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【韓国コラム】醜い梨がおいしい

  • 4月には桜とともに梨の花が山川に咲く。遠くから花だけ見たら2つの花が似ているようにも見える。

    韓国の伝統的な郷土果物である梨は西洋の梨に比べてサクサクとした食感、さっぱりした味わい、豊かな果汁に甘みまである。他のことは分からないが西洋の梨とは種類が違う。2014年に駐韓デンマーク大使が羅州(ナジュ)の梨2個をデンマーク王室にクリスマスのプレゼントとして贈ったが、その味に惚れた王室から引き続き送ってほしいと要請され両国の農業協力へと繋がったという。

    梨はリンゴと共に韓国人が好んで食べる代表的な果物だが、昔はリンゴが到底ついていけないほど値段が高かった。そのため主に贈り物として売られた時代もあった。

    梨の花に自負心を持つのも当然だ。ある意味、韓国の女性教育の発生地が梨花(イファ、梨花女子大学)という名前を選んだ理由もそこにあるようだ。

    韓国で梨の特産地は全羅南道(チョルラナムド)の羅州だが、ソウルの中凉川(チュンランチョン)の周辺にも梨畑が生い茂っていた。ここで栽培された梨は「モッゴルベ(먹골배)」と呼ばれるが、主産地であった墨洞の昔の名前がモッゴルだったからだ。

    墨洞で梨を栽培し始めた人は朝鮮第7代王の世祖(セジョ)時代に義禁府(ウィグムブ)都事(トサ)を務めたワン・バンヨン(王邦衍)だ。彼は叔父に王位を奪われ魯山君(ノサングン)に降格し、江原道(カンウォンド)寧越(ヨンウォル)に配流される端宗(タンジョン)の護送任務を担った。16歳で恨みの多い世世から去る少年王が喉が渇いたにもかかわらず「罪人には水を一口も与えるな」という厳命を守らなければならなかった。

    任務を終えて帰還したワン・バンヨンは官職を辞め中凉川沿いに梨の木を植え始めた。果汁たっぷりの梨の木を育てながら、のどが渇いていた端宗を思い出したのだろう。

    実際、彼は端宗の祭祀の日になると自分が取った梨を捧げ、寧越に向かって丁寧にお辞儀をしたと伝えられている。早春の風によって舞い散る梨の花を見ながら端宗の魂が山川をさまよっているような気分になったりもした。

    ワン・バンヨンは廉恥を知っている人だ。

    そのため権力の座も厭わず、梨の木を植えて余生を送ったのだろう。

    お金と権力を欲しがって握った人々は廉恥より厚かましさを選ぶ。厚かましすぎて顔が赤くなる姿を見ることもない。口から吐く言葉は溢れるように流れ出るが、人のことを思う心は少しもないため、人間史の永遠の課題のように思われることもある。

    伝統的な梨を求める人が増え伝統的なお正月の贈り物としても人気が高く丸く色もきれいな物へと品種改良された。こぎれいな梨は皮肉にも味が落ちてしまった。こぎれいな皮を作る遺伝子が味には相性が悪いからだそうだ。

    観賞用や贈り物用ではなく自分が食べるために買う梨なら、できの悪い梨を買うのがコツだそうだ。風雨に弱い黄金梨も見た目は非常に良くないが、味はたいへん良いと言われている。
  • Lim, Chul | 入力 2022-03-26 00:00:00