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道を失う産業再編…答を見出せない韓国

◆ 道を失う産業再編 ◆ 

  • 道を失う産業再編…答を見出せない韓国
  • < 売上げ100大企業のうち、重厚長大の14社の企業の売上げの割合 >

中堅海洋プラント企業の役員として働いているエンジニアのチェさん(仮名)。若い頃を情熱を燃やした現代重工業での思い出をまだ忘れられない。社員だった1990年代初め、現代重工業が当時としては驚異的な規模の、数千億ウォンの海洋プロジェクトを受注して、彼は夜を明かして設計に没頭した。「世界最高」が彼の目の前にあった。しかし設計パートを冷や飯し扱いにする現実に、チェ氏は16年めで退社を決意した。彼は「会社は外形を大きくする生産・製作のみに関心があり、設計能力を育てることはいつも後回しだった」と語る。それ以後、海洋プラント景気がおさまったことから、チェさんは別の国内大企業と外資系企業を経て中小企業に席を移した。 50代半ばであるチェさんの人生は、韓国造船業界の浮き沈みそのままだ。世界を舞台に活躍したチェさんは、いまや職を心配しなければならない境遇に追い込まれた。

韓国経済の柱の役割を果たしてきた造船・鉄鋼・海運・石油化学などの、いわゆる重厚長大型産業が翼のとれた墜落を経験している。 1960~1970年代の経済開発計画の核心だったこれらの産業は、政府の支援を背にして世界市場で存在感を育ててきた。しかし成長ストーリーに酔った企業と政府は、事前の準備を怠ったことから、いまや存立すら脅かされる状況にいたった。

造船・海運・鉄鋼・石油化学などの4業種14社の大手企業の売上げは、2012年に404兆4000億ウォンで頂点を記録した後、3年後の2015年には24.3%減の306兆3000億ウォンにとどまった。売上げ100大企業のうちでこれらの大企業が占める割合も、2011年の30.0%から2015年には20.5%に下落した。

かつて輸出最高の貢献産業であった造船業は、前例のない不況に苦しんでいる。 1960年代後半から造船業に本格的に挑戦した韓国は、2000年には受注残高(クラークソン基準)の世界市場シェアが31.4%を記録し、日本(26.5%)を抑えて世界1位になった。しかし、栄光を享受した期間はあまりにも短かった。中国は2009年基準で受注残高シェアが35.2%を記録し、韓国(31.4%)を追い越し始めた。わずか9年めで1位の座を奪われたわけだ。日本が世界1位を享受した期間は44年だ。これに先立ち、世界の船舶市場を掌握していたヨーロッパは18世紀から1960年代初めまで、数百年のあいだ世界の船舶建造量の70~80%を占めてきた。

政府もまた、30年近くを失敗した政策の繰り返しで「答え」を見つけられずにいる。 1989年8月に政府が発表した「造船業の合理化」対策は、最近に政府が発表した造船業の構造調整政策と基本的な枠組みは同じだ。公的資金の投入規模が違うだけだ。 1989年にも単純に公的資金を投入して「まずは生かしてみよう」という式の支援に乗り出せば失敗を繰り返すことになるという指摘があったが、歴史は27年ぶりに繰り返した。

造船業だけではない。代表的な重厚長大産業である鉄鋼は、通貨危機直前の1997年の世界市場シェアが最も高かった。世界鉄鋼協会(World Steel Association)によると、粗鋼生産量を基準にした韓国の鉄鋼の世界市場シェアは、1997年に5.3%で最高値を記録した後は引き続き下落して、昨年は4.3%にまで低下した。きちんと花を咲かせることもできないままに、中国の景気低迷で東部製鉄などの鉄鋼企業が倒れた。

1990年代後半までは、グローバルな海運市場で韓国の地位は堅固だった。世界で最も競争力のある船社を意味するコンテナ船社の上位10社に、韓国の会社が2社もあったからだ。1997年の時点で10位を記録していた現代商船は2016年には14位に落ち、7位だった韓進海運は8位に一段階低くなり、法定管理の危機に直面している状況だ。

石油化学産業も大きく変わらない。1990年代に民間企業が進出しはじめて、世界市場に名刺を出し始めた石油化学は、2015年現在は世界4位(5.2%)まで上昇した。

しかし、輸出の約半分を占める中国市場で押され始める製品が増えつつ、汎用製品の生産に依存している国内企業の将来の見通しに赤信号が灯った。さらに大きな問題は、業況が良いと見たことから、昨年ちょっと出てきた構造調整を語る議論さえ消えてしまったことだ。

現代重工業は、今後は二度と2000年代半ばに経験した超好況の「スーパーサイクル」は来ないだろうと独自に分析した。もうこれまでよりも市場規模は半分に縮小し、酷寒の冬の中で数年を堪えるチキンゲームが始まった。
  • 毎日経済_企画取材チーム=チョン・ウク(チーム長)/パク・ヨンボム記者/ソ・ドンチョル記者/キム・ジョンファン記者/ユン・ジノ記者 | (C) mk.co.kr
  • 入力 2016-06-20 10:29:52




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