Q.韓国では長髪の取り締まりが行われていたそうですが、本当ですか？
| A. | 昨年、KBSのバラエティ番組『ハッピートゥゲザー』に出演したアクションスター、ジャッキー・チェン（成龍、Jackie Chan）が、その昔、韓国で長髪の取り締まりに引っかかった事を公開したことがある。 映画『酔拳』を撮影した当時だったが、長い髪でソウル都心を闊歩している途中、1人のおばさんから注意するように警告を受けたという。 「取り締まる警察がいるから、すぐに隠れて」というおばさんの言葉に「私は香港人だから大丈夫だろう」と安心していたが、警察に捕まってしまった。 「香港人だと言ったら、警察が『香港人なのに、なぜこんなに韓国の言葉が上手なのか、嘘を言わずにおとなしく車に乗れ』と信じてくれなかったため、パスポートを見せて釈放された」というエピソードを紹介した。 今では還暦を過ぎたジャッキー・チェンがコミカルな武術で観客を魅了していた70年代、ソウルの街のあちこちには、即席で太い綱で結んで作られた露天拘留所に髪の長い青年と短いスカートを着た娘たちが閉じ込められて地団太を踏んでいた。 男性の長髪と女性のミニスカートの規制、国が髪の長さやスカートの長短を管理していた時代だった。警察が現れたら路地に隠れながらも、若者たちは髪をのばし、女性はギリギリまでスカートの長さを調節した。 それが、若さを噴出しようとする若者の、最小限の自由だった。鉄拳の統治者はそのような形でも容認しなかった。 「主体性なく外来の文物を受け入れる姿勢は、私たち自身の文化芸術を蝕む恐れがある。これによって、いつか私たちの文芸がなくなってしまうのであれば、重大な問題だ」（文公部の業務報告時の朴正熙大統領の言葉） 朴正熙大統領は、頭髪不良を放っ入れておく人ではなかった。自分の誕生日を祝うために訪れた親戚の髪が長いと、「この、ヒッピー族！」と追い出したという噂が出回るほどだった。絶対的な力を持った大統領が嫌いなことだから、内務部文教部の司法機関がだまっているはずがなかった。 警察は、はさみやバリカン、定規で武装した。後ろから見たとき、女性のように髪をなびかせる青年は容赦なく髪を切ったし、髪が耳を覆ったり、または後頭部の髪が襟を覆っているときには、はさみが使われた。女性のスカートが短いと考えられる場合には呼びつけて定規で計った。基準は膝上20センチ、手のひらほどの長さだ。 最近であればセクハラだと騒ぎになりそうだが、定規を持った警察は遠慮なく公権力を楽しんだ。大通りで女性の前にしゃがんで定規で計る姿は荒唐無稽な姿だった。短いなと思えば警察はスカートの裏地を切った。 ミニスカートを好んで着る女性は遠くに警察が現れると、急いでスカートが腰にやっと引っかかるくらいに下した。デート中の彼氏の任務には見張ったり、スカートを下げるのを手伝う仕事が当然含まれていた。 始めて長髪の取り締まりが行われたのは1970年8月28日。ソウル市内で15~25歳の髪の長いヒッピー風の青少年の取り締まりに乗り出して677人を検挙し、このうち29人を即決審判にかけた。法的根拠もなかった。取ってつけた条項は、社会秩序紊乱だった。やり過ぎだということを自ら自覚していたのか、1973年には「軽犯罪処罰法」を改正して、長髪と卑賤な服を規制項目に入れた。ミニスカート姿が卑賤な服装に転落したのだ。肌が透けて見えるシースルーの服を着た女性も検挙対象だった。 1976年5月からは完全に長髪の取り締まりが汎国民運動に昇格した。国民の理解不足と無関心により、長髪取り締まりの実効力がないというのが国民運動を繰り広げることになった理由だった。治安本部長が記者会見を開き、長髪を追放するために、公務員と職場の大人たちが取り締まりに動員された。 今思えば面白いことだが、当時の公職社会の雰囲気は悲壮だった。73年の一年間で長髪の取り締まりに引っかかった若者は1万人を超え、そのうちのバリカンを拒否した262人が即決審判に引き渡された。 国全体が髪の長さで争う様子を見かねた元老たちは、頭髪の取り締まりをやめるように促したが、政府はびくともしなかった。国民運動に昇格した1976年上半期に髪が長いと逮捕された人は、なんと55万9千人にのぼった。 チェ・インホ原作の映画『バカの行進』は、当時の風景を戯画として見せてくれる。ようやく手に入れた合コンの席に行こうとした主人公が警察の長髪取り締まりに引っかかり、死ぬほど逃げる。警察は笛を吹いて追いかけていき、追って追われる追撃シーンにバックグラウンド・ミュージックとしてソン・チャンシクの『何故呼ぶのか』が流れる。 自分をほっておいてくれと絶叫する青年から髪を伸ばす自由さえ剥奪していた時代、『何故呼ぶのか』は禁止曲になってしまった。 ☞ 1980年、内務部は「長髪の取り締まりが若者の自律精神を阻害する副作用を生む」という理由で取り締まり停止を指示した。以来、1988年に軽犯罪処罰法を改正、取締りの対象から長髪やミニスカートを除去した。
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- Lim, Chul
- 入力 2015-06-03 09:00:00
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