韓ETRI「常温動作量子コンピュータ」に挑戦


  • ETRIが開発した、単一光子生成および量子ゲートが単一のチップで構成されたパッケージ。


世界最強のスーパーコンピュータを使っても1万年かかる計算をわずか4分以内に行えることから「夢のコンピュータ」と呼ばれる量子コンピュータを現実にするために最大の障害がひとつある。現在開発中の技術では「絶対零度(零下273度)」に近い、極低温状態でのみ動作できるという点だ。

既存のコンピュータは最小演算単位として「ビット(bit)」を使用する。ビットは「0」または「1」であるため、ビット一つ当たりの情報だけを処理することができる。しかし量子コンピュータは違う。基本情報単位であるキュービット(qubits)は0と1の状態を同時に持つことができるので、n個のキュービットが示すことができる状態の数は2のn乗だけ大きくなる。これを量子コンピュータの「並列性」という。これによってキュービット2つは「00、01、10、11」という4つの状態を、キュービット4つは2の4乗、すなわち16個の状態を示すことができる。

キュービットで最も多く使用される媒体は電子、光子、原子核だ。現在、量子コンピュータ系で最強と評価されるIBMとGoogleは、電子を活用する超伝導体ベースの量子コンピュータを開発している。 Googleで製造された53個のキュービット構成の「Sycamore(シカモア)」という量子コンピュータのチップは驚異的な演算速度を誇るが、摂氏マイナス273度まで冷却してこそ動作する。

韓国電子通信研究院(ETRI)量子光学研究室のチュ・ジョンジン責任研究員(博士)は、「超伝導体をベースにした既存の量子コンピュータは、絶対温度0度まで冷却すると電気抵抗が消える原理を利用するために常温で動作することが困難で、常に極低温環境を維持しなければならない」と説明した。原子核をキュービットとして使用する「ion trap(イオントラップ)」方式も極低温でのみ動作する。

ところでETRでは光の最小単位である光子を用いて量子コンピュータを実現するための研究を行っている。光子は常温でも量子が0であったり1であったりもできる「量子重畳」状態を非常にうまく維持する特性があり、常温でも量子コンピュータを作動することができるからだ。

チュ博士は「光子は自然の基本的なエネルギーの単位で扱いが非常に難しいが、周囲の環境との相互作用が少なく、常温で光子のコヒーレンス間の量子重畳状態を非常によく維持するという特性がある」と説明した。コヒーレンスは、量子情報が保持されることができる時間だ。

これと関連して、ETRIは光子ベースの量子コンピュータを実現するための基盤であり、中核となる技術である「単一光子」を分離することに成功した。単一光子を開発するために世界の多くの研究所が研究しているが、実際の通信で多く活用されている1550ナノメートルの波長帯域で、単一光子光源をもつれ状態に生成する技術はETRIが最も優れていると評価される。チュ博士は、「とても強いレーザー光をシリコン光集積回路に入力すると、光集積回路内での非線形相互作用によって新しい単一光子が2つ作られる」とし、「このように作られた光子はもつれた状態で存在する」と説明した。

「量子もつれ」は重畳とともに、量子コンピュータの動作に必要な核心的現象だ。もつれとは22つの粒子が強い相関性を持てば、どんなに離れさせても片方が反応したときにもう一方もすぐに反応する現象をいう。

量子コンピュータは既存のコンピュータとは異なり、まるで「ブラックボックス」のような形で動作する。チュ博士は「量子コンピュータはブラックボックスのように、開いて見ることができない」とし、「このために量子コンピュータの計算でエラーが発生しても開いて補正することができず、エラー測定を調べるか、またはエラー補正をするためにはもつれ状態を活用しなければならない」と説明した。つまり量子コンピュータの中にある陽子と外にある量子をもつれ状態にしておけば、外でもエラーを確認することができるようになる。

ETRIはもつれ状態の量子光源を用いて量子情報を操作する光集積回路素子も開発した。関連の内容は、来る12月の優秀国際学術大会であるECOCで発表する予定だ。チュ博士は「今後、国内の半導体企業は量子関連の素材・部品・システムの企業と協力して、常温動作量子コンピュータ実現に一歩近づくことができるだろう」と期待した。
  • 毎日経済_イ・セボム記者 | (C) mk.co.kr
  • 入力 2020-09-29 22:29:33