【韓国コラム】ああ、テス兄さん!


「AGEINテス兄さん」

酷暑が猛威を振るう中、70代の大御所歌手ナ・フナ(羅勲児)のコンサートにつけられた名前だ。

ナ・フナは昨年、秋夕(チュソク、陰暦8月15日)に放送コンサートで病魔に疲れた国民の心を慰めた。そして当時発表した「テス兄さん!」は韓国社会の隅々を駆け回るミームになった。公式ミュージックビデオは再生数が1000万回を優に超えた。

たまに、ひとしきり口を大きく開けて笑う
そして痛みをその笑いに埋める
ただ来てくれた今日がありがたくても
死んでも来てしまう、また明日が怖い
ああ!テス兄さん、この世はどうなってるんだ。なんでこんなに大変なんだ
ああ!テス兄さん、ソクラテスさん、愛はどうなってるんだ?
汝自身を知れと、 ぽんと吐き捨てた言葉を
僕が分かるはずがないよ、テス兄さん。

ギリシャの賢人ソクラテスが生きていても、ナ・フナが歌に自分の名前をつけたことに不満を表さなかっただろう。ナ・フナが歌った「テス兄さん!」には「自分を省察してみろ」というメッセージが込められているからだ。

「AGEINテス兄さん」も同じだろうか。

ナ・フナは大邱(テグ)公演を強行して世論の袋叩きにあった。釜山(プサン)BEXCOで開かれる予定だったコンサートは結局、霧散してしまった。

体育館や展示施設などの登録された公演会場以外でのコンサートは許可しないという当局の措置によるものだ。BEXCOが中央安全災害対策本部の決定により公演中止の決定を下さなかったら、ナ・フナは公演を強行したのだろうか。

分からない。

しかし、大邱コンサートでの「新型コロナが勝つか、私が勝つか」という発言を考えれば強行された可能性も非常に高い。

法に背くのではなければ他人の視線などは無視するという意志の表現だ。

ナ・フナのこのような行動に対して後輩歌手のシン・デチョルが厳しく忠告した。

「ソクラテスは「幼くして謙虚になれ、若くして穏やかになれ、壮年には公正になり、老いては慎重になれ」と言ったそうだが、歌王だから一度は自制する美徳は必要ないのですか」

昨年、ソクラテスを召喚する際に叫んだ「汝自身を知れ」を歌王がどう考えているのか分からない。ただ彼自身だけが知っているからだ。

しかし、ソクラテスが一生貧しく暮らしアテネの青年たちを堕落させたという疑いで毒杯を飲んだことを覚えていてほしい。死刑が確定した後、友人や弟子たちは脱獄を勧めたが脱獄するなら自分の教えが色あせてしまうと毅然として死を選ぶ。

コンサートのタイトルに「テス兄さん」をつけるには、少なくともソクラテスの真似でもしなければならない。

ソクラテスの人生の核心は「汝自身を知れ」ではない。ソクラテスがアテネの街で産婆術を通じて伝えようとしたメッセージは「私は私が何も知らないことを知っている(ipse se nihil scire id unum sciat)」だ。

昨年、韓国社会に多大な影響力を与えた大御所歌手の自分や韓国社会に迷惑をかけないことを願う。
  • Lim, Chul
  • 入力 2021-07-24 00:00:00