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韓「ウェブトゥーン界の大統領」…ハ・イルクォン

  • 「ウェブトゥーン大統領」「信じて読む作家」「演出の魔術師」…常に最高という修飾語がついた作家ハ・イルクォン氏の学生時代は、漫画のよう色とりどりではなかった。アニメ監督を夢見る野心満々の美大志望生だったが、父の反対を押し切って選択した道だったので、自分の選択が正しかったことを証明しなければならないという強迫観念に苦しめられた。昔も今も芸術に対する社会的認識は「就職できない職業」「空腹職業」「男に似合わない職業」だった。ウェブトゥーンでのデビューを急いだことも、このような理由からだった。

    世宗大学漫画アニメーション学科3年に在学中だった2006年に最初の作品を連載した。当時の年齢は25歳に過ぎなかった。作家のハ・イルクォン氏は「両親に成果をお見せするため、軍隊を除隊してすぐにデビューを決めた」と回想した。デビュー作だった『サムボン理髪所』が総再生回数1000万回を超えて、ハ作家は人気作家の隊列にのぼった。その後、2011年に発表した『沐浴の神』がネイバーウェブトゥーンの再生回数全体で1位を記録して『スペルマン』など多数の作品が曜日別の1位に上がり、「信じて読むハ・イルクォン」というタイトルを得ることになった。

    彼の作品に魅力がある理由は、誰もが共感できる「傷」を扱うためだ。ハ作家の作品の中の主人公は、世界の暴力と抑圧に傷ついた魂だ。外観の暴力、夢への暴力、愛への暴力。暴力で綴られた世界で何とか生きていこうと、主人公たちの姿に読者も鏡の中の自分を発見する。白黒で汚された世界の色を重ね塗りする作家、傷つく魂に慰めの言葉をかける作家。このような役割に最も忠実な作家がさまにハ・イルクォン作家だ。今年でデビュー15年を迎える同氏に、京畿道富川の韓国漫画映像振興院で会った。

    - どのようなきっかけでウェブトゥーン作家に?

    △ もともとアニメが好きで美大に進学した。アニメ監督を夢見たが、、韓国のアニメーション業界は活性化していなかった。アニメに進路を選択した先輩たちは、劣悪な状況でやりたい仕事をできなかった。そうこうして、除隊後に復学して現実を考えるようになった。何をすべきか悩んでいた時に、ウェブトゥーンを発見した。 2004年ごろからウェブトゥーンが大衆に知られ始めた時期だった。カン・フル作家の『純情漫画』やヤン・ヨンスン作家の『千一夜話』のような作品が出てきて、人々が関心を持ち始めた。本や雑誌ではなくインターネット上で、無料で容易に接することができるという点が魅力的だった。アニメーションとは異なり、大きなコストや人力なしに一人でもできるようなので準備した。

    - 美術を目指したことで家庭の反対が激しかったと聞いた。

    △ 今もその時も、美大を出でると「就職できないし、空腹の仕事」だという認識がある。母は応援してくれたが、父は美術についてなにも知らなかった。じつはデビューを学生時代に急いで行ったのも、両親に成果を見せたかったから。だから除隊後の翌年、学校に通いながらウェブトゥーンを準備した。ちょうどパランドットコムから連載のオファーが入ってきて、新人漫画家のコーナーを通じてデビューした。父が最初の作品を見てとても喜んだ。今は誰よりも先に自分の作品を見て、母のように応援してくれる。

    - 作品は夢の話が多いが。

    △ その頃は夢というのが話題だった。『サンボン理髪所』もそうだし、『マンナラスマナラ』『沐浴の神』もすべての夢の話だった。それまで一番したい話が夢だった。世界で最も価値があり、キラキラするのは夢だと思った。

    - 作品に経験や感情をたくさん盛り込む方なのか。

    △ 盛り込むしなかない。作品というのは経験から湧き出るものだ。だからといって、自分の話を100%オープンするほど勇気があるわけではない。適切に混ぜる。真実が半分で、物語も半分。個人的な話をしていた作品は『病気の味』だ。パニック障害に対する話は、どんな方法でも一度やりたかった。作品を企画する際に個人的な話をしなければと思うことはないが、『病気の味』は明らかに似たような状況にある人々があるだろうと考えた。そのような人々が共感し、慰労になる漫画を書きたかった。パニック障害を知らない人に、大変苦労して生きる人々がいると知らせたかった。

    - 締め切りのある作家にとって、パニック障害は大きな苦痛のようだ。

    △ パニック症状が最初に来たのはずいぶん前だ。その当時は何なのかも知らなかった。社会的にパニック障害の概念に不慣れだった。『沐浴の神』を連載するときに、パニック障害で緊急治療室に運ばれた。すぐに休載した。連載を仕上げできないかもしれなかった。すべてが嫌になった。ある瞬間からストレスを払い落とせない人間になっていた。 3ヶ月休んでけっきょく仕上げをしたが、その後からストレスというものにとても関心を持つようになった。ストレス管理が重要だという考えを持つようになった。かつては2つの作品を同時に連載した。今ではアシスタントを使いながら、ストレスを最大限に払い落とすようにする。人間関係であれ外部要因であれ、ストレスを最小限に抑える環境を作ろうとしている。

    - 日曜ウェブトゥーン『スペルマン』が3編まで出た。性欲を源泉とするヒーローが印象的だ。

    △ 『スペルマン』をシーズンで連載する考えはなかった。『スペルマン』のシーズン1も、もともとは完結させた作品だ。しかし『スペルマン』は他の作品とは異なり、エピソードに拡大しても面白そうだと思った。私もできるなら作品は一本で完結を出す方だ。ところが、このアイデアはとても惜しかった。だからこのように3編まで連載している。自分自身にとっても挑戦であり、勇気を出さなければならない作品だ。特に成人向けの漫画を書きたいという思いはなかった。ただヒーロー物をとても好きだ。性欲の強さを源泉とするヒーローなら面白そうだった。

    - 作品に付いたコメントを確認するのだろう?

    △ できるだけ見るようにしている。コメントこそウェブトゥーン作家が受ける最大のメリットであり、祝福だ。これまでの単行本や雑誌に連載していた漫画家は、読者のフィードバックを受けることは難しかった。はがきを受けたり数週間に渡って来るファンレターを受け取るていどだった。ウェブトゥーンができて、創作物を提示するとすぐに鮮やかなフィードバックを受け取ることができる。創作者としてとても嬉しいことだ。力になる。

    - ウェブトゥーン作家を夢見る後輩は多い。

    △ 描くのが好きで、自分の話を作って誰かに見せるのが好きなら良い仕事だ。良い仕事であると同時に、かなり大変な職業だ。大変ではない職業はないだろうが、ウェブトゥーン作家は物理的に精神的にしんどい。漫画のほかはほとんどすべてのものを放棄しなければならない。人間関係、余暇活動、趣味、時間の余裕…すべて放棄しなければならない。才能が優れた漫画家は、このすべてのことを享受しながら作業をできるかもしれない。しかし私はそうではない。作品ひとつだけでも苦労する。このころは競争も激しくなって、より大変な職業になった。

    - 放棄しなければなら最も大きなものは?

    △ みんな漫画が好きでウェブトゥーン作家になる。ところが作家になると、その趣味を失うことになる。最も好きな趣味を失うことになるわけだ。作家たちは「何の栄華を享受しうとこれをするのか」という言葉をよく言う。それでも好きなことだから、作品を作らなくてはと言う気持ちでする。このすべてのものを甘受しながら作品を書きたい者が挑戦するのが良いだろう。そうでなければ、途中で離れていくだろう。

    - 韓国ウェブトゥーンのグローバル化が問題だ。ウェブトゥーン産業をどのように見ているのか。

    △ たいしたことだ。韓国ウェブトゥーンが世界に進出してかなり久しい。ネイバーウェブトゥーンは古くから基盤を磨いた。かつて外国に進出するには、単行本を輸出しなければならなかった。単行本の輸出は非常に難しくて手間だ。今は作家が自分の作品を発表することが容易になった。国内だけでなく、世界の読者に作品を見せることができるのはすばらしい発展だ。 KポップやK映画のように、韓国ブランドを知らせる韓流の手段にもなることがある。

    - ウェブトゥーン作家の問題点は何か。

    △ 違法サイトが今もある。数年前から猛威をふるって打撃が大きかった。売上げと照会数がとんでもなく減少した。捕まえようと努力したが、しかし外国にサーバーを置く裏道が盛んに行われている。今は正当にコンテンツに費用を支払う。認識の改善にまだ多くの時間が必要なようだ。

    - 長期的な計画はどのようになるのか。

    △ 『スペルマン』が今年の初め頃に終わるようだ。そして休憩を取るつもりだ。次回作に対する予定はまだない。まず何も考えずに休みたい。休息して、作りたい話がふと出てきたら、準備してカムバックしたい。じつは休みを取ったことがほとんどない。連載を終えても何カ月も休めないでいる。不安もある。これだけ作品があふれ出ると、すぐさま忘れられるのではないかという不安感がある。今回は少し余裕を持って、しばらく休んでみるつもりだ。

    ▲ ハ・イルクォン作家は?

    1982年生まれ。ソウルトンソン高校を出て、世宗大学漫画アニメ学科を卒業。大学3年時の2006年に『サンボン理髪所』でデビューした。新人作ではまれに再生1000万回を記録し、「ウェブトゥーン界の彗星」として浮上。その後、『アンナラスマナラ』『沐浴の神』など発表する作品ごとに成功し「信じて読む作家」というタイトルを得た。繊細な心理描写と細心の演出力と面白いと作品性の両方を備えているという評価を受ける。現在、ネイバーウェブトゥーンで『スペルマン・シーズン3』を連載している。
  • 毎日経済_パク・ウィミョン記者 | (C) mk.co.kr | 入力 2020-01-11 18:27:31