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もっと! コリア (Motto! KOREA)
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  • Q.
    平壌冷麺(ピョンヤンネンピョン)と咸興冷麺(ハムフンネンミョン)はどのように違いますか?
  • A.
    平壌冷麺はムルネンミョン(水冷麺)、咸興冷麺はビビンネンミョン(混ぜ冷麺)。
    このように認識している人々が多いです。
    本当にそうでしょうか?

    • 金剛山(クムガンサン)玉流館(オクリュグァン)の平壌冷麺



    • 平壌、玉流館の平壌冷麺



    • 咸興冷麺



    絵で見ると合ってますね。
    平壌冷麺はムルネンミョン(水冷麺)で、咸興冷麺はビビンネンミョン(混ぜ冷麺)です。

    しかし南部の食堂で売っている平壌冷麺や咸興冷麺は、すべて本来、北朝鮮で作って食べていた物とは違います。

    平壌冷麺はトンチミ(大根水キムチ)に肉のだし汁を混ぜた冷たいそばです。冷たいククス(麺類)も世界的には、あまり目にしないため冷たい肉のだし汁はもっと珍しいです。トンチミと肉のだし汁、そばの麺の単純な組合が奥深い味を出すそうです。

    奥深い味ですって?薄味で素っ気ないですよ。
    そうです。薄味で素っ気ないです。辛くてしょっぱい食べ物に慣れた人々の口には合いません。ソウルの平壌冷麺店でも元祖とよく似た平壌冷麺を出したりもしますが、子供の口には全然合いません。「これをどうやって食べるの?」と首をかしげるでしょう。

    だから冷麺を食べる前に酢とからしをたくさんかけて食べる人が大半です。

    玉流館の調理師出身のユン・ジョンチョルさんは「そんな風に食べるな」と言います。玉流館に「冷麺の麺に酢をつけて食べるとおいしい」故金日成(キム・イルソン)が書いておいたという話を聞いて、箸で麺を取って酢をかける人もいるため、玉流館の酢は南部で売っている酢とは違って酸っぱさが控えめで少し甘味があるので、酢をかけて食べれば冷麺の味を台無しにするだけだと警告します。

    「酢やからしを入れなくても店で出すキムチと一緒に食べれば自然の味を感じることができる」というのがユン・ジョンチョルさんの説明です。

    2018年南北首脳会談の晩餐メニューのメイン料理が冷麺という事実が知らされた後、平壌冷麺の人気が急に増えましたが、ソウルで売っている平壌冷麺はただのソウル式平壌冷麺です。朝鮮戦争以後、韓国と北朝鮮の文化が断絶して平壌冷麺も原型とは全然違った食べ物に変わったのです。

    平壌冷麺の変身には咸興冷麺が大きな役割を果たしました。咸鏡道(ハムギョンド)の住民たちが故郷で好んで食べた冷麺もムルグクス(水素麺)の形だったのです。ジャガイモやさつまいも、とうもろこし、豆などのデンプンで作ったノンマ*グクスが元々、咸鏡道の冷麺でした。

    * 北朝鮮ではデンプンをノンマと言います。

    朝鮮戦争以後、避難してきた咸鏡道の遊民が生きていくために飲食業界に飛び込みましたが、故郷で食べた食べ物は材料さえ見つけにくい状況だったので簡単に手に入れることができるジャガイモのデンプンでノンマグクスを作りました。ここに薬味を乗せて刺激的な味を出して「咸興冷麺**」という名前を付けたのです。

    ** 1953年ソウルの五壮洞(オジャンドン)に開業したビビンネンミョンの食堂が「咸興冷麺」という名前を初めて使いました。

    1900年代の初めからすでにソウルに進出していた平壌冷麺は刺激的な味の咸興冷麺に打撃を受け始めました。刺激的な味の他にも、すぐに切れてしまうそば麺より丈夫な咸鏡道式の麺に人々は魅了されました。1960年代から始まった慶南(キョンナム)、湖南(ホナム)地方の住民たちが首都圏に流入して平壌冷麺は原型を完全に失いました。

    塩と調味料をたくさん使って、現代人の口に合わないし作り方も難しいトンチミ、肉のだし汁の代わりに工場で作るインスタント冷麺が大勢として位置を確立しました。このような過程を経て、ムルネンミョン=平壌冷麺、ビビンネンミョン=咸興冷麺という公式が作られたのです。

    薄味でそっけない味の平壌冷麺は、2010年以後、再度注目され始めました。『SUPER STAR K』出身の歌手ジョン・パク、JBJメンバーのキム・サンギュン、歌手キム・ヒョンチョル、ペク・ジヨン、ソン・シギョン、オク・ジュヒョンなどのミュージシャンの功労(?)が大きかったようです。

    ジョン・パクに平壌冷麺の味を教えたという歌手イジョク(李笛)は『片思い』という曲にこのような歌詞を付けたりもしました。
    「僕は君が欲しい!冷麺よりもっと!!」

    ミュージシャンの活躍で素っ気ない味を味わうことができてこそ本当の美食家という認識も平壌冷麺の「味の復活」に一役買いました。