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【韓国コラム】メシアを受け入れがたい世の中


この前、何か見るものはないかとNetflixで探していたところ、ドラマ『メシア』を見つけた。1話だけ見て寝る予定だったが徹夜してしまった。密かに話に引き込まれていた。

シーズン1の10話を全部見た後、もしかしてシーズン2も出たのか?まだなら、いつ頃出るのか気になって検索してみると、シーズン1を最後にドラマ制作を完全にやめたという事実を確認した。

新型コロナウイルスで撮影に支障が生じたとはいえ、あくまでもそれは言い訳であり宗教界と政界の反発で、これ以上続けることができなかったようだ。ドラマを見ている間、終始ドラマに対する拒否反応を起こす人が多いだろうと思ったが、このような極端な状況までは想像できなかった。

一体、どのような内容だから制作を中断する事態にまでなったのだろうか。

ドラマを見れば分かると思うが、Netflixの作品の中で一番問題作であることは間違いない。

シリアの首都ダマスクスがアラブの武装勢力ISに陥落する直前、「アル・マスィーフ」という男が登場することでドラマは幕を開ける。

ちょうど吹きすさんだ砂嵐が空を覆い、ISの戦車隊が発射した爆弾により耳を塞ぎたくなる状況でもアル・マスィーフの叫びは響き渡る。

「歴史は終わった。アッラーが彼らを退ける。怖がるな」

43日間も続いた砂嵐で都市機能はマヒしたが、補給路が途切れ砂嵐で地上軍が壊滅的な打撃を受けたISは退く。シリアの内戦が終わり平和が訪れる。

予言が実現したため当然、追従勢力が生まれアル・マスィーフに従って多くの人が荒野に入る。しばらく荒野に滞在していた彼はパレスチナ難民を率いてイスラエルに向かう。

イスラエルの監獄に入れられた彼はイスラエルの情報機関シンバットとCIA要員に尋問を受けるが、彼らの魂の奥深くに秘めていた秘密を話して当惑させる。監獄から脱出した彼は米国に渡り、ユダヤの多くの預言者、ムハンマド、釈迦、そしてイエスのように奇跡を起こす。

世界世論は「奇跡の男」に驚愕する。

メディアは「再臨イエスか?詐欺師なのか?」疑問を抱いたまま彼の行方を追う。

実は、このような問い自体が間違っている。アル・マスィーフは再臨イエスではなく、ユダヤ人たちが数千年間待ち続けたメシアかもしれないし、イスラム教徒が崇めるムハンマドの現身かも知れないからだ。全世界の政治、宗教、文化、社会において強大な影響力を築いた既得権層は、存立基盤が崩壊する危機感を感じざるをえない。

未曾有の洪水が全米を襲うと、敬虔なキリスト教信者である米大統領は「海外の米軍を全面撤退させろ」というアル・マスィーフの要求を受け入れようとする。

これを座視することができなかった米国とイスラエル政界と諜報機関が共謀してアル・マスィーフを拉致しイスラエルに送る。彼らはそれに止まらず、イスラエル要員の安全さえ無視して飛行機を空中で爆破させる。

これとともに言論を扇動してアル・マスィーフを「魔術に長けた詐欺師だ」と罵倒している。メシアとして追従していた群衆もすぐに離れていく。

あくまでもドラマでの内容だ。

面白いスリラーと考えればいいが、世界の既得権勢力はフィクションすら受け入れがたいようだ。

ドラマ『メシア』のように、ある日突然、人類の救世主が登場したとしたら人々はどのように反応するのでだろうか。既得権勢力が自分たちの権力と富、名誉を置いて頭を下げるだろうか。

ドラマ『メシア』が、まもなくそんなドラマがあったのかさえも忘れられるように、メシアの声も世論の皮肉や群衆の笑い声に埋もれる可能性が高いだろう。既得権層でなくても享楽文化に慣れた世代さえ救世主は手に負えない存在だ。

世の中が滅びたとしても、救世主は再度、十字架にかけられる可能性が高そうだ。
  • Lim, Chul
  • 入力 2021-03-28 00:00:00




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