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KAIST「コロナは韓バイオ産業の飛躍の機会」

世界が韓国製コロナ診断キットにラブコール 

  • KAIST「コロナは韓バイオ産業の飛躍の機会」

「危機だが逆説的に韓国のバイオ・医療技術の水準を世界に知らしめることのできる機会だ。情報通信技術(ICT)・製造強国の利点を生かし、抗ウイルス業界を未来の新産業として育てなければならない」。

KAISTのシン・ソンチョル総長は去る23日、大田のKAISTで毎日経済新聞とインタビューを行い、KAISTが抗ウイルス技術中心の「科学技術ニューディール」事業を提案した理由をこう説明した。

韓国は「コロナ19」の勃発初期は動揺する様だったが、今はむしろ先進レベルの防疫模範国として浮上した。多くの国が韓国の診断キットを心待ちにしているほどだ。グローバルな製薬会社が林立して参入障壁の高かった米国と欧州市場を、韓国は一瞬にして跳躍した。シン総長は「韓国がこれほど「うまくこなせるだろうとは思わなかった」とし、「バイオ・医療産業が半導体後に国家を導いて行く、新しい有望産業になりうるという希望を見た」と述べた。

昨年7月、日本政府は韓国を「ホワイトリスト(輸出手続きの簡素化国)」から除外した。すぐさま半導体・ディスプレイなど韓国の主要産業素材の輸入が制限された。シン総長は教授らの同意を得て「素材部品機器技術諮問団」を設けた。専門家らが乗り出して、日本の経済報復で打撃を受ける中小・中堅企業を助けるという発想だった。

当時、シン総長はそれを「国家的災難事態」だと思った。ところが「コロナ19」は災害を超え、「国家の生存」を心配しなければならない状況にまで駆け上がった。 KAISTは科学技術の研究を行うために設立された科学技術特性化大学で、病院や医学部はない。シン総長は「KAISTは国民の税金で運営されているだけに、危機に直面したときに国民に希望を与え、私たちができる範囲で最善を尽くさなければならないと思う」と言いながらも「感染症の拡散初期にKAISTが何をすべきか、じつはつかめなかった」と打ち明けた。

しかし同氏は診断キットが輸出されて、ワクチンと治療薬の開発に多くの製薬会社が飛び込むのを見ながら、最終的にこの問題を解決する主役は科学技術者しかないと思った。 KAISTは世界的な科学者やエンジニアが多い。シン総長は「ワクチンと治療薬を作るには科学者たちがウイルスに対する研究を優先する必要があるし、マスクと陰圧病室の不足、医療スタッフの防護服が持っている欠点を解決するためには技術者が必要だった」とし、「教授らが自発的にこれまで積み重ねてきた研究に基づいて、ポストコロナ19時代に必要な技術を提案し、科学技術ニューディール事業の草案を作成することができた」と語った。

特に最近、韓国の医療・バイオテクノロジーは診断キットの輸出で世界の注目を集めている。シージェン社とオサンヘルスケア社などが開発して生産する診断キットは、米国食品医薬品局(FDA)から緊急使用の承認を受け、世界中の多くの国から「ラブコール」を受けているからだ。シン総長は「医療先進国市場は、これまでのアジア諸国には高い絶壁と同じだった」とし、「今回の機会を通じて韓国のレベルの高い医療・バイオ技術を広めて、市場を拡大する方案を用意しなければならない」と語る。

ただし、科学技術ニューディール政策の成功と医療・バイオ分野の新産業創出のためにはいくつかの条件がともなわなければならない。

シン総長は最初に、医療界と科学技術界の疎通・コラボレーションを挙げた。 KAIST教授らが提案した科学技術ニューディール事業の最大の特徴は、既存の技術を土台に情報技術(IT)と生命科学技術(BT)を融合する試みが多いという点だ。シン総長は「科学技術系と医療は別途の領域だとしていたが、医療現場の問題を把握してみると、融合を通じてすぐに解決できる事案が多かった」とし、「今後はコロナ19確定者の世話をする病院の医療スタッフの意見を積極的に取り入れて、開発初期段階から産学官と病院が一緒に参加するならば、多くの技術の商用化がすばやく可能になるだろう」とにらんだ。

グローバルな協力を通じたワクチンと治療薬の開発にも積極的に取り組むべきだと注文した。シン総長は「コロナ19には国境がなく、異なる国でさまざまな変異が発見されているように、あるひとつの国が征服できるものではない」とし、「各国のデータが足りないから、互いに共有して研究する姿勢が重要だ」と語った。

特に韓国は現在、確定者の管理を通じて多くの医療データを確保した状況だ。逆分化幹細胞を開発してノーベル生理学医学賞を受けた山中伸弥京都大教授が日本のマスメディアとのインタビューで、「韓国に頭を下げてコロナ19のデータを得なければならない」と言ったほどだ。シン総長は「バイオ・医療分野で韓国が主導的にグローバルな協力研究をリードしていくことができる機会」だとし、「各国がデータを互いに共有するグローバル連携が強化されなければならない」と強調した。

コロナ19で私たちの社会は多くの変化の動きを見せている。政府の研究開発(R&D)システムも同じだ。これまで韓国の科学技術界は「追撃型研究が多い」「融合されていない」「政権ごとに流行している研究を追う」などの問題が持続して提起されてきた。シン総長は「政府の多くの努力で、R&Dシステムはますます先進化されている」とし、「コロナ19に緊急性・切迫を感じただけに、パラダイムシフトはより迅速に行われるだろう」と期待した。

いわゆる「BFO」への移行だ。「Best(最高)」「First(最初の)」「Only(唯一)」の前の一文字を取ったBFOにしたがってR&Dの課題が選定され、政府は研究者の自律性を最大限に確保するために「ブロックファンディング(政府は研究者に研究の方向と総額のみ決定して支援し、自律的に執行する) 」方式の研究費支援も増えるだろうと予想した。

シン総長は「破壊的革新のためには基礎科学に多くの投資が行われて、科学者が発見した理論を土台に技術者が実生活に応用しようとする試みも多くなければならない」と付け加えた。

シン総長は、ポストコロナ19時代の最も大きな変化として「科学技術者」に対する信頼をあげた。目に見えもしないウイルスが原因となったパンデミックが全世界をゆるがすことで学んだように、ポストコロナ19時代にはウイルスにうまく勝ち抜く国が先進国であり、世界をリードしていくことができる。シン総長は「最終的には科学者と技術者がその中心にあるしかない」とし、「コロナ19事態を介して科学技術をより信じ、信頼できる社会に向かっている」と強調した。
  • 毎日経済_大田=ウォン・ホソプ記者 | (C) mk.co.kr
  • 入力 2020-04-27 17:40:34




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