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ヒュンダイ・キア自動車デザイン総括シュライヤー社長 単独インタビュー

「ジェネシスブランドの定着に人生かける」 

■ ヒュンダイ・キア自動車のデザインを総括するペーター・シュライヤー社長単独インタビュー

  • ヒュンダイ・キア自動車デザイン総括シュライヤー社長 単独インタビュー
黒いスーツ、黒のドレスシャツ、黒ブチのメガネ、黒いブライトリングの時計、黒の靴、シャツの前襟に突き刺した黒い筆記具…彼の装いで完全に黒くないのは靴下だけだった。これもまた「ホワイト&ブラック」の縞模様で、半分は黒かった。先月30日、ヒュンダイ・キア自動車のソウル良才洞社屋で会ったペーター・シュライヤーデザイン担当社長のファッションがそうだった。先立っていくつかの公式・非公式のイベントで、シュライヤー社長に出会った記憶を思い出した。そういえば例外なくこの姿だった。

「一種のユニフォームだ」。何か戦略が敷かれたファッションのようなので尋ねたところ、やはりそうだと言う。シュライヤー社長が外部に顔を見せるのは、主に自動車のリリースイベントをはじめ、製品を報告する行事だ。「ブラックは注目される色ではない。代わりに周辺を際立たせる。人々の視線が私の服ではなく、私のデザインした車にとどまって欲しい」。

シュライアー社長は2006年9月、キア自動車のデザイン総括責任者として韓国に来た。今月1日が満10年目の日だった。大企業で高位幹部が、10年をひとつところ働くことは容易ではない。外国人は前例を見つけることすら難しい。シュライアー社長は2012年末の人事で社長に昇進したが、外国人がヒュンダイ自動車グループの国内本社社長に昇進した初めての事例だった。今ではヒュンダイ車とキア自動車そしてジェネシスまでの、3つのブランドのデザインを統括している。

- この10年間に行ったことを要約すれば、

△ ヒュンダイ・キア自動車ブランドの、一貫性あるアイデンティティを付与することだ。価値観の感じられるブランドを作ろうとした。ヨーロッパやアメリカの街で出会う多くの人々が「タイガーノーズグリル」だけを見て「キア!」と叫ぶ。私たちの製品をただの自動車ではなく、1つの「ブランド」として認識しているのだ。誇りを感じている。(虎の鼻先を連想させる格子柄のタイガーノーズグリルはキア車を象徴するトレードマーク)。

- 世の中にはファッション・建築・ヘアデザイナーまで、さまざまな領域のデザイナーが存在する。カーデザイナーはこれらと何が違うのだろうか。

△ まず時間の周期が違う。ファッションデザイナーは6ヶ月後を考えている。夏に冬服を出さない。カーデザインは15年を見通す作業だ。まず開発に4~5年かかる。新しい車を買うとふつう5年は乗る。その後5年は中古車として出回る。一つのカーデザインが作られて世界から消えるまで、最低15年はかかるだろう。一部の車は数十年が過ぎて、クラシックカーとして再び存続するケースもある。第二に、すべての新車はその前作より美しくしたり、機能的に優れてなければならない。単に新しいものではなく、進歩しなければならないというのがカーデザインの宿命だ。ファッションの世界では、カラーやポケットが小さくなったり大きくなったりするが、これは発展ではなく流行だ。

- 良い車のデザインの要件は何だろうか。美しさと機能性のどちらにより重みを置くのか。

△ その中間ぐらいのどこかだ。私は「カーニバル」は非常にデザインがうまくいった自動車だと思う。普通の人はミニバンのデザインを語るときに、美学的観点からアプローチしない。機能性に主に焦点を合わせる。ところで、良いデザインは必ず「セクシー」になる必要はない。カーニバルの利点は比率が非常に良いというものだ。長さと高さ、ホイールベースと車体、ウィンドウの大きさなどが完璧な比例を成している。このような自動車は派手でなくても十分に「美しい」。

- 車の設計の成否はどこで決定されるか。

△ 最初のアイデアはデザイナー一人のスケッチから出ることもある。しかし、アイデアひとつで作られたデザインというものは存在しない。技術的な限界と妥協して接点を見つけ、実現可能な最良の結果を生み出すプロセスは集団作業だ。リーダーシップが必要だし、会社の能力もまた支えてくれなければならない。インスピレーションよりはシステムだ。

- カーデザイナーにはどのような才能が必要なのか。

△ 美的感覚を重視するタイプがあり、エンジニアリングに重みを置く人もいる。基本となるのは自動車に対する理解だ。車をこまごまと知るべきだ。自動車技術に対する理解はもちろん、市場まで知るべきだ。コストに鈍感ではいけない。

■ 「新型i30は高麗青磁の曲線美を借用」「新型のK5、上品すぎる」お世辞に大笑い

- アイデアはどこから来たのか。

△ 韓国に来て高麗青磁を初めて見た。腰から下にすらりと落ちるカーブがきれいだった。今月発売するヒュンダイ自動車の新型「i30」は「カスケーディング(cascading)グリル」が初めて適用された車だ。グリルの格子模様をじっと見ると、下部が青磁のようにスムーズに落ちる。そんなアイデアを設計に結びつける。

- 最近も直接スケッチをする?

△ これ見える?(シュライアー社長はシャツにさした黒い筆記具を取り出し振って見せて笑った)。

- 韓国に来て設計した車の中で、最も愛着を感じる製品は?

△ 難しい質問だ。それにもかかわらず、必ずあげなければならないとすれば「K5」と「スポーティジ」を挙げるだろう。この2モデルがキア車のイメージを変えた。

- ヒュンダイ自動車とキア自動車、ジェネシスの3つのブランドのデザインを統括する。一人だとアイデンティティの区分に困難は?

△ 外国人の中でヒュンダイ車とキア車が同じグループにあるという事実を知っている人はほとんどいない。スタイルが違うからだ。キアが若く冒険・挑戦的なのにくらべ、ヒュンダイは「長兄」のようなカリスマがある。キア車はテクニカルで、ヒュンダイ車は自然だ。ジェネシスはヒュンダイ・キア車とは別だ。高級ブランドとして「サムシング・エルス」を追求する。

- ヒュンダイ・キア自動車でかなえたい夢は?また、どんなデザイナーとして記憶されることを望んでいるのか?

△ ジェネシスブランドの定着だ。ジェネシスが高級ブランドとして定着したなら、ヒュンダイ・キア自動車にも肯定的な影響を与える。その過程で私の足跡を残したい。

インタビューを終えた後、「10歳の息子が新型K5を世界で最もクールな車だと思う」という記者のお世辞に、シュライアー社長は大きく笑った。顔まで赤くなった。

■ He is ...

△ 1953年ドイツ生まれ、△ ミュンヘン大学産業デザイン学科、△1980年アウディ入社、△1994~2001年のアウディデザイン総括責任者、△2002~2006年8月のフォルクスワーゲンデザイン総括責任者、△2006年8月~2012年はキア自動車のデザイン総括副社長(CDO)、△2013年~現在、ヒュンダイ・キア自動車のデザイン総括社長(CDO)
  • 毎日経済_ノ・ウォンミョン記者 | (C) mk.co.kr
  • 入力 2016-09-18 08:46:28




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