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ソウルのどまんなか「乙支路」の変身

  • 崩れそうなちょっと危ない色あせた建物。印刷用紙をいっぱいに積んで、危なげに疾走する三輪車。陽もあまり当たらない、うす暗いうら通り。香港のノワール映画の撮影地を連想させる乙支路(ウルチロ)裏通りの現在の風景だ。

    表向きは数十年前の姿そのままだが中身は違う。立ち遅れた印刷屋街から「ヒッププレイス」に完全変身した。ランチあるいはディナータイムともなれば、流行に敏感な若者たちがうごめく。

    地下鉄の忠武路(チュンムロ)駅から乙支路3街そして乙支路4街周辺に、新たに数十軒の異色レストラン、コーヒーショップ、ワインバーが生まれた。「新都市」「ホテル水仙」「クァンヂャン(広場)」「ムルギョル(波)」などに代表される、いわゆる「乙支路第1世代」がここに定着してわずか2年。古くて狭い印刷屋街に人々が集まる理由は何だろうか。

    • 去る4月、乙支路の印刷路地にオープンしたLPバー「平均律」の看板は、厚い鉄門に付いているポスター一枚全部。昼はコーヒーを、夕方以降にはシングルモルトウイスキーを提供するカフェ兼バーとして運営される。 写真:チェ・ヨンヂェ記者



    ポイント1:ふんいき充満「ヴィンテージ感性」

    △崩れた壁・古い小物をひとつ残らず

    乙支路の路地に位置する店を見て回ると、まるで過去に戻ったような錯覚に陥る。さいきんでは見ることのできない昔の小物と古い家具・インテリアを活用し、アナログ感性を刺激する。 「レトロ」コンセプトは、整備されていない古い街と調和してシナジーを出す。

    「コーヒーハニャクパン(漢薬房)」はヴィンテージ感をしっかりと活かしたインテリアで話題を集めるコーヒー専門店だ。螺鈿細工の収納棚として作られた商品棚、漢方薬を入れる引き出し、開化期を連想させる茶碗や小物などは、1940年代に建てられた建物の感じとぴったり合致する。コーヒーハニャクバンで働くパク・ヨンボム バリスタチーム長は、「おじいさんから周辺の会社員、あどけない学生まで客層はさまざまだ。昼休みに客がとても集まるので、コーヒーは2種類に簡素化した」と説明した。

    ワインバー「十分の一」もレトロな感性で充満している。数十年前の風呂屋の入り口にかかっていたそうな、不透明ガラスのドアの上に「ワイン」「各種おつまみ」「焼酎なし」などの文字がテキトーにくっついている。このほか、塗料がかなり剥がれた古い壁をインテリアとしてそのまま生かした「ホテル水仙」、20年をこえた大型の印刷機を店の真ん中に小物として展示して雰囲気をそそる「4F」も、きれいな写真が出てくるインスタグラムの聖地として浮上した。

    ポイント2:隠れた宝探し

    △「会いに来て~」看板のない店

    ナビゲーションアプリも無用の長物。店を目の前にしても、まったく見つけることができない。乙支路の印刷屋街の店は約束でもしたように、看板が小さいかまったくない場合が多い。ようやく建物の入口を見つけて階段を上がった後も、もう一度葛藤に陥る。厚い鉄扉の前で「ここが果たしてカフェなのだろうか」と、しばらく躊躇するわけだ。

    カフェ兼バー「チャグンムル」が代表的だ。建物に入る前に入口と天井の間の隙間にはり付いている店の名前を見つけられない場合には、店の位置を知る術がない。赤いビニールテープで「チャグンムル3F」とはり付けてある。 「チャン」と「4F」はよく見ないと店の名前なのかなんだかよくわからない、とても小さな立て看板を建物の前の通りに出している。看板もなくポスターだけをぽつんと貼り付けたところも多い。「ムルギョル」「十分の一」「コーヒーサマリア」などだ。

    「十分の一」のイ・ヒョヌ共同代表は、「率直に言えば、最初は看板を設置する費用がギリギリで作らなかった。最近は看板なしに店をかまえるのが主流みたいだ」と説明した。

    • 作業室を兼用したり、アーティストの公演や展示が行われる文化複合空間として活用されているケースが多い。写真はカフェ兼バー「チャグンムル」(左)とカクテル専門店「感覚の帝国」(右)。 写真:ナ・ゴヌン記者



    ポイント3:アーティストの感性「ぷんぷん」

    △ 安い賃貸料で見つけて定着...作業室兼用

    まさに芸術家の街だ。あちこちに隠れている店のドアを開けて入ると、迎える主人の半分はアーティストと見てもよい。木材や鉄板やアクリルなどの、作業に必要な材料を購入するために乙支路の路地を出入りした彼らは、作業室を兼ねて店をオープンしてそのまま居座るケースが多いからだ。

    コーヒーサマリアはイ・ミンソン社長と空間を分けて使いながら絵を描くイ・マリアさんの名前から取ってきた。カフェ「MWM」もまた、インテリアデザイナーのチェ・スヂ氏が作業室を兼ねて運営している空間だ。衣類モデルが運営する「CETU」、ジュエリーデザイナーが運営する「ホテルスソナ(水仙)」などの、アーティストが構えた店はいちいち列挙することも難しいほどだ。

    「チャグンムル」はアーティストたちの公演・展示が開かれる文化複合空間としても有名だ。チャグンムルを訪問した去る7月18日も、壁面いっぱいに作品が展示されていた。乙支路の路地を拠点としたグループ「チャクタンモイ」を運営しているというジャン・ヂヒョン氏は、「今回の展示テーマはガベージアイランド(garbage island)だ。乙支路の印刷屋街からインスピレーションを得た」と言う。チャグンムルを運営するユン・サンフンさんもギターを弾いて曲を書くアーティストだ。ユンさんは「乙支路には作業と生計を一緒に営む、いかにも生活のために定着したアーティストが多い。アーティストの自生のため形成された空間なので、他の商圏とは異なってわざとらしさがない」と説明した。

    ポイント4:ふっくらと弾むコンセプト

    △ 風刺・反転・異色小物の魅力に「どっぷり」

    乙支路の夜の路地裏。建物の一方の窓から、緑色の光があふれ出てくる。カクテル専門店「感覚の帝国」だ。壁は韓国の政治・社会と「コンデ(目上を意味する隠語)」を露骨に風刺するポスターでいっぱいだ。一方では、海水浴場にでもありそうな巨大なパラソルとプラスチック製の椅子が用意されている。「感覚の帝国」を共同運営するフンゴン氏は、「この10年のあいだに一般企業でブランドマーケティングの仕事をしてきた。乙支路は斬新で面白いアイデアを、どの地域よりも自由に表現することができる街」だと微笑んだ。

    乙支路にはこのように、ユニークなコンセプトで武装した店があふれている。

    カフェ「チャン」の必殺技は、まさにコーヒーだ。数十個にも及ぶさまざまなコーヒーカップが、カウンターの横にぎっしり陳列されている。コーヒーを選んだ後にもう一度、入れて飲みたい杯を選ぶ。

    このほかにも大型スピーカーを2台置いて、乙支路にはまれシングルモルトウイスキーを売るLPバー「平均律」、古い建物の外部とは異なり、白系統のすっきりしたモダンなインテリアが印象的なデザートカフェ「ブンカシャ」、薄暗い廊下の端の入り口をピンポイント照明として強調した「バー302号」など、異色の店が多いことで有名な乙支路でも、独特の個性を持ったところとして口コミに乗っている。

    乙支路の路地の展望は

    △ ジェントリフィケーションのリスク低下

    若い起業家やアーティストが乙支路に集まった主な理由は、やはり安い家賃だ。建物ごとに少しずつ異なるが、20坪を基準にして家賃は100万~150万ウォンほどになる。ソウルの平均賃料(1平方メートル当たり3万2700ウォン、20坪で215万8000ウォン)と比べても半分程度だ。乙支路が口コミで人が集まるにつれて、賃借人はやきもきしている。家賃の上昇で既存のテナントが追い出される「ジェントリフィケーション」の被害者にならないかという懸念からだ。

    しかし当面はジェントリフィケーションの可能性は低いとの意見が主流をなす。乙支路には他の路地商圏とは異なり、店の集まったいわゆる「カフェストリート」がない。商圏が分散しているほど、大手のフランチャイズの進入は難しい。物件もそう多くない。乙支路の近くのある不動産屋の代表は、「印刷屋街には数十年のあいだ店を守ってきた人々が多い。家賃が上がるからといっせいに抜けていくことはない」と分析した。去る4月、LPバー「平均律」をオープンしたソン・ミンギ氏は、「水もまともに出ないほど古い建物が多く、改修費用がかかる」と説明した。

    商圏の大型化とは別に、乙支路の路地の人気は着実に続くと思われる。韓国創業不動産情報院のクォン・ガンス理事は、「ソウルは望遠洞(マンウォンドン)のマンリダンギル、蚕室のソンリダンギルなどの路地商圏の人気はしばらく続くメガトレンドだ。特に乙支路は立ち遅れた街のイメージが新鮮に作用して、むしろ客の足を引っ張っている」と分析した。
  • 毎日経済_ナ・ゴンウン記者 | (C) mk.co.kr | 入力 2018-08-11 14:10:39