A. | 全国に放送される番組なので相手の言葉を傾聴することとなり、結局はお互いの境遇を理解して、傷が治癒されるヒーリング効果もあります。この番組に二人の娘がいる30代の主婦が出演し、カップルルックを着ることを強要する夫を告発(?)しました。 奥さんではなく、夫がカップルルックを愛用するなんて。どれほどロマンチックな事かと羨望する眼差しもありました。番組に出てきたゲストや観客の中には、最初は「あの主婦、幸せすぎて我儘を言っているのではないか」と疑う人もいました。しかし、一日の例外もなくカップルルックを着なくてはならず、正装を持っていないため子供の学校に行ったり結婚式場に行く時もカップルルックを着るしかないという事情を聞き、雰囲気は夫人を同情する方へ変わり始めました。 年齢とともに恥ずかしいとカップルルックを拒否すると、夫は「もう俺を愛していないのか?!それなら、別れよう!」と怒ってしまうので着ないわけにもいかないと言います。 番組に出てきた夫婦は服だけでなく、靴、ヘアスタイル、ベルト、ソックスにメガネまで同じでした。二人の子供服もカップルルックです。 証人として出てきた主婦の姉は「最初はうらやましかったが、スカートさえ着ることのできない妹がかわいそうだった」とワンピースをプレゼントした話を聞かせてくれました。主婦がワンピースを着た姿を見た夫は「男がスカートをはいたようだ」と酷評して着替えを強要し、姉がプレゼントとしたワンピースはカップルルックに変わってしまいました。 主婦の事情は観客から「悩み」として認定されるには十分でした。 これほどまでにカップルルックに執着する人は、本当に例外的です。通常は、たまに着るくらいです。家父長的な社会で育った男たちは、カップルルックというもの自体思いつかない事でしょう。おそらく、現在の50代の男性の中でカップルルックを着た人は、本当に指で数えられるほどしかいないでしょう。 大家族が解体し、女性の地位が高くなることに比例してカップルルックも生まれたような気がします。それでも、男女が出会い恋が熟してくる頃、出会って100日か1年になったとかの特別なイベントがある日に着るのが精一杯です。休暇に行くときにもカップルルックを着る恋人同士が多くいますが、密かに二人の愛情を誇示する欲求が作用したせいもあるかもしれません。 しかし、結婚をしてからもカップルルックを着る人はあまり多くいません。まず、その機会さえありません。大企業は男性社員がワイシャツにネクタイを結ぶようにそれとなく強制し、自由な服装を許可する職場でも、ある程度の許容限界値はあるはずだからです。カップルルックはあまり歓迎されない服装に属すると思います。 考えてみてください。カップルルックを着た従業員を見た上司は「あの人は家がメインの人だね。夜勤は夢にも見れないだろう」と考えたりしないでしょうか。これにより、重要な仕事を任せたりしないでしょう。 30~40代の夫婦も稀にリゾートでカップルルックを着ますが、そうすると他の夫から厳しい視線を浴びることになります。生涯甘く仲良く暮らす夫婦が珍しいように、カップルルック姿の恋人もそれほど多くは見当たりません。それでさらに目立ったのかもしれませんね。 |