韓国半導体を襲う複合危機…米の機密要求と中の原料急騰


■ 韓国半導体企業を襲う複合危機

先月、中国の陝西省政府は城内のマグネシウム製錬企業30社に対し、年末まで稼動を中断することを命じた。対外的な理由は、中国全土に広がるは深刻な電力難だ。鉱山業界は、来年2月に開催される北京オリンピックを控えた先制的な規制措置だとも解釈する。

しかし中国政府が指示を下すや否や、1トン当たり3000ドル台を維持していたマグネシウム価格は一気に5000ドルを超え、今月初めには8250ドル(約980万ウォン)に達した。国際マグネシウム協会は「前例のない価格の上昇で、耐え難いレベル」だとし、「来年の上半期になれば価格が沈静化するようだ」と予想した。

このように中国の電力難に始まった生産統制は、世界の原材料・工業製品の供給網に全方位的なショックを呼び起こしている。サムスンと現代自動車やSK、LG、ポスコなどの主要グループは、中国内の工場の稼働に支障をきたすだけでなく、輸入原材料の価格高騰の被害までまるごとこうむることになった。米国政府は自国産業の覇権のためにサムスン電子とSKハイニックスなどの経営機密を要求したなかで、中国発の供給網ショックまでが重なり、複合危機はいっそう加速するようすだ。

■ 中国産原料の急騰

半導体業界に押し寄せたのは黄燐(白燐)とタングステン、ケイ素(金属シリコン)の価格急騰だ。燐鉱石を基盤に生成される化合物である黄燐は、NAND型フラッシュメモリの製造工程に必須の素材として使用される。またタングステンは半導体の核心素材である六フッ化タングステン(WF6)の原料だ。六フッ化タングステンは、半導体の電気回路に沿って金属の電気配線を行う金属配線工程に必要だ。このほかにもケイ素(金属シリコン)はウェハ(半導体ディスク)の基礎素材であるだけでなく、太陽電池パネル用のポリシリコンの必須原料でもある。

米国地質調査所(USGS)によると、中国は昨年の時点で世界の生産量のうちタングステンは82.1%を、ケイ素は67.5%を、黄燐は40.3%を占めた。重量が軽くて電気遮蔽率が高く、スマートフォンやPCから航空宇宙・自動車素材として使われるマグネシウムにおける中国産のシェアは90%にのぼる。

中国の地方政府は最近、電力難を理由にこれらの鉱物・レアアースの生産を全面的に統制している。雲南省政府は先月中旬、城内の黄燐とシリコンを生産する企業に、平素の生産量から90%を減らすように指示した。四川省政府も同様に、シリコンの生産の減少を命令したことが把握された。

中国政府の生産制御はそのまま、これらの鉱物の供給網ショックにつながっている。

タングステンカーバイドの価格は、今月1日の時点で、1年間で37%上昇して1キログラム当たり40ドル25セントとなった。ケイ素は7月は1万4408元(約265万ウォン)だったものが、今月4日には6万833元で、なんと322%も上昇した。黄燐の価格も同じ期間に、1万9450元から6万元に208%も上昇した。漢陽大学のアン・ジンホ新素材工学部教授は「タングステンやシリコンの他にも、半導体生産に活用される必須ミネラルの価格が上がったり需給が不安定になり、業界では冗談半分に直接鉱山を買わなければならないのかという話が出てくる状況だ」とした。

スマートフォンと家電などの情報技術(IT)企業も、マグネシウムの供給難に地団駄を踏んでいる。マグネシウムはスマートフォンとPCなど、各種電子機器のケースを作るための必要素材だからだ。 IT企業はすでに半導体の品薄と、コロナ19による東南アジアの工場稼動への支障に加え、マグネシウム不足も重なって被害はさらに大きくなることが懸念される。

中国の電力不足にともなう原材料価格の高騰で、国内の各バッテリー企業も中国監視の強化に乗り出している。

バッテリーに使われるニッケルとマンガンなどの原材料はほとんど長期契約を結んだり、豪州やチリなどの供給網の多様化で防御に乗り出しているが、素材が問題だ。バッテリー専門の市場調査会社B3(Brain of Battery Business Corporation)によると、電解液と分離膜の場合は中国企業の市場シェアがそれぞれ65.3%と51.6%に達している。中国は負極材70.9%、陽極材56%、銅箔は41%であるのに対し、韓国企業のシェアはほとんどが10%台にとどまっている。バッテリー業界の関係者も「完成車メーカーが電気自動車(EV)の生産を増やし、現在は工場で生産されたバッテリーは在庫なしで売らていくほど供給はひっ迫している」と説明した。

韓国の製造業は、中国工場の稼動支障も懸念している。ウィニア電子は中国天津の家電工場を、現地政府の指示にしたがって夜間のみ稼動している。サムスン電気の天津工場も、断続的に電力供給が制限されている。 LGディスプレイの広州ディスプレイパネル工場も、大成産業ガス(DIG AIRGAS)などの協力社の円滑な稼動が困難であることが伝えられた。広州一帯を管轄する広東省政府は今月に入って、産業用電気料金を最大で25%引き上げた。西安市のサムスン電子半導体工場と無錫市のSKハイニックス半導体工場は通常稼動しているが、協力社の生産支障による被害の可能性が提起される。

■ 30年廃坑を再稼働

国内でもレアアースの生産再開に向けた動きが盛んだ。 1970年代まで世界最大のタングステン鉱山だった江原道寧越(よんうぉる)の上東鉱山も閉山から27年ぶりの来年に再稼動に突入する。最近、タングステンは希土類と戦略鉱物として注目されており、寧越の上東鉱山は現在は5800万トンに達する世界最大規模の埋蔵量を持っていると評価される。

一方、米国の半導体機密の要求に対し、韓国政府も公式に懸念の意思を示した。ムン・スンウク産業通商資源部長官は5日、国会産業通商資源中小ベンチャー企業委員会の国政監査に出席し、米国がサムスン電子とSKハイニックスなどの国内半導体企業に各種の機密を要求したことと関連し、「フランスのパリで通商交渉本部長が米国貿易代表部(USTR)側と会い、わが国の企業の懸念事項を伝えるだろう」と述べた。すでに台湾TSMCは米国政府の要求に応じない方針を明らかにした状態だ。
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  • 毎日経済 | イ・ジョンヒョク記者/オ・チャンジョン記者/パク・チェヨン記者
  • 入力 2021-10-06 08:22:10