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韓国でスマートテレビ無用論 ワールドカップ特需も期待できず


  • 韓国でスマートテレビ無用論 ワールドカップ特需も期待できず
  • 今年のワールドカップ特需に対する展望は交錯しているが、テレビメーカーは一斉にワールドカップ・マーケティングに突入した
    写真はサムスン電子のモデルが多様なマーケティング活動を紹介する様子

今年は4年に1度ずつ訪れる「ワールドカップの年」だ。テレビメーカーには最高の年だ。ふつうワールドカップが開かれる年は、テレビの新規需要が爆発的に増える。それだけだろうか?市場調査会社の「ディスプレイサーチ」によると、今年の第1四半期の世界のフラットテレビ市場における国内メーカーのシェアは46.5%に達した。このような傾向が続けば、近いうちに歴代最高の更新が予想される。

一見、国内テレビ業界の雰囲気は申し分なく良く見える。しかし、内実はそうではない。テレビ市場は最近、2年連続のマイナス成長を記録した。競争社の行動も尋常ではない。アップルやグーグルなどのグローバルIT企業がテレビ市場を狙う。いくつかの技術的な限界にもぶつかり、テレビメーカーの課題はこれまで以上に多くなった。

1.クロームキャストの襲撃

テレビ使用者の環境、急激に変化

「われわれはまもなくインターネットを介して、ほとんどがテレビを視聴することになるだろう」。

「インターネットの父」と呼ばれるヴィントン・サーフが数年前に語った言葉だ。彼の予言は、今までは半分が当たった。まだ多くの人々は地上波やケーブルテレビ、セットトップボックスを介してテレビを視聴する。しかし、その割合は徐々に減少する傾向にある。

インターネットを介してPCや他のツールでテレビ番組を視聴することは、いくつかの利点がある。何よりもコンテンツが多様であり、望む番組を望む時間帯に見ることができる。テレビメーカーもこの点を考えて代案を作り出した。それが「スマートテレビ (Smart TV)」だ。スマートテレビはPCで見ることができるコンテンツを、テレビを介して直接楽しむツールだ。放送局やケーブルテレビが提供する番組のほか、さまざまなコンテンツを楽しむことができる。

しかし、スマートテレビは花を咲かす前にすでに威容を失っている。「クロームキャスト(Chromecast)」のようなOTT(Over The Top)専用ボックスが拡散しているからだ。

OTTとは、動画コンテンツを自分の好きな時間と場所で楽しむことができることをいう。OTTサービスの最も大きな利点は、「本放送死守」の必要がないという点だ。米国の「ネットフリックス」は、月8ドルで無制限ストリーミングサービスを提供することで市場を握った。国内にもOTT事業者がある。CJの「ティビング(tving)」、地上波放送局の合弁会社「プーク(Pooq)」、KTの「オーレテレビ(olleh tv)」、SKプラネットの「ホピン(hoppin)」などだ。

特に実用的でありながら安価な「OTTボックス」の登場は注目に値する。グーグルのクロームキャスト、アップルの「Apple TV」、アマゾンの「ファイアTV」などが代表的だ。たった数万ウォンのこれらの機器さえあれば、家にあるデジタルテレビをスマートテレビに変えることができる。スマートテレビ「無用論」が提起される理由だ。

国内のOTTボックス市場も少しずつ形成され始めた。グーグルのクロームキャストがOTTボックスの中では初めて国内市場に登場した。発売されてあまり経たないが、販売量は予想よりも多い。設置が簡単で、価格も低廉なおかげだ。Apple TVとファイアTVは国内には正式発売されていない。しかし、今年の下半期にアップルは新しい形のテレビを出すという噂が広まっている。

もちろん、現在登場したOTTボックスが完璧だと見ることは難しい。グーグルは国内市場に進出して、いくつかの企業とだけコンテンツ提携を結んだ。コンテンツの多様性側面から不足している点が多い。さらに、クロームキャストは映像や音楽ファイルをダウンロードしていつでも再生できる方式ではなく、インターネット上の動画をそのままテレビで見れるようにするだけの機器だ。したがって、「毎回インターネットで映像を探して接続しなければならないので、なんとなく面倒だ」という声も出ている。

それでもOTTボックスの拡大は、放送コンテンツ市場はもちろん、テレビ業界に少なからぬ影響を与える見通しだ。業界関係者は、「今までテレビの革新は製造メーカーのハードウェア技術のみに依存した。OTTボックスの拡大はユーザー利便性の面で大きな変化をもたらす。テレビ市場の主導権もメーカーからグーグルのような、プラットフォームプロバイダに移っている」と説明した。

2.ワールドカップ特需「ある、ない」

今年のテレビ出荷量は増えたが、以前ほどではない

「ワールドカップ特需」に対する意見も分かれている。大多数の専門家らは、6月にブラジルで開催されるワールドカップのせいでテレビの需要が増えると見込んでいる。しかし、効果は例年ほどではないという分析が支配的だ。

今年の第1四半期、全世界のテレビ出荷台数は約4974万台で、前年の同じ期間(4955万台)との対比で0.4%上昇した。10四半期ぶりに反騰に転じたが、その幅は予想ほど大きくない。

イートレード証券のチョン・ビョンギ アナリストは、「ワールドカップはテレビ需要の牽引車の役割を果たす。今年の第1四半期、ラテンアメリカでのテレビ出荷台数は617万台で、前年同期との対比で28.3%増加した。また、日本の需要も19.2%増加した」と説明した。

ワールドカップ特需が作動するとしたいところに、まさに世界最大のテレビ市場である中国のテレビ販売台数がむしろ落ちて足首をつかまれた。ディスプレイサーチによると、労働節の連休をはさんだ3週間、当時の中国におけるLCDテレビの販売台数は374万台だ。昨年の同じ期間に比べて13%も減った。

弱り目に祟り目で、ワールドカップ特需も期待に及ばないだろうという展望が提起される。以前のように大型スポーツイベントを控え、テレビを購入する消費者は多くないという分析が力を得る雰囲気だ。

国内市場はさらにそのようだ。セウォル号惨事に続き、多くの事件・事故などで全般的に社会の雰囲気が沈滞している。このような状況から、家電業界もまた積極的なマーケティングを繰り広げることは容易ではない。韓国チームのゲームがほとんど平日の午前4時以後という点も障害物だ。

3.テレビ革新の袋小路

OLED・曲面テレビの必要性は疑問

「曲面テレビは薄型テレビを置き換えることはできない。一つの流行(fashion)だと思う。3~4年輝いて消えるだろう」。

ディスプレイサーチのポール・グレイ欧州総括理事の考えだ。

「OLED TV」「UHD TV」「曲面テレビ」「スマートテレビ」など、最近テレビの記事で最も多く出てくる単語だ。テレビメーカーが打ち出す「革新」の武器でもある。

消費者は何が何やらわからない。外見だけ見るとOLED TVとUHD TVの違いを見出すことはできない。OLED TVがどんな材料で作られたのかに対して関心をもつ人は多くない。ただし、この製品は既存のテレビに比べて画面が大きい。もう少し大きいテレビを望む需要は存在するので、その程度の価値はある。

曲面テレビはめずらしく思える。しかし、「実生活に必ず必要か」という質問を投じたとき、大分部は「NO」と言う。

かつて「3Dテレビ」が流行したことがある。2010年は「3Dテレビの年」と呼ばれることもあった。その3Dテレビは、いまはほとんど消えた。メガネをかけて3D番組を視聴することはとても不便だった。頭がくらくらするという人もいた。おもしろくもなかった。3Dを感じることができるコンテンツも不足した。各種展示会でも3Dテレビは見られない。

けっきょくハードウェアの進歩だけではテレビの革新に限界がある。UHD TV、OLED TVなどの高画質テレビが登場しても、専用のコンテンツはまだ不足している。継続して「テレビ危機論」が提起される理由だ。テレビメーカーは曲面テレビから一段階発展した「フレキシブル(曲げられる)テレビ」も開発中だ。しかし、これさえも消費者に新たな体験を提供するかどうかに疑問符が付けられる。「最初に見たときの不思議さ」それ以上でも以下でもない。単により高い技術に進むための中間過程であるだけだ。これはメーカーには重要だが、消費者の立場からそれほど重要ではない。

透明ディスプレイや壁面全体がテレビ画面で構成されることなどが実現されると、消費者は初めて変化を実感するかもしれない。このような技術革新は2~3年以内に達成することは難しい。少なくとも4~5年が経過してこそ、商用化の可能性を占うことができる。

「テレビの革新は袋小路に入った」と主張したFarhad ManjooニューヨークタイムズIT専門記者はこう言う。

「いまやテレビに支払う価値のあるアイデアはない。テレビメーカーは無駄な機能ばかりを付けて高く販売している。その代わり、生産効率のおかげで従来のテレビはさらに安くなる。消費者はただ‘安いテレビ’だけ買えば良い」。
  • 毎経エコノミー_カン・スンテ記者/写真_サムスン電子提供
  • 入力 2014-06-09 09:14:32




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