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善悪の対決構造のない「ロボカーポリー」の世界


  • 善悪の対決構造のない「ロボカーポリー」の世界
  • 去る4日、ソウル市江南のロイビジュアル(ROI VISUAL)本社でロイビジュアルのオム・ジョンウン監督が『ロボカーポリー(Robocar Poli)』救助隊モデルの前で明るく笑っている。 ハン・ジュヨン記者



「アンバー、僕がヘンなのかなあ?」。キャップは友達とボール遊びをして、体に泥が付くとすぐに洗車に走っていく。体に汚れがついているのが嫌いなのだ。ボール遊びをしていて何度も洗車に駆けつけては、もっときれいにしようと無理をして、洗車機に体をはさまれる事故を起こす。キャップを助けるために出動したロボカー救助隊のアンバーにキャップは尋ねる。自分がヘンなのかというわけだ。 「そうじゃないよ、キャップ。けど、汚れることにあまり気を使うと、楽しく遊ぶことができないだろう?楽しく遊んでから洗うのはどう?」。アンバーの提案にキャップは「これからはそうしてみる」と答える。アニメーション『ロボカーポリー』シーズン2のうち、『キャップは自然のまま』編に出てくるシーンだ。

このシーンには『ロボカーポリー』を製作したロイビジュアルのオム・ジョンウン監督(副社長・44歳)の、自分の長男にどうしてもできなかった悔恨の話が盛り込まれている。友達と遊んでいて頻繁に靴に入った砂を払い落とす息子を見て、オム監督はなぜ息子が友達と交わらずにいるのか、社会性が無いのではないかと心配していた。子供はストレスを受ける状況を回避しようと遊びに参加せず、母は重苦しいだけだった。もしもその時に「そんなものよ。わかる。しかし楽しく遊んでその後で洗ってもいいと思うけど?」と言ってやったならどうだったろうか。息子にしてやれなかったその言葉を、彼女はアンバーの言葉を借りてキャップに語る。もしかすると自分自身に言っているのかも知れない。

2010年に放映を始めてシーズン4まで続いた『ロボカーポリー』の多くのエピソードには、オム監督の思い出と物足りなさが込められている。『ロボカーポリー』のキャラクター誕生10周年を迎え、4日にソウル市江南のロイビジュアル本社でオム監督に会った。今年19歳になった長男が「お母さんのアニメはいま見ても面白い。うまくできている」と言うときが最も嬉しいというオム監督は、膝下の二人の息子のために『ロボカーポリー』を作った。

「『ロボカーポリー』を企画した当時、子供たちは3歳と6歳だった。子どもたちとアニメを見ていると、攻撃的な特性を誘発する対決構図と善悪構図のコンテンツが多かった。4~6歳の子供たちに親として、安心して見せられるコンテンツを作ろうと思いました」。

変身ロボットや自動車などの男の子が好む要素を十分に反映しながらも、戦うよりも誰かを助ける方が良いと思いをめぐらせたところ「救助隊」が浮上した。オム監督が企画して製作した『ロボカーポリー』は、島の村ブルームスタウンで助けが必要な友人のために出動する救助隊の話であり、パトカーのポリーと消防車のロイ、救急車のアンバー、ヘリコプターのヘリ、発明家のジーンなど、5人の救助隊員で構成されている。紆余曲折の末に政府の支援プロジェクトとして選定されて制作した『ロボカーポリー』は、この10年間に144カ国で35の言語で放映された。

制作して難しかった点を尋ねると、オム監督は「毎回事故が起こらなければならないし、事故に至る過程で蓋然性がなければならず…それを考えるのが難しかった」と語る。ホームページに「ブルームスタウンはなぜ毎日そんなに事故が起きるのか」という指摘があがってきたが、オム監督は「コンセプトそのものが、困難を自ら解決できずに事故が起こり、これを救助する過程で心を解きほぐすものなので事故が起きないことはできない」と説明した。

幼い頃から漫画家になるのが夢だったオム監督のオフィスの本棚には、フィギュアと童話がぎっしりだ。家庭の都合上、美術大学の代わりに成均館大学の消費者家族学科に進学した時も、小さなスタジオで短編アニメーションを作成する方法を学びつつ情熱を育て続けた。大学3年生の時は創作アニメーション同好会に入って商業アニメーション市場に足を踏み込んだが、ここで一緒に活動していた今の夫と1998年に「ロイビジュアル」を創業し、ウビ少年(Woobiboy)やチロ(Chiro)と友人たちなど、認知度のあるキャラクターとアニメーションを作った。

自分と似たアンバーが一番好きだというオム監督は、「『ロボカーポリー』」10周年の意味を尋ねると「作品を作りながら子供をより理解しようとする過程で、私も親として一緒に成長したと思う」と語る。

「『ロボカーポリー』 シーズン4」の放送以後、5年間の空白期を破って来る5月に「『ロボカーポリー』 ソンソンミュージアム」が、来年には「『ロボカーポリー』 シーズン5」が放映される。オム監督は「素材枯渇もひどくて、いつまで『ロボカーポリー』を作れるのか個人的な悩みもあった」とし、「その頃に思春期に入った子供たちに、母親の不在が長かったということを悟って2年半ほど一緒に時間を過ごした」とした。

2018年10月に復帰した彼女は、「シーズン5には魅力的な女性キャラクターをはじめ、さまざまな年齢層のキャラクターが登場して異色のな素材を扱う」と言う。さまざまな社会的価値の声を代弁できるキャラクターが登場するアニメーションを作るのがオム監督の夢だ。
  • 毎日経済_クォン・ハヌル記者 | (C) mk.co.kr
  • 入力 2020-03-09 19:21:37




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