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韓シージェン社「PCR検査機器の普及で100兆企業に」


    米国経済月刊誌「ファーストカンパニー」は創立21周年を迎えたシージェン(Seegene)社を、今年の「世界で最も革新的な企業トップ50」の20位に選んだ。国内の分子診断企業が屈指のバイオ企業である米ファイザーと独バイオエヌテックや米モデルナなどと肩を並べて集計の順位に入ったのは今回が初めてだ。これまで韓国企業ではサムスン電子が2013年から2015年にかけて2度、カカオバンクが2018年に、そしてビッグヒットエンターテイメントが昨年のランキングに入ったのが全てだった。

    最近、ソウル市松坡区のシージェン本社で会ったチョン・ジョンユン会長(65)は、「業界を代表して貴重な勲章を受けたようだ」とし、「アジア・太平洋で1位企業に選ばれた国内初の事例だ」と強調した。これとあわせて同氏は「21年間に遺伝子増幅(PCR)と呼ばれるひとつの井戸だけを掘ってきた企業は、世界でシージェンが唯一無二」だとし、「グローバル企業が機器にのみに集中するところを、シージェンは試薬の技術に長いあいだ集中してきたことが核心競争力」だと語った。

    診断試薬の隠れ強者としての評価を得たシージェンは、昨年のコロナ19パンデミックをきっかけに世界舞台で本格的に脚光を浴び始めた。当時、シージェンの試薬技術は世界保健機関(WHO)が提示したガイドラインを超えるユニークな性能で、世界のバイオ業界の耳目を集中させた。 WHOは数百にも及ぶコロナ19ウイルスの遺伝子のうちから2つの核心的な遺伝子を検出してこそコロナ19の診断試薬として認めることができるとしたが、シージェンは4つの遺伝子を正確に検出してみせた。昨年の4月に米国食品医薬品局(FDA)がシージェンのコロナ19診断試薬に対する緊急使用の承認を行ったことを皮切りに、世界60カ国が先を争ってシージェンの試薬を購入した。これに力づけられたシージェンは昨年、世界からラブコールを受けて年間売上げ1兆ウォンの神話を記録した。

    チョン代表は「これからは分子診断が大型病院で専門家の手を経て行われた限界を克服することがカギ」だとし、「シージェンが26日に米国の臨床化学会(AACC)で初めて公開する、組合せ型分子診断検査の自動化ソリューション「エイオス(AIOS)」がその解決策になるだろう」と語った。

    大病院の専門家だけでなく町内の病院でも自由に診断を下す、いわゆる「PCR大衆化」を宣言して乗り出したわけだ。チョン代表は「エイオスが実現した検査自動化ソリューションによって分子診断が普及し、個人が日常での分子診断で症状の正確な原因を把握できる時代が来ると、どんな新しい感染症が登場してもパンデミックにまでは至らないだろう」と強調した。

    エイオスの初公開の舞台であるAACCは、世界各国の体外診断の専門家らが参加する診断分野の世界最大の展示会だ。世界の診断関連企業が診断技術や試薬・機器、そして検査などの最新技術と情報を公開する場だが、今年は米国で今月の26日から30日まで(現地時間)開かれる。チョン代表のエイオス発表は初日の26日で、事前に制作した映像を通じて公開される。

    チョン代表は「エイオスが実現した検査の自動化ソリューションは、検体採取と次の段階である核酸抽出からPCR検査、最終結果の読み取りまでの全過程が自動化システムを通じて一気に行われることを意味する」とし、「現在は海外で一部の企業が完全自動化機器を出したが、シージェンのようないくつもの病原体を同時に検査し、さまざまな感染症に対応するレベルには至らなかった」と説明した。チョン代表によると、検査自動化のソリューションはすでにFDAでの使用承認を受けただけに迅速な商用化が可能だ。そのうえシージェンの自動化分子診断機器は、重量が海外の機器に比べてはるかに軽いことが重要な競争力の一つだ。

    チョン代表は「これまで出荷された自動化PCR装置は一体型モデル」だとし、「機器一台の重量が1~1.5トンに達してかさばるうえに、1台の機器で診断できる試薬の種類が限定されているという欠点がある」と説明した。続いて同氏は「一つの機器で限られた数の検査のみを進行することになり、さまざまな検査をするためには巨大な機器を複数台備えなければならない」とし、「このような理由から、規模の小さな一般病院などでは分子診断検査を導入できないでいる」と語った。

    実際に国内で分子診断が可能な病院は、病床数を基準にして9%あまりの大病院だけだ。機器の規模と検査にかかる時間、限定的な試薬の適用性などの限界で大病院をのぞいたほとんどの中小型病院と一線の医院では分子診断は難しいのが実情だ。これは国内だけでなく、世界でも同じだ。

    チョン代表は「シージェンの機器はこれまでに許可を受けた機器を組み合わせる形の分離型である上に、重量と価格も従来の機器の3分の1の水準にすぎない」とし、「さらに1台の機器でいくつもの疾病を同時に診断することができ、中小規模の病院での使用範囲を拡張できる」と強調した。

    シージェンは変異を含む総10種のコロナ19ウイルスに対する診断技術を確保している。コロナ19のほかに最大で15種の呼吸器病原体を同時検出する技術力も備えている。このような技術を自動化PCR装置に搭載したならば、町の病院のどこでも簡単にコロナ19とインフルエンザなどの呼吸器疾患に対する感染の有無を判別することができる時代が開かれる。

    チョン代表は「分子診断の潜在的な市場だった中小病院まで攻略するならば、エイオスの出荷をきっかけにこの市場を先取りできる」とし、「2030年ごろには年間売上げ100兆ウォンを越えることも不可能ではない」と言及した。チョン代表は、来年がシージェンの新しい分岐点になると見ている。診断業界初でほとんどの病院で分子診断が行われることができる道を開き、米国市場にも初めて進出するからだ。同氏は「バイオロッドと呼ばれる地元のパートナーと協業し、米国事業の帆を上げる」とし、「最も速い国は今年の末に、遅くとも来年初めには韓国を含めて町の病院でPCR検査を受ける時代が本格化するだろう」と明らかにした。
  • 毎日経済 | キム・シギュン記者 | 入力 2021-09-23 22:42:03