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[コラム] 近づくには遠すぎる世の中

  • 世の中は本当に恐ろしい。家族でなければ誰も近づいてはいけない。
    どんなにかわいく見えても、遠くから見て満足するべきで、生半可に話しかけたり頭を撫でると痴漢呼ばわりされるのが普通だ。

    数日前、仁川(インチョン)で実際にそのようなことが起こった。
    4月24日午後5時頃、仁川の富平(プピョン)警察署に「保育園から帰ってきた5歳の男の子がいなくなった」という母親から通報があった。

    捜索を始めた警察は、2時間後に仁川のある歩道橋で酒に酔った60代の男と一緒にいる子供を見つけた。家から800メートルほど離れた所だった。

    警察は酒に酔った男がしっかりと話さないので、すぐに未成年者誘拐罪の容疑で逮捕した。一晩、警察署で過ごした男は、幸い翌日の朝釈放された。

    男の子が「おじいさんと楽しく遊んだ」と言ったため、「コンビニに行ってアイスクリームを買ってほしいという子供がかわいくて買ったてあげたし、家に行けといっても付いて来たので一緒にいた」という男の陳述に信憑性を与えたからだ。失踪申告のすぐ後、コンビニにあったCCTVの映像にも子供が物を移すなどいたずらをしたり、コンビニに入ってきた60代の男性に、ねだる姿が映っていた。

    酔った勢いでアイスクリームを買ってあげたせいで拉致犯だと言われ、短時間ではあるが、ひどい目に遭ったようだ。
    そうだ。酔った勢いでアイスクリームを買ってあげたのだ。
    今のご時世、正気の状態で誰が子供にアイスクリームを買ってあげるだろうか。
    それに男の子だったからよかったが、女の子だったら、もう数日警察に世話になっていただろう。

    この世に、どんなまぬけな拉致犯が必死で呼び出した子どもと歩道橋で遊ぶのだろうか。
    「隣に住んでいる人だと言われて確認してみたら、実際の居住地が遠く離れていて現行犯で逮捕した」という警察も理解できる。もし逮捕しなかったら、なぜ確認もせずに帰したんだ、仲間か?と問い詰められる可能性もあるので、ひとまず逮捕しようという警察が哀れに見えたりもする。かわいい子供と一緒に遊ぶこともできない世の中が薄情に感じる話だ。

    世の中は長年、デジタルに制覇されてきた。
    道を歩く時も地面に小銭が落ちていないか注意して見るよりは、スマートフォンを必死に見ながら歩く人ばかりだ。スマートフォンの中にいる美しい子犬やかわいい赤ん坊の姿に見入ってしまって、貧しい暮らしの足しにするために若菜を売りに来たおばあさんやバスの隣の席でぐずる子供は目に映りもしない。

    SNSは人間味を感じないと言って現実世界に帰還しても、ただ周辺をぐるぐる回るだけだ。
    新しい存在との関係は密林の猛獣と接するほど、危険な事になってしまった。

    ああ、あなたはどなたですか
    私の心の深底に孤独を植えましたか
    そのまま通り過ぎる風ならば
    何も知らない他人のように何も言わずに去ってください

    (イ・テヨル作曲、イ・グァンジョ作詞、近づくにはとても遠いあなた)

    遠い昔に流行した歌謡の歌詞のように私たちは皆、他人として生きる、そのような暮らしに適応しなければならないのかもしれない。

  • Lim, Chul | 入力 2019-04-25 00:00:00