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韓国製造業の「エクソダスコリア」深刻


  • 韓国製造業の「エクソダスコリア」深刻
  • 人件費に圧迫される自動車産業



「韓国の製造業市場は企業がもはや競争力のある革新的な製品を生産できない高コスト構造になった。会社を譲りたくても殺人的な相続税負担のため、そもそも事業をたたむしかなかった」。

慶南地域で自動車部品を製造する会社の代表A氏。彼は20年のあいだ汗を流して作ってきた「玉童子(玉のような子供)」のような会社を最近、私募ファンド(PEF)に売り渡すことにした。経営から退く時期を控えた状況で、二世に家業をゆずるには諸般の条件が最悪だからだ。

自動車業界の不況の中でも売り上げ2000億ウォンを記録した中堅会社だが、相続税負担のために意欲が出なかった。ともすると部品を納品する自動車企業のストライキで頭を悩ませなければならなかった苦痛を、子供にわたしたくないという気持ちも大きかった。 Aさんは「今こそ独自の技術のおかげで耐えているが、いつ難しくなるかもしれないし、経営の構造調整も業種変更も難しい現在の市場構造では答えを見つけることができなかった」とし、「新たな海外顧客を得て生産設備を移転しない限り、事業をたたむしかない」とため息をついた。

中堅企業を放棄してPEFに売却したAさんの事例は、韓国製造業が直面する複合危機を克明に示している。

今でこそ完成車メーカーから安定して注文を確保することができるが、内燃機関が必要なくなるエコモビリティへ市場構造が急変する状況では、Aさんは主力生産部品を切り替えることに意欲が出なかった。すでに韓国製造業を代表する自動車産業は、海外工場の生産量の拡大が国内工場の生産量縮小につながる状況だ。ある完成車メーカーのアジア地域の生産ラインは、1998年との比較で昨年は生産量が90倍近くに増えた。この海外生産工場で内需はもちろん、中東・アフリカ・欧州・東南アジアなど他のグローバル市場の輸出車両として生産し、韓国の工場の輸出用生産量はますます下方調整されている。

実際に、韓国自動車産業協会が最近発表した「2018年10大自動車生産国の現状」によると、韓国の国内自動車生産量は前年比で2.1%減の402万9000台で、3年連続で減少を記録した。今年は400万台の線まで崩壊すると、現代・起亜自動車や双竜自動車、韓国GM、ルノーサムスンなど完成車メーカーに部品を納入する中小企業は「物量の崖」を覚悟しなければならない。

韓国自動車産業の高賃金と雇用安定を筆頭に毎年ストライキを決行する、労働市場の後進性は依然として変わらない。最近、ルノーサムスンは賃金団体交渉が頻繁に不発になって、昨年の10月以降から最近まで総38回にわたって累積144時間にもおよぶ最長のストライキが行われた。

韓国経済研究院が主要41カ国を対象に行った「製造の生産性と単位労働コストの国際比較」結果を見ると、韓国製造業の労働生産性は2008年の世界金融危機以降に急落したのに対し、労働コストは急上昇するなど、グローバルな競争力は墜落している。 1人当たりの労働生産性の伸び率が2002~2009年は年間7%で5位に達したが、2010~2017年には年間2.8%で28位まで下がった。

製造業の「韓国エクソダス」危機は逆説的に、国内に輸入される製造業の基本設備である工作機械の輸入減少でも明らかに分かる。韓国の工作機械産業協会が集計した昨年の工作機械の輸出入の現状を見ると、製造業の景気後退の影響で昨年の輸入は8億4640万ドルにとどまり、前年比で24%減少した。

製造業の汎用機械で輸入品目のうちの割合が最も大きいマシニングセンタ製品は、前年同期比で23.2%減の1億6216万ドルにとどまり、産業界全体での生産能力を拡充するための設備投資が急激に落ちていることを示した。

  • 韓国製造業の「エクソダスコリア」深刻
  • 海外に傾くバッテリー投資


輸出韓国の次世代走者として浮上している電気自動車用バッテリー業界は、国内大手の「投資エクソダス」現象を示す端的な例だ。25日の業界によると、LG化学やサムスンSDI SKイノベーションなどの国内バッテリー製造3社の生産能力は、現在の53.7GWh(ギガワット時)から数年内に4倍近くの200GWhに増える。生産能力拡充のための直接投資は7兆7400億ウォン規模で、国内投資時には3万人規模の直接雇用効果が期待される。工場の新増設にともなう前後の産業拡散効果まで考慮すれば、国内の製造業にかなりの活力になりうるだろう。しかし、残念ながらすべて米国・中国・欧州市場への投資が集中している。

バッテリー業界の関係者は、「電気自動車用バッテリーは自動車メーカーと電池サプライヤーの企業間取引(B2B)という性質のため、自動車メーカーが海外の製造施設の近くにバッテリー製造施設を構築するオプションを必要とするのが慣行」だとし、「このために国内の工場に新しく増設投資をしたくても、契約構造の制約を受ける状況だ」と述べた。

殺人的な相続税爆弾も韓国製造業の未来持続可能性を毀損するレベルで作用しているとの批判が大きい。年間売上げ3000億ウォン以下の企業に適用される家業継承控除を受けると、200億~500億ウォンに達する相続税を控除できるが、10年間の雇用維持や業種維持など、非現実的な条件が付いてくる。このために制度の実効性がまな板に上がった状態であり、数年後に条件に違反したと判定されて税金を再返却すると、その事業を売却しなければならない最悪の状況も見出されている。

家業承継問題に悩む京畿道の中小業者の代表B氏は、「息子がそのまま売って不動産として譲ってほしいと言う」とし、「自分の手で生んだ子のような会社なので、他人の手で経営されるのを見るのは辛くて悩みは深い」と虚脱していた。
  • 毎日経済_イ・ヂェチョル記者/チョ・ソンホ記者
  • 入力 2019-02-25 18:07:08




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