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韓国のオペラ歌手が賞を総なめ...ファン・スミ、サミュエル・ユン

エリザベート王妃国際音楽コンクール、独バイロイト・オペラフェスティバル、ニューヨーク・メトロポリタン、英国ロイヤル・オペラ劇場 

  • 韓国のオペラ歌手が賞を総なめ...ファン・スミ、サミュエル・ユン
  • ファン・スミ

「韓国の人々は特別な食べ物と水を飲むんですか?どうしてそんなに歌が上手なんでしょう?」韓国国内の声楽家たちが世界のオペラ舞台と様々なコンクールを総なめにするやいなや、外国人たちがよく投げかける質問だ。

先月、ベルギーのブリュッセルで開かれた「2014 エリザベート王妃国際音楽コンクール」声楽部門で優勝したソプラノのファン・スミさん(28)は、笑い話で「キムチサウンド」と答えた。実際にわが国の声楽家たちの声はよく発酵したキムチの味のような、深みがあってピリッとした味がある。からい唐辛子のように強烈で躍動感あふれる声を出す。音楽DNAもある。カラオケに行ったことのない人はほとんどいないほど、歌の好きな民族だ。また不幸な歴史が繰り返され、体の中に根ざした恨の情緒が切々たる歌として昇華される。

しかし、生来の資質を極大化するものは、最終的には熱い情熱だ。血のにじむ努力で東洋人に対する差別を飛び越えて、西洋芸術を征服した。

◆口腔の構造が異なる

最近来韓した世界的なメゾソプラノのニーノ・スルグラジェ(37)は、「ヨーロッパではバリトンのコ・ソンヒョン、テナーのパク・チウンなど、韓国の声楽家たちと一緒に公演したが、声量がすごく大きくて驚いた」と語った。

彼の言葉通り、わが国の声楽家たちの響きは特別だ。西洋人より共鳴(振幅が急激に増える現象)に有利な口腔の構造を持つというのが専門家らの意見だ。テノールのチェ・サンホ韓国芸術総合学校教授は、「頭蓋骨に共鳴を左右する空間がある。遺伝的に韓国人は頬骨が広く高く、顔が小さくて長細い西洋人よりも共鳴にはるかに有利だ」と説明する。

韓国語が長所にもなる。バスのヨン・グァンチョル ソウル大教授(50)は、「母音の多い韓国語のおかげで、世界の言語を発音しやすい」と語る。気候も歌に影響を与える。韓国は声楽の本場であるイタリアのように四季がはっきりして、多様な感情表現に強いとチェ・サンホ教授は主張する。チェ教授は「太陽の光が人の感情を左右する。気候が燦々とした国の人は明るく華麗な高音を好む。一方、北欧に行くほど暗く低い声をたくさん出す。ノルウェー、スウェーデン、フィンランドに秀でたバスが多く、スペインとイタリアから良いテノールが輩出されている」と語った。

◆調子が悪くても舞台に立つ勤勉・誠実
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  • サミュエル・ユン(左)とヨン・グァンチョル(右)

オーストリアのインスブルック・オペラ劇場所属の声楽家でバリトンのイ・ドンファン(33)は、どんなに調子が悪くても出勤を強行する。体の調子が少しでも良くなければ公演を中止するヨーロッパの人々と比較して、信頼は高まるしかない。勤勉で誠実な態度のおかげで、彼は信頼を与える声楽家として地位を固めた。

テノールのキム・ヂェヒョン慶熙大学教授(41)もコンディションに関係なく、無条件に歌った。キム教授は、「実は歌う私だけが大変で、聴く人は微妙な違いをよくわからない。8年の間、このように本当に苦しいほどにドイツのオペラ舞台で訓練した」と打ち明けた。歌が上手で勤勉な韓国の声楽家は、専属声楽家を置くドイツのオペラ劇場のあちこちに布陣している。少し誇張して「韓国の声楽家がいなければドイツオペラが回らない」という言葉があるほどだ。最近、その功労を認められている。

15年の間、ドイツのケルン歌劇場所属の歌手として活躍したバス・バリトンのサミュエル・ユン(43)は最近、ケルン市オペラ歌手賞の栄誉を抱いた。ドイツ最高のソプラノであるアニヤ・ハルテロスとドイツ最高のバリトンであるヨハネス・マルティン・クレンツルが受けた賞だ。ケルン市側は、「サミュエル・ユンがドイツの作曲家ワーグナーのオペラ祭であるバイロイト・フェスティバルの主人公として活躍し、ケルン市の名誉を高めた」と、異例的に自国声楽家ではなくサミュエル・ユンを受賞者に選定した。1998年からドイツのシュトゥットガルト国立劇場専属歌手として活動したバスのチョン・スンヒョン ソウル大教授(41)は、2011年にドイツの文化部長官が授与する「宮廷声楽家」呼称を受けた。声楽家としては最高の栄誉である人間国宝級の待遇を受ける。ドイツのハンブルク歌劇場で活躍した韓国人ソプラノのヘレン・クォン(53)に続き2番めだった。

◆熾烈な競争、強靭な精神力

最近、ケルン国立音楽大学声楽科の入学試験に押し寄せた志願者160人のうち120人が韓国人だった。定員は10人前後。韓国人学生は多くても3~4人程度合格できる。学費を全額支援するドイツの教育システムでは、自国民を優先的に選抜するしかない。サミュエル・ユンは、「韓国人は歌がうまくても落ちることがある。ドイツの大学入学試験の基準は、外国人により厳しくなってきている」と語る。

韓国人の声が良くても、歌詞の伝達力を左右する言語の問題にぶつかるしかない。その限界を克服するには、外国人よりも何倍も努力しなければならない。歌と曲で勝敗が分かれるコンクールや、オペラ劇場のオーディションで生き残るためには、強靭な精神力は必須だ。競争中心の韓国の教育システムに慣れていることが役立つこともある。有名な芸術中・高等学校に入学した時から狭い門をくぐらなければならない。ソウル芸術高校とソウル大学校音楽大学を卒業した後、ドイツのミュンヘン国立音楽大学に留学したファン・スミさんは、「幼い時から競争の中で生き残らなければならなかった。一方、ヨーロッパの人々は音楽を楽しむ。韓国の声楽家がより切迫して練習する」と語った。声帯に限界があるため、一日に最大で3時間を歌うことができる。その他の時間に歌詞の意味と演技をどれだけ緻密に勉強するかによって成功が左右される。

◆ヨーロッパで耐え抜いた忍耐力と親の献身

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  • ホン・ヘギョン

「お前の国に消えてしまえ」。わが国の声楽家たちは外国の舞台でこの言葉をいつも聞かされた。

キム・ヂェヒョン教授は、「東洋人として受けた悲しみをすべて語るには夜を明かさなくては」とため息をついた。実力が似通ったものならば、オペラの配役とイメージが合わない東洋人をキャスティングする理由がない。

ニューヨークのメトロポリタンオペラ劇場で30年間活躍したソプラノのホン・ヘギョン延世大教授(56)は「待つ女王」だった。1982年に韓国人で初めてメトロポリタン・オペラコンクールで優勝したが、何の役もつかむことができなかった。2年をじっと待った末の1984年11月、メトロポリタンオペラ劇場でジェームズ・レヴァインが指揮するモーツァルトのオペラ「ティト帝の慈悲」にセルヴィリア役で華麗にデビューした。

ホン教授は「デビュー後30年のあいだ、プッチーニのオペラ”蝶々夫人”を拒絶してきた。東洋人だから日本女性の配役を任されるのが嫌だったし、私の声と合わないから」と語った。

オペラ声楽家になったからといって一攫千金を得るわけではない。ドイツのオペラ劇場の初任給は一般的な企業よりも少ない。声は30代後半から40代半ばに熟するので、長い期間を収入なしで耐えなければならない。勉強期間も長い。学部を卒業した後に修士と博士、最高演奏者過程などを経る間、親に頼るしかない。田舎で農業を営んだヨン・グァンチョル教授の父は、牛を売って息子の留学費用を用意した。サミュエル・ユンも留学時代の5年間に家族の補助を受けなければならなかった。

サミュエル・ユンは、「1998年のコンクール受賞金が初めての収入だった。デビュー当初はドイツで家賃を払い、暮らしもぎりぎりだった。体の中に深く埋め込まれた音楽への情熱がなければ持ちこたえることができないほど、粘り強さと忍耐が必要だ」と語った。
  • 毎日経済_チョン・ヂヒョン記者 | (C) mk.co.kr
  • 入力 2014-06-13 15:48:21




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