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冬のボリョンは牡蠣天国

    忠清南道ボリョン市にあるチョンブク面に行くと牡蠣天国である。名前もチョンブク蜂蜜のつぼだ。

    牡蠣のことを南島では「蜂蜜」と呼ぶので蜂蜜のつぼと呼んでもよさそうだ。牡蠣が溢れ返っている。食い荒らした牡蠣の殻が店ごとに積み重なっている。ここはまさに21世紀の貝塚だ。実際に先史時代の貝塚から牡蠣が多く発見されている。

    寒い冬にろくな暖房もなかった先祖たちが、うずくまって牡蠣を割って食べている姿を想像してみる。現在、人類の歴史上最も栄えているこの時期でもその姿と大きく変わらないことに驚くばかりだ。ビニールでごちゃごちゃと建てられた仮設店舗にしゃがみ込み、手袋をはめ牡蠣を割って食べる姿は今も昔も変わらない。しばしの間数万年前を遡ってみる。おそらく牡蠣の味はその頃がもっと良かったことだろう。100%天然であっただろうから。現在のように大量の牡蠣養殖が可能になったのは1900年台に入ってからのことだ。

    秋を待つということは美食家にとっては牡蠣を待つとも言える。お金に余裕がない美食家でも牡蠣はいくらでも食べられる。片側の殻を外した状態をその形状から俗に石花(※ソッファ)という。(実際の石花との意味とは異なる)

    牡蠣は一袋1万ウォン程度だ。水産市場に行けばクーラーボックスいっぱいに牡蠣を詰め込んでもその価格だ。ほとんどタダなのである。牡蠣本来の価値に殻を割る手間賃を入れてもその価格だ。イタリアの料理人である友人にこの話をしたところ信じてもらえなかった。「まさか牡蠣がそんなに安いはずがないだろう…西洋では牡蠣1個がどれだけ安くても1,000ウォンは超える。レストランで牡蠣9個注文すると20ユーロは軽く超える。なぜこのようなことが起こるのか」

    韓国の牡蠣が安価な理由は、韓国の物価を離れて、牡蠣がよく育つ韓国の天恵的環境のおかげだといえる。とくに大粒の牡蠣が収穫される南海岸の環境はさらに良い。牡蠣を紐に吊り下げ、次々と海に投げ入れるだけですくすくと育つ。投下式と呼ばれる方法だ。南海岸は餌が豊富な海である。

    干潟が発達していない海域には植物プランクトンが少ない。オーストラリアは広大な海に囲まれてはいるが、世界最高水準の水産物輸入国である。海の有機物含有量が少なく魚も少ないからだ。韓国の南海岸はその点において神の祝福を受けたとしか言いようがない。だから私はこの韓国の牡蠣が天然物であれ、養殖であれどちらでも気にしない。餌とは全く与えずにただ海の中に投げ入れられて育った牡蠣が養殖と呼べるだろうか。養殖の「養」という漢字にはエサを与えて育てるという意味がある。このため厳密に言うと養殖でもない。投げていたのは人間の仕事だが自分で育つ。その所有者が人間であるだけである。

    西海岸の牡蠣はよく天然物といわれるが必ずしもそうではない。天然物も多いが養殖もかなりある。もちろん天然物に近い方法で「育て」得ている。投石式という方法のことをいう。干潟の石に種牡蠣を貼っておくのである。

    最近ではフランス食で養殖した牡蠣が高級レストランを中心に出てきた。筆者も使ってみたことがあるが、フランス食で育った牡蠣は年中食べられるのが特徴だ。これは産卵期を調節するためだ。夏でも牡蠣が食べられる。水平網式といってノルマンディ(牡蠣で有名なフランス地方の地名)式の養殖法だ。粒を大きく育てて収獲する。もちろん価格は高い。西海岸はヨンピョン島砲撃事件により漁場に問題が生じ、牡蠣の収獲量が大きく減少したこともある。大砲一発で牡蠣が打撃を受けたのだ。

    韓国人の牡蠣の食べ方は様々だ。

    酢コチュジャンにつけてニンニクと青唐辛子をのせて食べたもする。牡蠣汁や牡蠣スープ(これはチュンチョン道)地方の料理で熱々に煮込むのではなくさっぱりと水に混ぜる。一種の水刺身だ。)もある。

    慶尚道式のしょっぱい牡蠣の塩辛、西海岸式の小粒牡蠣の塩辛や牡蠣の和え物、牡蠣飯や牡蠣ポッサムもある。牡蠣のピカタや牡蠣の天ぷらも外せない。牡蠣を好む人に冬が天国である理由だ。 西洋は牡蠣が高いがゆえに食べる方法もあまり発達していない。おおむね生牡蠣にレモン汁をかけて食べる場合が多い。牡蠣固有の味を一番よく感じることのできる方法でもある。

    ウイスキーを少しかけたりタバスコソースをかけて食べたりもする。赤ワインビネガーをかけて食べることもある。バターをのせて生のまま食べたりもする。バターのクリーミーな食感が牡蠣の濃厚な風味とよく合う。

    牡蠣にあう酒も多様だ。シャンパンに牡蠣はとても高級なアペリティフである。

    食欲をかき立てるのにこれ以上の相性はない。裕福層の嗜好品だ。シャブリというフランスワインと牡蠣の相性はとても良い。黒ビールと牡蠣もすばらしい組み合わせだ。日本酒を冷たくして生牡蠣と食べると牡蠣の風味が際立つ。日本の放射能流出により韓国にもその火の粉が飛び散った。

    今年牡蠣の価格が格別に高いが、これは日本に輸出される牡蠣の量が増加したためだという。日本の牡蠣生産地である宮城県を訪れたことがある。牡蠣の味は韓国のものと似ているが、価格は韓国の3~4倍であった。このとき私は心から韓国の牡蠣に感謝したのだった。まさにその地域から問題が発生したのだ。日本人が韓国の安全な牡蠣を必要とするのは当然だ。日本人は牡蠣を高く売る商品を多様に開発してきた。日本の3大景勝地といわれる松島には遊覧船の中で牡蠣鍋を提供する観光商品がある。特別な味とまではいかないが、珍しいスタイルで牡蠣が食べられるということでこれだけでも客からの反応は良かった。

    イタリアでの牡蠣の料理法に一風変わったものがある。牡蠣パスタは筆者が考え出したものであって、イタリアにはない。牡蠣が高価なのでパスタのような庶民の料理には使うわけがない。

    その代わりに手の込んだ料理に使われ、牡蠣グラタンがそのうちの一つだ。グラタンのことをイタリアではgratinato(グララティナート)という。チーズを乗せないパン粉とオリーブオイル、パセリが主材料だ。シンプルでありながらも牡蠣の風味が最大限に生かされる。牡蠣のとろんとした食感が嫌いない人でも食べられる料理だ。料理法も簡単でオーブンさえあれば誰にでも作れる。まずパン粉にパセリのみじん切りを混ぜ合わせる。みじん切りにしたニンニクを混ぜてもいい。それを石花に乗せ、オリーブオイルをかけて200度程度に加熱したオーブンで5~6分焼く。

    プリプリとした牡蠣の食感が食欲をかき立てる。ビールやワインにもよく合う。石花を殻ごと洗う場合は酢を少し垂らし力を入れず軽く揺らすように洗うと良い。
  • LUXMEN_パク・チャンイル/写真 チョン・ギテク記者 | 入力 2012-01-26 12:00:00