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チョ・ヨンナムの「代作問題」…裁判になる場合は今後の重要な判例に

代作「花札」、著作権は誰に? 

「チョ・ヨンナムの作品はコンセプトが重要だ。『花札』は私の仕事ではない」。

7年あまりの間、歌手兼画家のチョ・ヨンナム氏(71)の作品約200点を代わりに描いたと明らかにした作家のソン・ギチャン氏(60)が、あるメディアとのインタビューで明らかにした意見だ。一点で数千万ウォンを得るほどの人気を呼んだチョ氏の作品が「代作問題」に巻き込まれた。

春川地検束草支庁(支庁長キム・ヤンス)は先月17日、チョ氏のソウル事務所などを家宅捜索したことに続き、3日にはチョ氏を被疑者の身分で召喚した。チョ氏は1973年に初の個展を開いて以来、花札を素材にしたユニークな絵を発表し、何度か個展を開いて画家としての地位を固めた。ところが「チョ・ヨンナムブランド」として販売されてきた彼の作品が、チョ氏ではなく他の無名画家によって描かれたという疑惑が提起されたわけだ。チョ氏は「いくつかの作品のスケッチを助手のソン氏が描いてくれたのはそのとおりだが、作品のアイデアは100%私のものであり、ソン氏が描いた絵は私がいちいち再び手を入れた」と釈明した。

検察の捜査が進行中であることから、客観的な事実関係を把握することは容易ではないが、作品の氏名表示権、詐欺の疑いの適用などが法的な争点になる見通しだ。特に美術界の悪習やチョ氏の道徳性論争とは別に、アイデアの提供者と絵画技術の所有者とのあいだの著作権の認定問題は、今後この事件が裁判に付された場合に重要な判例となることもありうる。

現時点では代作が許容される範囲に対する基準がなく、意見が紛々している。まず、チョ氏が絵の完成にどれだけ指示して関与したのかが要だ。チョ氏がコンセプトやアイデアをすべて提供して、ソン氏に作業をいちいち指示した場合は作品はチョ氏のものと見なすことができる。一方、チョ氏が「絵を描いて来なさい」としただけの場合は、ソン氏の作品ないしは二人の共同作品でなければならない。絵画は彫刻や版画などと違い、微細な色味と筆のタッチの違いだけでも表現が異なってくるためだ。

まんいち作品に対するソン氏の貢献度が高く認められたならば、ソン氏は「作品に私の名前を書くようにして欲しい」という、著作権法上の姓名表示権を主張することができる。また、チョ氏が購入者に作家をだまして販売したことになり、詐欺の嫌疑が適用されうる。ソン氏も詐欺の共犯またはほう助犯として処罰される可能性がある。

このような議論は、最近急増している美術品の著作権問題の一断面を示している。

文学や音楽などの著作権侵害の判例と基準は長い時間に定立されたことに対して、美術の著作物は紛争事例が少なく基準も明確ではない。チョ氏の事件以前にも、国内では最近になって美術品の剽窃・贋作論争が頻繁だ。美術界での論争をこえて、裁判所の判断を仰ごうとするケースも増えている。現代美術の著作権を比較的広く認めている海外の判断基準と比較して、国内の基準は整備が必要だという声も出ている。
  • 毎日経済_ク・ボンジン名誉記者/補佐=チョン・ジュウォン記者 | (C) mk.co.kr
  • 入力 2016-06-03 20:05:45




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