A. |
2020年2月にtvNで放送されたドラマ『ハイバイ、ママ』はゾンビジャンルとは全く異なる幽霊話です。このドラマには、ゴーストママをはじめかなりの幽霊が登場しますが、恨みに満ちて人を傷つけたり脅かしたりする幽霊は1人もいません。ただ愛する人たちのそばに留まりたがる叔父さん幽霊、お母さん幽霊、赤ちゃん幽霊がいるだけです。 まずはネタバレを避けて簡単にドラマの内容を紹介しましょう。 キム・テヒが演じたチャ・ユリは5年前に赤ちゃんを妊娠し臨月の時、無断横断しようとした男性を避けようとして急にハンドルを切った自動車に引かれ亡くなりました。幸いにもお腹の中にいたソウは無事に生まれました。 幽霊になってもママは子どものそばを離れることができません。そのように子どもの隣に留まっていて、ソウが幽霊を見るという事実に気付きます。チャ・ユリは娘を抱きしめたくて死にそう(?)です。いや、もう死んでるので死ぬこともできません。「どうして私だけが子どもを見るのもダメなの」と絶叫し突然、転生してしまいます。 生まれ変わったチャ・ユリは、どういうことかと巫女に聞きます。そしてこのような言葉を言われます。 「49日以内に死なずに元の場所、つまりソウの母親の位置を取り戻せば人として生きていくことができ、そうでなければ何に転生する分からない」 かなりリスクが大きい転生だったわけです。 その後の展開過程、結末はそれぞれドラマをご覧になってください。ここでは、なぜよりによって49日なのでしょうか? その理由を調べてみましょう。 49、7X7です。 49という数字は大乗仏教の伝統から由来しています。人が死ぬと49日間もあの世に留まり、冥府の七代の王たちに7日ごとに審判を受け転生することになるといいます。このため家族は死者が審判を受ける日に合わせて7日*ごとに祭祀(韓国の法事)を行います。これを四十九祭(四十九日法要)**と言います。 *期日を第1日として計算します。49日間7回、祭祀を行うのが普通ですが、お金もたくさんかかるし面倒だという理由で最後の49日目になる日だけ祭祀を行い喪明けする場合がほとんどです。49日間、慶弔事への参加、旅行、飲酒や歌舞はもちろんのこと夫婦関係も避けなければならないので、いらいらするのも当然です。 **四十九祭は一般的な祭祀とは異なります。料理を準備しておいて念仏も唱えますが、亡者の魂を慰めるよりは審判でいい評価を受けるよう応援する傾向が強いです。ところが多くの人が49日を祭祀と混同し、お墓や家で祭祀の膳を準備して過ごし毎年行うこともあります。さらにキリスト教の家でも49日目になる日に追悼礼拝を捧げます。 仏教では死者の審判は個人の生前行為、業報に限られますが、ここにひそかに儒教の祖霊崇拜思想が割り込みます。後裔たちが49日間真心を込めて祭祀を執り行えば死んだ親や先祖が、その功徳でより良い姿に生まれ変わり先祖の魂が子孫に福を与えるという内容です。言い換えれば死んだ先祖と生きた人が助け合って生きようというわけです。 大乗仏教の伝承が韓国の民間シャーマニズムに影響を与え内容も少し変わりました。7日目になる日にではなく7日間で7回、つまり49日間毎日審判を受けるという伝承もありますが、映画化もされたウェブ漫画『神と共に』はこちらに従っています。 審判を受ける間、死者は生き物が生きている六つの世界(六道)のどこにも属さず中間に挟まった状態になります。仏教では、これを中陰と呼びますが、民俗信仰では「九泉を漂う魂」と呼ばれています。 ゴーストママには大きなリスクが伴います。転生する前の行跡としては当然良い所に生まれかわるに値しますが、冥府に反旗(?)を翻したため天上、人間、畜生、阿修羅、餓鬼、地獄道のどこに落ちるか分からないからです。 ちなみに上座部仏教では人は亡くなってすぐに六道のどこかに転生すると考えられており、四十九日祭を行いません。死んだ後にはどんな儀礼をしても死人に何の効力もありません。先祖の余沢もないでしょう。 |