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[科学の香り] 30代で腰の曲がった青年、強直性脊椎炎のせい

韓国科学技術情報研究院(KISTI) 

  • [科学の香り] 30代で腰の曲がった青年、強直性脊椎炎のせい
道を歩いていて、 腰が丸く曲がったおばあさん、おじいさんを見かけることは珍しいことではない。しかし、「丸く曲がった」腰は高齢者だけの話ではない。20~30代でも腰が「丸く曲がる」可能性がある。病名は強直性脊椎炎で、靭帯や腱に慢性の炎症が生じて背中と腰が徐々に固まる病気で、20~30代の男性においての発症率が最も高い。強直性脊椎炎は、脊椎の骨と骨の間が互いにくっつくために、体を前や横に曲げたり、後ろに反らす動作が難しくなる。このため、「竹の脊椎病」と呼んだりもする。

健康保険審査評価院(2013年)の資料によると、強直性脊椎炎の患者は去る2013年に35592人で、1400人あたり1人の割合で、この病気を患っていることが分かった。見知らぬ名前とは異なり、珍しい病気ではないということだ。このうち、男性が全体の70%(24535人)で、女性に比べて2.5倍多く、20~30代が11669人と半分を占めた。

原因はまだ正確に分かっていないが、遺伝的要因が大きいという。強直性脊椎炎患者の約90%は、HLA~B27遺伝子を持っている。また、家族の中で強直性脊椎炎患者がいて、さらにHLA-B27遺伝子を持っている場合は、発症頻度が10~30%ほど高いことが分かった。しかし健康な人でも、5%程度はHLA-B27遺伝子を持っているため、専門家は細菌感染症や外傷、過労などの環境的要因も発症に影響を与えると見ている。

問題は、初期症状が明確でなく、病気に対する認知度が低いせいで、症状が出てから正確な診断を受けるまで5~20年がかかるという点だ。ほとんど関節炎や腰の椎間板ヘルニアだと誤認して、見当違いな治療を受けて早期治療の時期を逃す場合が多い。したがって、症状が似たような病気と違う点を知っておく必要がある。

強直性脊椎炎の代表的な症状は、お尻の痛みだ。左右が交互に痛く、夜明けに痛みがひどくなるが、朝起きて活動を開始すると症状がよくなる。このため、疲れにより少しの間だけ現れた症状だと思って放置する場合が多い。患者の30%程度は目のぶどう膜に炎症が生じ、視力が落ちたり、光のにじみを訴えたりする。このほかにも膝や足首が理由もなく、腫れる症状も現れる。

また、病気が進行するにつれて、痛みがお尻から腰の方に移動するため、腰の椎間板ヘルニアだと誤認することもある。違いは、痛みがひどくなる時間帯だ。椎間板ヘルニアは、強直性脊椎炎とは逆に昼に活動する時に痛みがさらにひどくなり、横になって休むと痛みが減少するという点だ。消炎鎮痛剤を使用する時、強直性脊椎炎の治療には効果があるが、椎間板ヘルニアには役に立たない。

10~20代の患者は、腰の痛みより原因を知ることのできない関節炎が先に現れる場合が多い。アキレス腱や靭帯の炎症が頻繁に登場するのも特徴だ。肋骨と胸骨の結合部位の靭帯に炎症が起きて、胸の痛みが生じることもある。

自己診断法としては、▲40歳未満でありながら ▲腰の痛みとお尻の痛みが3か月以上持続し ▲早朝や夜遅くに痛みがひどくなり、活動するとよくなる特徴があり ▲家族の中で強直性脊椎炎の診断を受けた人がいて ▲足首や膝がよく腫れたり ▲アキレス腱や胸の痛みがあったら、リウマチ内科専門医の診療を受ける必要がある。

診断は、X-ray、CT、またはMRI検査で仙腸関節(腰の最後の関節と骨盤の骨が連結される部位の骨)の炎症の有無を通じて確認する。

強直性脊椎炎は、事実上予防が難しい病気だ。しかし、早期に診断して治療すれば、脊椎が曲がって固まる症状を防ぐことはできる。一次的な治療には、非ステロイド性消炎剤を使用する。禁煙は必須であり、ストレッチングや水泳のような運動用法も並行する。末梢関節に炎症が生じたときは注射を利用し、関節の中にステロイド剤を投薬することもある。

しかし、治療後にも症状がよくならないときは、TNF-α(tumor necrosis factor-α、腫瘍壊死因子)作用を遮断するために、体内の免疫作用を抑制する注射(抗TNF製)を使用する。これは、強直性脊椎炎だけでなく、関節リウマチや炎症性腸疾患、乾癬などにも使用するもので、すべて自己免疫疾患であり、根本的な原因が免疫体系の異常だからだ。

この注射は根本的な原因を抑制するため、治療効果が良い。痛みが急速に好転して、日常生活への早い復帰が可能だ。しかし、体内の免疫システムを抑制するため、肺炎や結核のような感染性疾患に脆弱になるという弱点がある。去る2月、大学医学会誌を通じて発表された研究結果によると、抗TNF薬を投与された873人を対象に結核の感染危険を調査した結果、韓国人の平均的な結核の危険度より、結核にかかる確率が41.7%も高いことが分かった。

専門家は「治療効果を高めるための禁煙と運動は必須」とし、「運動をしなければ、脊椎関節が固まる症状がひどくなるため、筋肉に大きな負担をかけない水泳やストレッチなどの運動を着実にすること」と強調した。

予防法のない病気において最善の道は早期治療だ。特にオフィス勤務の多い20~30代の中には、慢性の腰痛を抱えて暮らす人が多い。「若いから大丈夫」という過信よりも、今日だけは体の信号に耳を傾ける必要がある。また、強直性脊椎炎の患者は当然であるが、腰痛のある人であれば、仕事の合間に腰のストレッチをすることも忘れてはならない。
  • 毎日経済_イ・ファヨウン科学コラムニスト、コラム提供:韓国科学技術情報研究院(KISTI) | (C) mk.co.kr
  • 入力 2015-04-24 09:25:36




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