トップ > カルチャー > カルチャー > 嘉会洞の都市韓屋「ハンギョンホン」 地上階は韓屋カフェ、地下は美術館

嘉会洞の都市韓屋「ハンギョンホン」 地上階は韓屋カフェ、地下は美術館

階別の空間は10坪余りで、天井高めに 

ソウルの地下鉄3号線「安国駅」から出てケドンキル(桂洞道り)に沿って10分ほど歩くと、長い時間の生活の痕跡が染みついた集合・多世帯住宅に出会うことになる。韓屋「ハンギョンホン(翰耕軒)」は急こう配の狭い路地にへばりついた、小さな住宅の間に位置している。本当にこぢんまりとした韓屋(ハノク)だ。敷地面積77平方メートルで、延べ床面積は125平方メートル規模だ。地下1階~地上2階建ての建物だが、それぞれのフロア面積は33平方メートル前後にとどまっている。

設計を担当した孔益大学建築学科のキム・ヒョンウ教授は、繊維芸術家の妻の作品を展示するために美術館を物色しているうちに、いまのハンギョンホンが建った土地を買い取ることになった。妻が嘉会洞(カフェドン)の北村(プクチョン)に生まれて幼年期を送ったので、どうせなら多様な人々が作品を鑑賞できると良いだろうというぐあいだった。ところが、いざ建物を建てようとしたところで壁にぶつかった。土地が歴史文化地区として指定されていたのだ。現代建築家のキム教授は、思いもよらず韓屋を建てることになった。北村では珍しい「都市型韓屋」が誕生した背景だ。

  • 嘉会洞の都市韓屋「ハンギョンホン」 地上階は韓屋カフェ、地下は美術館
  • < 写真提供=バクヨウンチェ作家 >

建物の外観から首をかしげることになる。通常、韓屋は平屋建てとして建てるものだが、ハンギョンホンは空間を最大限に確保するために、地下を掘って高級感のある美術館を作り、地上は二階にしてアンティークなカフェとして飾った。ハンギョンホンは上り坂の通り側に位置するため、土地が斜めに傾いている。ただでさえ土地面積も狭いうえに傾斜しているので、建築家はおおいに困っただろう。しかし、絶妙な設計で土地の欠点を魅力的に発展させた。

地下1階の美術館出入り口は、建物の側面に作った。出入り口のドアの高さを十分に確保するために、地上1階の一部の床を高くしたが、この部分がテラスのような「ヌマル(高床の板の間)」を誕生させた。ヌマルは韓屋で最も権威ある空間だ。1~2面が開放されたテチョンマル(縁側)に比べ、ヌマルは3面を開放して外の風景を家の中に引き込む機能をはたす。わが国の伝統建築物で絶景が広がるところには、ほとんどヌマルをしつらえている。

カフェのドアは通りに面して、別個に作った。伝統韓屋は座式だがハンギョンホンは洋式で設計され、床にはオンドルを敷いたけれど靴は脱がない。1階の内部は木構造の肌合いを出してあり、格子柄の建具から射す日差しと合わさって、部屋全体に暖かさが漂う。

  • 嘉会洞の都市韓屋「ハンギョンホン」 地上階は韓屋カフェ、地下は美術館
伝統韓屋が現代建築と化学反応を起こす空間は、1階から2階に上がる階段のようだ。階段の両壁を黒い鋼板で施工した。鋼板は木材よりも厚さが薄いので、大人が余裕をもって上り下りするのに十分なほど、階段の幅が広くなった。壁面に付けられた丸い窓と伝統柄の建具から漏れ出る光が反対側の壁に反射し、幻想的な雰囲気をかもし出す。階段から上の天井の一部はガラス張りで、見上げると梁が見える。韓屋の美しさが最もよく表れるスペースは2階だ。

窓の外には滑らかな曲線美が引き立つ軒が見えて、室内では屋根を支える太い梁と棟木そして垂木が見えている。2階のバルコニーに設置された伝統柄の手すりは鉄で作られた。建築家が昌徳宮からインスピレーションを得て、直接デザインしたという。天井の高さが高いために開放感にすぐれ、空間はよりいっそう広く感じられる。鋼板のような現代的材料を使ったうえに、建築技術も伝統韓屋と差別化した。

ふつう伝統韓屋は木を組み合わせるが、ハンギョンホンは金属継手で各木材をつないで施工した。キム・ヒョンウ教授は、「伝統的な韓屋に現代の建築材料と技術を融合し、伝統と現代を融合させた」とし、「韓屋独自の趣を生かしながら、構造的にはさらに丈夫になった」と説明した。内部の柱も丸太の代わりに小さな木片を密につないだ。丸太を使った場合よりも材料費を節約でき、時間が経っても変形しないという利点がある。

  • 嘉会洞の都市韓屋「ハンギョンホン」 地上階は韓屋カフェ、地下は美術館
紆余曲折も多かった。集合・多世帯住宅が路地に鈴なりにくっついている北村の特性のため、現場で工事を行うことができなかった。けっきょく工場内で各部分をあらかじめ作り、現場に移して組み立てる式で完成させた。新しい材料を使用したことから設計が頻繁に変わり、竣工まで1年半ほどかかった。ふつう韓屋は中央のマダン(中庭)を中心に、部屋を「¬」や「[ 」や「□」のように配置するが、ハンギョンホンは敷地面積が狭いうえに、敷地境界線と建物外壁の間の距離の確保などの建築規制にしばられて、マダンを作らなかった点が少し残念だというのが建築家のホンエだ。

それでもハンギョンホンは韓屋の価値を再評価するために、国土交通省が毎年開催している「2014大韓民国韓屋コンペ」で栄誉の大賞(竣工部門)を受賞した。一年の間に建てられた韓屋の中で、最も優れた建築物として選定されたわけだ。ブロガーと国内外の観光客には「北村韓屋ギャラリーカフェ」としてクチコミがに乗った。

■ キム・ヒョンウ孔益大建築学科教授 / 現代人の生活を反映した暮らしやすい韓屋を

  • 嘉会洞の都市韓屋「ハンギョンホン」 地上階は韓屋カフェ、地下は美術館
キム・ヒョンウ孔益大建築学科教授は、現代人の生活を表現した韓屋を建てなければと強調する。キム教授は、「私たちが家一軒のために、先祖のように不便な暮らしをすることはできないでしょう」とし、「韓屋の趣を生かしながら、同時に生活が便利であればこそ、より多くの人が韓屋に興味を持つだろう」と語る。

キム教授はフュージョンが好きなようだ。彼が設計した「ハンギョンホン」も、地下美術館だけを見れば洗練された高級ギャラリーのようだが、2階にはたおやかな韓屋が鎮座している。内部も反転の連続だ。木材の代わりに黒色鋼板などの現代的な材料を使った。

また、アンティークな板張りの床にデンマークの家電メーカー「Bang&Olufsen」の点滅するワイヤレススピーカーを置き、韓国茶を注文するとカラフルな花柄の描かれたマグカップでもてなす。そのためだろうか、ハンギョンホンを訪ねる客は非常に多様だ。中国・日本などのアジア人観光客は座卓に座って伝統茶を飲み、西洋人観光客はヌマルに設けられたテーブルで、日光浴や外の景色を楽しみながらアメリカンコーヒーを飲む。キム教授の目指した「誰もが楽しく、快適にくつろぐ韓屋」というわけだ。

キム・ヒョンウ教授は、「韓屋が普及するためには、文化財級の韓屋は伝統的な方法で作っても、一般の人が住む韓屋は生活の利便性を考慮して、様々な材料や建築技術を活用しなければならない」とし、「創造的でありながら、実験的な試みがなされなければならない」と語る。また、「離隔距離などの韓屋建築の関連規制は融通を利かせて適用し、すぐには金にならないが、韓屋に合った建築材料とインテリア小物がもっと開発されなければならない」と付け加えた。

現在、伝統韓屋の建築費は一般住宅よりも3倍ほど高価だが、現代韓屋は1.5~2倍程度だ。

キム・ヒョンウ教授は第7回「建築大典大賞」(1988年)、「大韓建築学会作品賞」(2011年)、「建築の日国務総理賞」(2012年)など、大きな賞を多数受賞した。主な作品として弘益大学文化体育館・イヌ軒・ソヨン軒・赤十字看護大学などがある。
  • 毎日経済_イム・ヨンシン記者 | (C) mk.co.kr
  • 入力 2014-10-24 15:46:42




      • facebook icon
      • twetter icon
      • RSSFeed icon
      • もっと! コリア