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韓国で司法試験存置をめぐり議論が行われている理由は何ですか?


去る12月3日。法務部長官が2021年まで4年間、司法試験廃止を留保して法曹の養成制度について改善策を講じると発表しました。

長官の発言は、蜂の巣を荒らした格好になってしまいました。実際、これまで司法試験を存置するかどうかをめぐり、ロースクールとロースクールのない大学の法学部教授、学生間で尖鋭な対立が続いてきており、法務部長官の発言は、一方的に片方の手を挙げたことになってしまったのです。

まず、韓国の法曹養成制度、簡単に言うと弁護士(判事・検事)になる道を紹介するのが順序ですね。現在、弁護士になる道は二つあります。ロースクール(法科大学院)を卒業して、弁護士試験をパスするのが一つと、国が主催する司法試験に合格した後、2年間司法研修院で研修を受けることです。

ロースクールに入るためには4年制の大学を卒業しなければならず、ロースクールで3年間学ばなければならなので、医学部の6年より長くなります。そういえば、医師たちも医大を終えた後、インターンとレジデントという試用期間を経てこそ、専門医になることができますから、学習期間だけでは比較できないかもしれませんね。

韓国でロースクールは、2009年に初めてできました。その前までは司法試験に合格してこそ法曹になることができました。1970年代までは司法試験合格がとても難しいものでした。2次試験が平均60点以上であれば合格する絶対評価方式だったので、惜しくも59.6点で落ちる不運を経験する人もたくさんいました。その当時は、司法試験に合格した後、検事になって地方に発令を受ければ、幼い年齢でもヨンガム(令監=身分の高い人に対する敬称)と呼ばれていた時代でした。

決して望ましい現象ではありませんが、韓国社会で法律関連の需要が増えて法曹が必要になると、司法試験を改善しなければならないという声も高くなりました。司法試験のほか、軍法務官試験という制度があるにはありましたが、韓国社会が要求する法曹の数をカバーするには全然的に不足していました。その時は本当に判事や検事だけでなく、弁護士の威勢も強かったものです。

地方の小都市では弁護士を見つけることすら難しい状況でしたから、当然のことです。

不足している法曹を埋め合わせるために、最初に変えた制度が司法試験を絶対評価から相対評価に変えることです。毎年、合格する定員を発表して、その数に合わせて選抜したのですが、最終的には合格定員が1000人まで増えました。

その後、1995年に文民政府時代のグローバル化推進委員会で、米国式ロースクール制度を導入しようという案件が出てきた後、10年を超える議論の末、ロースクールが作られたのです。

だからといって希望する大学のすべてにロースクールができたのではありません。条件が厳しかったのです。主な名門大と地方国立大学にはロースクールができましたが、すべての大学にできた訳ではありませんでした。現在、ロースクールのある大学は25校です。

ロースクールの定員に制限があるわけです。司法試験合格も難しいですが、ロースクール入学も侮れません。巷では、お金があって権威のある家門の子弟が入るところだという言葉が溢れています。現代版の「蔭敍制」(高麗・朝鮮時代に高官などの子弟を科挙を経ずに官吏に採用していたこと)と呼ばれる理由でもあります。

不正入学に関する論争が後を絶たなかったのですが、ロースクールができてから初めて、教育部(文部省に該当)が全国25のロースクール入学選考の実態を全数調査すると言い出しました。弁護士会は、これまで議論に目をつぶってきた教育部が、法務部で司法試験存置を発表した後になって行動に移したと非難しています。

司法試験存置について反発しているのは、ロースクールの教授と学生です。考試村(資格や免許を取るための試験を準備するための塾や人が集まっている地域)で試験の準備に没頭してきた古い学生(?)にとっては、天が与えてくれた贈り物です。ロースクールがない大学の法学部の教授を主軸にした法学教授会では、すぐにでも司法試験存置可否について国会で決定すべきだと主張します。

すぐに決定しなければならないほど時期が迫っているからです。現行法上、司法試験の1次試験は2016年初め、2・3次試験は2017年が最後です。法通りであれば、来年3月に受ける司法試験が最後になります。

今、国会では司法試験を維持しようという趣旨を盛り込んだ法案がなんと6~7個発議されている状態です。廃止が目前に迫っているものの、法案を審議することに躊躇したのです。この法案は、1次で国会法制司法委員会を通過する必要がありますが、これが難しいのです。委員会に属する国会議員のほとんどが法曹界出身であるため、ロースクールにも気を使わなくてはならず、法曹の生計を守ることにも気を使わなくてはいけません。

ロースクール側は、政府が約束を守らないと反発し、集団退学するという学生もいるほどです。司法試験を実施しようがしまいが、自分たちもロースクールを出て弁護士になればいいのに、なぜ反発するのでしょうか。

弁護士が増えてしまうと、弁護士試験に合格しても行く場所が少なくなるからです。もちろん、家門が良かったり実力が優れていれば何の心配もないでしょうが、就職を心配する弁護士が増えている状態ですから、心配になったりもするでしょう。そのため、ロースクールの卒業試験ともいえる、弁護士試験も難しくなるのではないかという心配も加わるでしょう。

司法試験を存置するかどうかをめぐり、法曹界が争っているのを見ると、国民の目にはただただ頭のいい人たちの陣取り合戦のように見えてしまいます。すでに2年前に上程された法案を今日明日へと引き延ばしてきた国会議員が責任を負う部分でもありますね。
  • Lim, Chul
  • 入力 2015-12-28 00:00:00




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