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新世界、「済州焼酎」買収…愛飲家のチョン・ヨンジン副会長、今度は焼酎抱く


  • 新世界、「済州焼酎」買収…愛飲家のチョン・ヨンジン副会長、今度は焼酎抱く
△写真=チョン・ヨンジン新世界グループ副会長が今年3月に米国ウイスキーブランド「バッファロートレース」醸造所を訪れて樽を開いている。チョン副会長は、海外出張の際に酒類メーカーや製造現場を必ず訪問するワイン愛好家として知られている。 [写真出処=チョン・ヨンジン副会長SNS]

「愛飲家」の鄭溶鎭(チョン・ヨンジン)新世界グループ副会長の酒への愛は、ワインからビールに続いて焼酎にまで広がった。新世界L&Bや新世界フードなどの系列会社を通じてビールやワインを輸入したり、手作りビールを販売していた新世界が焼酎メーカーまで買収した。業界では、新世界が酒類事業に本格的に参入したことで、国内の酒類市場にも大きな変化が避けられないという見通しが出ている。

イーマートは9日、済州焼酎と株式売買の仮契約を締結したと明らかにした。売買価格は300億ウォン水準だと伝えられた。済州焼酎は2014年10月から「サンドロン」と「コプタルラク」などの2つの焼酎を済州地域で販売してきた、済州島の地元焼酎会社だ。

現在、国内の焼酎市場は「ハイト眞露」や「ロッテ酒類」など9社が入り乱れて、年間2兆ウォン規模の市場を形成している。

昨年、済州焼酎は1億4000万ウォンの売り上げを上げたが、市場全体ではその規模は微々たるものだ。主力舞台の済州でも、シェアは0.5%にとどまる。

しかし済州焼酎そのものではなく、新世界グループが焼酎市場に進出したことが酒類市場に与える影響などを考慮すると、注目すべきだというのが専門家らの分析だ。

イーマートの済州焼酎買収にはチョン・ヨンジン副会長の格別な「酒への愛」が、決定的な役割を果たしたという分析だ。チョン副会長は焼酎1本、ワイン1本は軽く飲む愛飲家として有名だ。米国やヨーロッパなどの海外出張では、常に酒類メーカーや製造現場を訪れて直接に味見をおこない、これをソーシャルネットワークサービス(SNS)で何回か公開した。ふだんからもハルラサン焼酎や中国の高粱酒、ビールに焼酎を加えた「焼麦(焼酎+麦酒)爆弾酒」の写真もしばしば公開する。

実際、今回の済州焼酎の買収決定もチョン副会長の決定が決めてだった。今年の初めに済州焼酎から買収の意思を打診されたイーマートは、その後は4ヶ月を超えて長考を重ねるだけで、最終的な決定を下すことができなかった。特に財務担当部署では投資対効果が落ちるという理由から、粘り強く反対意見を提示したことが分かった。しかし、長期的には酒類のビジネスがイーマートの新たな成長動力になりうると判断したチョン副会長が、買収側にかじを取ってから急流に乗ることになった。

チョン副会長の酒類事業は2008年、新世界グループが酒類輸入会社の新世界L&Bを設立して始まった。新世界L&Bは現在、ワイン426種とビール75種、その他の飲料およびアルコール飲料22種を輸入・販売している。もう一つの主流事業は「デビルズドア(Devil's Door)」だ。 2014年末にオープンした手作りビール専門店のデビルズドアは、チョン副会長がブランドの立ち上げからコンセプト、メニュー構成にまで直接確認して念を入れたことが知られている。 「路地商圏侵害」という批判に耐えてまで手作りビール市場に進出したことも、チョン副会長の意志だった。

イーマートが焼酎市場に進出し、酒類業界は今後の市場の構造変化を注視するかまえだ。強大な資金力と全国ネットワークを備えた新世界の流通チャネルを考えると、無視できない競争相手が登場したためだ。事実、ロッテの場合はクラウドビールを出した後、ロッテ百貨店やロッテマートなどの影響力を利用して、速い速度で市場シェアを10%台にまで引き上げた。

しかし、イーマートの済州焼酎買収は「コップの中の嵐」に終わるだろうという声も小さくない。済州焼酎は済州地域の市場占有率が1%にも満たないほど市場支配力が弱い。 イーマートの立場からは、ソウルなど首都圏での市場を広げなければならない理由だ。

しかし、済州で生産された焼酎を長距離輸送しなければならないことから、物流の負担も小さくない状況だ。特にイーマートは今年3月、焼酎メーカーの「ムハク(舞鶴)」と手を組んで、エレクトロマンのキャラクターを活用した焼酎のPB製品を発売したが、事実上は失敗した経験がある。

焼酎市場への参入障壁も高いほうだ。すでに絶対強者として定着した「チャミスル」や「チョウムチョロム」と競争するには、イーマートの立場ではマーケティングなどに莫大な金額を注ぎ込まなければならないだろう。

しかし近年、過度の投資で財務状況が悪化しているイーマートの立場では、焼酎事業に大規模な投資をすることは難しい状況だ。このような理由から、焼酎事業がややもするとイーマートの悩みの種になることもありうるという分析が出ている。

ある酒類業界の関係者は、「酒好きのチョン・ヨンジン副会長の酒への愛が実際に酒類事業での成功につながるかは、もう少し見守らなければならないだろう」とした。
  • 毎日経済_ソン・イルソン記者/チョ・ソンホ記者 | (C) mk.co.kr
  • 入力 2016-06-09 21:42:17




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