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「ヴィクトール・アン」に金を抱かれた韓国の悲しい自画像


「アン・ヒョンス(安賢洙)シンドローム」がスポーツ界を超えて、社会全般に拡散している。金メダルが重要なのではなく、この際、1等至上主義とこれによる派閥争い、八百長のような誤った慣行を振り返ってみようという自省論だ。

アン・ヒョンス(29・ロシア名ヴィクトール・アン)が去る15日(韓国時間)に開かれたソチ冬季五輪ショートトラック男子1000メートルで、ロシア国籍で金メダルを取った後、大多数の国民はわが国の選手であるかのように祝った。ツイッターは祝いの挨拶で塗りつぶされたようだった。

しかし、一方ではアン・ヒョンスをロシアに追いやった、体育界の病弊に対する糾弾があふれた。「どうしたら国籍まで変えるだろうか」と、大韓氷上連盟を非難する書き込みが殺到し、一時は連盟のサイトが麻痺するほどだった。

スポーツ界だけではない。社会全般にわたって、1等至上主義とそれによる弊害を振り返って見なければならないという自省が生じている。キム・ビョングァン亜洲大社会学科教授は、「われわれの社会がいまや開発時代の無限競争と、勝者一人占めの秩序を克服する時がきた」とし、「2等、3等と敗者も認めなければならないし、また最近の若い世代の情緒もそうだ」と語った。

◆派閥主義と八百長...アン・ヒョンスの挫折
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ショートトラックで、派閥論争が初めてあらわになったのは2006年4月だ。当時の代表チームは、世界選手権で金メダル7つを取る全盛期だった。しかし、アン・ヒョンスの父親アン・ギウォンさん(57)は、「アン・ヒョンスが派閥争いの犠牲になった」とし、「選手らが派閥を作り、アン・ヒョンスが1位に入ることを妨害した」と主張した。

韓国体育大学と非韓国体育大学のあいだの歪んだ派閥意識が、選手団を割り裂いたという話だ。父親のアンさんは、ショートトラックの派閥争いだけでなく、「八百長」があったと暴露した。2010年にアンさんは、「2009年4月に開かれ国家代表選抜戦で、イ・ジョンスとクァク・ユンギなどが談合し、2010年冬季オリンピックの出場権と、世界選手権の出場権を分け合った」と主張した。

2010年、バンクーバー五輪で金メダル2個を獲得したイ・ジョンスは、同年4月の世界選手権大会に、「足首の負傷」を理由に出場しなかった。しかし、イ・ジョンスは足首を負傷しなかった。連盟の調査で、イ・ジョンスは「(クァク・ユンギに出場権をやるために)コーチらが‘負傷のため出場しなかった’という覚書を強要した」と暴露した。

談合と八百長に失望したアン・ヒョンスは再起を模索したが、韓国のショートトラックで頼れるところはなかった。2010年、所属チームだった城南市役所が、財政赤字を理由に氷上チームの解散決定を下す。オリンピック金メダル3個を獲得した英雄だったが、彼を受け入れてくれるチームはただの一つもなかった。

◆アン・ヒョンスは復活したが、我々はまだ...

さまよったアン・ヒョンスは2011年4月、全幅の支援を約束したロシア舞台への進出を宣言する。ソチオリンピック出場のために、その年の8月に帰化を宣言し、今回のオリンピックで金メダルを獲得して復活に成功した。アン・ギウォンさんは、「息子の金で今やすべてを許すことができ、韓国で‘第2のアン・ヒョンス’が出ないようにと思う」と語った。

しかし、韓国のショートトラック、さらにはわれわれの社会はまだ1等至上主義、金メダル至上主義から抜け出せずにいる。

チョン・ヒジュン東亜大スポーツ社会学科教授は、「ショートトラックだけでも選手たちが暴行に悩まされたという報道が何回かあったが、オリンピックでなければ国民的関心さえも引かなかった」と指摘した。

オリンピックやワールドカップなどの国際イベントにのみ、また1等にのみ熱狂して拍手する社会の雰囲気は、いまや変わらなければならないという指摘だ。アン・ヒョンスをロシアに追いやった派閥争いや八百長も、結局は1等至上主義が祟ったものだ。

イ・チョルウォン延世大スポーツレジャー学部教授は、「わが国は頑張る者に対して拍手する文化に吝嗇な側面がある」とし、「1等至上主義が変わるためには、そのような国民の意識や文化自体が変わらなければならない」と語った。
  • 毎日経済_チョン・ソクファン記者/ウォン・ヨファン記者/キム・シギュン記者 | (C) mk.co.kr
  • 入力 2014-02-16 17:39:04




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