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[チョンセ対策の逆説 ①] チョンセは廃盤の危機…家主と借家人、どちらも不満

チョンセ(伝貰)は、韓国独特の住宅賃貸制度 

#ソウル大峙洞のHアパートにチョンセ(伝貰)で住んでいるAさんは最近、チョンセの契約延長をめぐり、家主と顔を赤くして喧嘩をした。Aさんが住んでいるチョンセ住宅は、売買価格が11億ウォン台の初めだが、チョンセ金(保証金)5億ウォンに家主の融資が4億ウォンがある、いわゆる「カントンチョンセ(空き缶チョンセ)」だ。チョンセ金と家主の融資を合わせると、住宅価格比で79%にもなる。家主は最近、住宅価格とチョンセ金が上がっているからと、5000万ウォンを上げてくれと要求してきた。代案がないAさんは最終的に、これを(5000万ウォンを)負担して、「泣く泣く」再契約した。

#家主だからといって楽ではない。ソウル玉水洞のアパートを所有していたユン・チャンミン氏は、チョンセの再契約の時期が来てウォルセ(家賃を毎月払って家を借りる制度)への切り替えについて悩んでいる。住宅価格は5年前に購入したときと比較して20%以上落ちているのに対し、ローンはまだ2億ウォンも残っているからだ。ユン氏は、ウォルセでも受けとって融資金の利子と元金を返済しようと、保証金2億ウォンのウォルセ45万ウォンで売りに出した。しかし、チョンセのときは続いていた問合せ電話は、保証金付きのウォルセに変えた途端「びったりと」途絶えた。

昔はチョンセは家主と借家人の両方が利益を得る「Win - Win」制度だった​​。しかし、今では家主と借家人のすべてが損をする足かせに転落した。家主はチョンセ受益が低下したと騒ぎ、借家人はますます上がるチョンセ金で泣き顔だ。政府は、家主が泣き顔であれば彼らを見てあげ、借家人が騒げば保護対策を出した。このように一貫性のない政府政策は、市場の混乱を加重させた。チョンセは金融と実物市場にも悪影響を及ぼした。住宅金融市場は、ますます歪曲されて、実質的な家計負債は急増している。チョンセを主とした賃貸産業が制度圏の外でどんぶり勘定式に成されて雇用と成長を妨げている。

チョンセは過去の開発年代(韓国の60、70年代のこと)の時代に、経済が急速に成長して、ベビーブームで住宅需要が増えた際は利点が多かった。家主はチョンセで受け取ったお金を活用して家に投資し、住宅価格が上昇し、多くの収益を上げた。借家人は家を利用しながら、銀行の金利よりもはるかに高いウォルセの負担を軽減することができた。

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  • < 全国アパートのチョンセ家率 >

しかし、人口減少により住宅需要が減り、低金利 - 低物価 - 低成長の状態が持続され、チョンセ制度は正反対の効果を出している。住宅価格が落ちると家主は損をする。住宅価格の下落期に損失を少しでも減らす唯一の方法は、チョンセ金を上げることだ。最近、保証金付きのウォルセが増えるのも、事実上のチョンセ金を上げる手段だ。借家人は常にチョンセ金の上昇不安に震えなければならない。2012年に62.8%だった​​アパートの住宅価格比でのチョンセ金の割合は、今年10月には70.1%まで上昇した。

政府関係者は「住宅価格が上がらない場合は、住宅価格比のチョンセ金の割合は、100%以上まで上がることもある」とした。借家人は家主とは異なり、住宅価格の下落​​リスクにさらされていない。リスクを勘案すれば、チョンセ金が住宅価格よりも高くならざるをえない構造だ。現在、チョンセ金の割合が70%であることを勘案すれば、借家人はチョンセ金が今後30%以上上がることを覚悟しなければならないという話だ。チョンセ金が上がれば、所得階層間の不平等が大きくなる。お金のある人は、チョンセで住居費を減らすことができる一方、お金のない庶民は、加重されたウォルセの負担を耐えなければならないからだ。

チョンセは金融市場も歪曲させた。政府は借家人をサポートするために、様々な資金と銀行を通じて、チョンセ資金融資の支援策を継続して増やした。チョンセ金は引き続き上がるのに、収入は上がらない借家人は融資を増やしてチョンセ資金に充当するしかない。韓国金融監督院によると、昨年末28兆ウォンだったチョンセ融資は、今年8月末基準で、32兆8000億ウォンに急増した。融資に失敗した人は家を出なければならず、融資を受けても、家計負債は引き続き増える。

チョンセのせいで二重の融資市場が形成されていることも問題だ。チョンセは借家人が銀行から融資を受け、これを家主に無利子で融資してあげる仕組みだ。借金をして借金をしてあげるチョンセ構造の下で、家主や借家人のどちらかでも債務不履行の事態が起きると金融システム的な危機に拡散される可能性が高い。

明知大学のイ・サンヨン教授は、「2012年現在、韓国の総チョンセ規模は466兆3000億ウォンと推定される」とし、「この金額のうち、かなりの量が二重融資で行われた可能性が高い」と述べた。2008年には239兆ウォンに過ぎなかったチョンセ金の規模は、わずか5年にして2倍に増えた。私金融の性格が強いチョンセ金を家計負債に加算する場合、韓国の家計負債は1500兆ウォン規模に増える。

チョンセが家を一・二軒を保有している個人を中心に形成され、賃貸住宅事業も遅れている。韓国開発研究院(KDI)は、韓国の民間住宅賃貸市場は、全住宅の41%に達する。住宅所有率が61%であるのに比べると、過度に高いレベルだ。家の人が自分の家をチョンセで貸し出し、自分もチョンセに住んでいるため起きる現象だ。

しかし、このうち、制度圏に登録された賃貸住宅に居住している割合は3%に過ぎず、民間賃貸住宅の大部分が非制度圏の個人所有者によって提供されている。非制度圏で賃貸事業がなされ、チョンセ契約と家の維持・補修に関連して、絶え間のない紛争が提起されている。賃貸事業が創出される経済的な付加価値も日本などの先進国の半分の水準に過ぎず、国内産業の均衡発展の面でも問題となっている。

<続く>
  • 毎日経済_ノ・ヨンウ記者 / コ・ジェマン記者 | (C) mk.co.kr
  • 入力 2014-11-02 17:56:32




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