものではなく、知名度によって基準が決まるので、統制自体が不可能だ。

英国の劇作家、オスカー・ワイルド(Oscar Wilde)のように有名税を楽しむならいいが、誰しも有名税に対する代価を払っている。

オスカー・ワイルドは自分に対する悪口さえ楽しんでいた。アメリカでオスカー・ワイルドの審美主義をばかにして、遠慮なく彼をけなす作品を広報する場にオスカー・ワイルドを招待した。敵軍がうようよいる場所に入城しながらオスカー・ワイルドは「税関に申告するのは私の天才的な才能しかない」という一言で機先を制してしまった。

いちいち取り上げるのも難しいほど多くの政治家、スポーツスター、芸能人が有名税を払っている。他人の無駄口くらいは全然気にしない大胆さを持ったらいい。そのためにはまず自分がやましくない生き方をしなければならない。
  • Lim, Chul
  • 入力 2019-01-31 00:00:00




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