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コラム > 韓国造船業界、デジタル化に遅れ…中国造船業界が先行
■ デジタル「仮想造船所」
600万平方メートル(約180万坪)規模に達する造船所がデジタル化された形でモニター画面を満たす。船を水に浮かべた状態で建造作業を行う「岸壁」と、乾いた陸地で外側を先に製作する「ドライドック」が実際の姿そのままに再現された。岸壁とドックにある船舶を押すと建造進行率や炭素排出量、人材・資材投入現況などのデータが詳細に表示される。
洗練された船舶の断面図からエンジンルームの内部のようす、エンジンルームの機械に使用された部品まですっきりと見ることができる。日付別にいつ何がどのように設置され、今後に予定された作業も一目で確認できる。さらには各種の模擬実験の結果とそれにともなう修正事項、リスク診断、完成度の高い入札提案のための分析資料も仮想空間で作られる。試行錯誤や安全事故に対する負担もない。
何よりもこのシステムの核心は、造船所に勤めるエンジニアと本社経営陣はもちろん、協力会社・納品業界の関係者も同時にデータへのアクセスと共有が可能で、作業効率を高めることができるという点だ。
ここはデジタル空間に作られた「仮想造船所」だ。仏Groupe Dassault(ダッソーグループ)傘下の「バーチャルツイン」(実物工場をデジタルで実現した双子空間)設計ソリューション専門企業であるDassault Systèmes(ダッソーシステムズ)の「3Dエクスペリエンスプラットフォーム」で構築された。
■ 仏ダッソー社の仮装技術
最近、記者はソウル市江南区三成洞のダッソーシステムコリア本社に構築された「3Dエクスペリエンス仮想技術体験空間」を訪問した。 3Dエクスペリエンスプラットフォームは造船海洋をはじめ、モビリティ・宇宙航空・エネルギー素材など12の産業群で高度化されたバーチャルツインソリューションを提供する。
韓国の造船3社ともに仮想空間を活用するソリューションをすでに活用している。自社開発した中型の「ヒムセン(HiMSEN)エンジン」を保有する現代重工業は、エンジンを二酸化炭素排出の少ない二重燃料推進体に転換する作業にダッソーシステムのプラットフォームを活用した。サムスン重工業と大宇造船海洋も、遠隔運航のための試運転や造船所業務のデジタル化などにバーチャルツイン技術を利用した。しかしこれは部分導入にとどまった。
ダッソーシステムコリアのチョン・ウンソンCSE事業部本部長は「液化天然ガス(LNG)運搬船などの受注が増えているが、韓国をはじめとする世界の造船会社の年間営業利益率は依然として2%に満たない状況」だとし、「産業の高度化にはスマート造船所に進むべきだが、造船世界1位の韓国の速度は遅れている方だ」と語る。この分野では中国がむしろ早く動いているという説明だ。中国の造船企業は2025年までに、船舶の建造費用を現在の半分水準に減らす方針だ。
ダッソーシステムコリアのチェ・ウヨン造船海洋産業技術代表は「2019年に合併した中国船舶工業集団(CSSC)と中国船舶重工業集団(CSIC)は、傘下の造船所10社あまりの設計から生産段階まで全てデジタル化した」とし、「中国上海のあるクルーズ船の製作会社は2D図面を80%以上なくした」と説明した。江南造船所では不良率とドライドックの建造期間を共に60%以上減らした。