Q.韓国の時代劇を見ていると、女性が男装して本を購入したりしていますが、なぜですか？
| A. | 護衛武士の身分でついていったため、比較的自由に行動できた彼は北京の平和門の南にある「琉璃廠」で、そこの文人たちとの交わり持ち、道端に並んだ書店やお店のあちこちで自由に本を販売する姿に、とても衝撃を受けたという内容を『乙丙燕行錄』に書いています。 最近の人の考えからすると、面白い話ですよね。しかし、当時の朝鮮には本屋がなく、本を売買すること自体が非常に珍しいことだったため、一冊の本を命のように大切にした朝鮮の士大夫にとって驚くべきものでした。 ただし、考えてみると、朝鮮時代以前には朝鮮半島に書店がありました。 高麗中期に中国の宋国使節として高麗にいた徐兢が書いた『高麗図経』を見ると、高麗の王室書庫の蔵書は数万冊に達し、商家やみすぼらしい通りにも書店が二、三か所ずつ向かい合って存在していると書かれています。その後、高麗時代には、頻繁に見かけられた書店が朝鮮時代に入ってから消えたという言葉になり。 グーテンベルク（Johannes Gutenberg）に先立ち、世界初の金属活字を発明したと誇っていますが、いざ大衆はというと、本を入手する手段があまりなかったのです。グーテンベルクの印刷術が支配階層が独占してきた知識と情報を解体させる役割をしたとしたら、朝鮮の印刷術は支配階層の既得権を強固にするツールとして作用していたわけです。 世宗大王が簡単に習得できるハングルを作りましたが、ハングルの書籍はさらに珍しいものでした。国で印刷された本はほとんど漢文の本でした。国が運営する鑄字所から本が印刷されて出てくると、まずは王に一部が進上され（献上され）、その後、宮廷図書館や中央官庁、上級管理職の順に普及しました。 権力者の家で本を別途、作成したケースがなかったわけではありませんが、民間で商用に作られた本は朝鮮後期まではほとんどなかったと見てもかまいません。もちろん、個人の間で取引をした跡もありますが、本の取引は非常にまれなケースに属しました。 退渓（テゲェ）李滉（イファン）の師匠である魚得江は書店の設置を強く主張しましたが、反対されてその意志を全うすることはできませんでした。反対意見はこうでした。必要な人は個別で手に入れればいいから、あえて書店を設置する必要はないというのです。書店がある中国とは条件も異なり、もし書店を経営したい人がいるなら、あえて止めることはしないが、国で奨励することでもないという、ぬるい反応でした。 最近の改革立法を論じる場での既得権層の反論と別段変わらないことが分かります。 このような局面で、女性が本を買うだなんて。本を買う書店すらほとんどないのに、どうやって女性が？ 17世紀以降、朝鮮にも徐々に本屋が現れ始めましたが、女性が出入りするところではありませんでした。当時は官職に慣れなかった士大夫たちの不満を鎮めるために本を供給する意味が強かったと見なされます。 ただし、芸が優れていて学問に長けた女性が本を手に入れるには難しいことではなかったことでしょう。このような女性は権威のある父や、能力のある兄弟がいたはずなので、自分が読みたい本を手に入れてくれと言うだけでよかったことでしょう。しかし、世の中にどのような本があるか知りたいという欲求が発生した場合や、頑固な親兄弟が「女性のくせに」と抑止をするなら、男装をして出かけたかもしれませんね。 女性解放運動の先鋒に立っていなくても、知識に飢えた女性が男装をしている場面はよく出てきます。朝鮮時代の小説を見ると、男装した女性が登場する作品が非常に多かったりもします。 男装女性の歴史を世界的に見ると、古代アテネ五輪では選手たちが服をすべて脱い裸で運動をしたそうですが、一説には女性が試合に出場することを防ぐためだそうです。 フランスの小説家ジョルジュ・サンド（Georges Sand）や画家ローザ・ボヌール（Rosa Bonheur）のように、男性優越主義に対抗するために男装をした女性もいますが、朝鮮時代の女性は男性社会に抵抗したという記録はありません。 ☞ 徳川幕府以来、日本では出版社と書店が爆発的に増えたそうですが、朝鮮で民間が運営する書店が登場したのは17世紀以降で、ソウルの鐘路に本格的な書店が登場するのは19世紀です。 どの時代劇かは知りませんが、朝鮮中期に男装女性が本を手にれるために書店に出入りしていたなら、背景の設定が甘かったと見ることもできますね。 |
- Lim, Chul/写真=KBS放送映像キャプチャ
- 入力 2015-06-16 09:00:00
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