A. | 市内のど真ん中ではありませんが、ソウルにも野生のイノシシが現れることは事実です。先日も周辺に野山があるソウル江東地域で、イノシシ2匹が目撃されました。 食べ物を求めて山からアパート(マンション)まで降りてきて、通りがかった20代の女性にぶつかって逃げていきました。そのアパート周辺は緊急事態に陥りました。子どもがケガをするのではないかと住民が不安を感じて、警察が出動して捜索作戦を行い、3時間後に射殺されました。 越冬のために食べ物を探しに来て、命だけ失ったのですから、イノシシが少し可哀そうにも思えます。しかし、やむを得ず射殺するしかない状況でもあります。 慶北の軍威郡では、登山していた50代の女性がイノシシに突撃され、噛まれて亡くなる事件が起きました。 ソウルだけでなく、地方の大都市でもイノシシの出没は増える一方です。 しばらく前にイノシシ一家の11匹がなんと2キロを泳いで、釜山のあるアパート団地に現れました。住民の必死の通報を受けて、消防隊員とハンターがイノシシ狩りに乗り出しました。ここには狩猟同好会の会員7~8人と猟犬5匹が参加しました。 ハンターの一人は、イノシシに突撃された経験を持つ人で、危険を知っていたそうです。イノシシがアパートの近くにある埋立地に行ったという話を聞いたハンターは、すぐについていきました。イノシシがいると推測される埋立地に到着すると、危険を感知したのか、母イノシシ一頭が車に突っ込んできたりもしました。猟犬を前面に配置したイノシシ狩りは、真夜中になってようやく終わりました。 イノシシが都市に出没し始めたのは、10年ほど前からです。2009年には31回程度都市に現れたことが報告されましたが、現在は出没件数が100回にはなることでしょう。大統領が住んでいる青瓦台の近所でも、多くの目撃情報が伝えられています。 実際、青瓦台は、周辺を仁王山、北漢山に囲まれているためイノシシが生息しやすい場所です。山の中腹までカフェがあるため、イノシシが餌を探してウロウロすることも頻繁にあります。イノシシを直接見たことのない人も、家庭菜園を荒らされてイノシシの痕跡を発見したりしますね。 昔は、山でもイノシシを見かけることがあまりありませんでした。1980年代にはイノシシを育てて、自然に返すことが美談として紹介されたほどです。 ところがいつの間にか1年365日狩猟が許可されるほどイノシシが増えました。交尾をした雌が4カ月程すると4~5匹の子どもを産むうえ、山にイノシシを脅かす天敵がいないことがイノシシが増えた理由として挙げられます。 動物学者たちは、ここに地球温暖化も理由として挙げます。通常、野生のイノシシは越冬が困難で、ウリ坊は寒い季節にたくさん死んでしまうのですが、冬でもそこまで寒くない日が続くせいで、指数関数的に増えたという説明です。 「猪突」という表現があるように、イノシシは危険な獣です。最前線で勤務する兵士たちの体験談を聞くとすさまじい威力を知ることができます。額に向かって斧を振り下ろしても斧が跳ね返り、拳銃程度の銃ではイノシシの突撃も防げないそうです。 だからといって、野生のイノシシが害を及ぼすことばかりするのではありません。 農家ではイノシシをペットとして育てるおばさんもいたり、SBSテレビ番組『動物農場』では山の中腹にあるお寺を訪ねてくるイノシシが紹介されたこともあります。住職が木魚を叩くたびに訪れて瞑想にふけり、僧侶が可愛いとなでると愛嬌まで見せるそうです。
イノシシの都市出没による被害を減らす必要はありますが、だからといってイノシシを絶滅させようとしてしまっては困りものです。 |