トップ > コラム > 人物 > インタビュー:BTSの「韓服」をデザインしたキム・リウル氏

インタビュー:BTSの「韓服」をデザインしたキム・リウル氏


  • インタビュー:BTSの「韓服」をデザインしたキム・リウル氏

  • ソウル江南区のスタジオのキム・リウル氏。同氏は「デザインのインスピレーションを得るために正しく生きる。曲がった考えは製品に自然に溶け込む」と言う。 [写真提供=リウル]


去る秋夕(チュソク)連休、米国の有名トークショーであるNBC「ザ・トゥナイト・ショー・スターリング・ジミー・ファロン」で公演が行われた。この日の防弾少年団(BTS)は韓服を羽織り、国宝第223号の景福宮勤政殿を背景に『IDOL(アイドル)』を熱唱し、慶会楼では『Mikrokosmos(小宇宙)』を唄った。韓国を代表する空間で、最も韓国的な公演が行われたわけだ。

去る6月末、わが国の宮殿の美しさをオンラインで世界に知らしめようという文化財庁の提案にBTSの所属事務所であるBig Hit Entertainment(ビッグヒットエンターテインメント)が肯定的に回答し、BTSの景福宮公演が実現した。場所が広くて視覚的に広がりがあり、ステージの設置が容易だという点などを考慮して、複数の宮廷の中から景福宮が特別舞台として選ばれた。

この日の公演で華麗なパフォーマンスとともに目を引いたのは、まさにBTSが着て登場した独特の韓服だ。 BTSの韓服が話題になると、ジコやカン・ダニエル、BLACKPINLKなどのさまざまなK-POPアイドルと、放送人やモデル、あるいはスポーツ選手などが現代的な韓服を着た姿を公開した。

ニューヨークタイムズ(NYT)は最近、Kポップスターたちが韓服を着る現象にスポットライトを当てた。 NYTは「韓国の伝統衣装である韓服はふつうは祝日に着るものだが、韓国の現代のデザイナーたちによって再解釈されている」とし、「Kポップの人気に力づけられて、BLACKPINKのジェニーが韓服を着て公演した時は大きな人気を集めた」と伝えた。

BTSが着た韓服をデザインした韓服ブランド「リウル」のデザイナーであるキム・リウル氏(本名キム・ジョンウォン、28)に会って、韓服スーツを作ることになったきっかけから、さいきん流行している韓服ブームに対する考えまでさまざまな話を聞いてみた。

- BTSが着た韓服はあなたの作品だが

△ ある日、BTSの所属事務所であるビッグヒットエンターテインメントから公演の衣装用に韓服を作ってくれという連絡がきた。「韓服スーツ」というのは21世紀型の韓服だ。このような服をデザインする人は多くないので私に連絡が来たようだ。時間が不足してメンバー全員はできなかったが、ジェイホープとシュガー、そしてジミンが羽織った韓服だけをデザインした。次の機会があればメンバー全員のための韓服をデザインしてみたい。 BTSによって(韓服スーツが)大きな話題になったが、実際に韓服スーツを着たのはBTSが初めてではない。

- 韓服スーツを着た有名人がまた他に?

△ ペプシコーラが大韓民国カルチャーエディションを披露したことがあるが、その広告に出演したジコの韓服スーツも私が作った。この広告は4月にYouTubeで公開された後、1100万回以上のヒットを上げて大きな話題になった。他にもモデルのハン・ヒョンミン氏、バレーボールの金軟景(キム・ヨンギョン)選手が「リウル」製の韓服を着た。 2016年にリウルを創業し、韓服の生地を使用したスーツは5年前から作ったが、国内で「韓服スーツ」という言葉を最初に作った人物だと思ってもらってもかまわないだろう(笑)。

- BTSなど、韓服を着るアイドルが増えた

△ 韓国人のなかで韓服をきちんと定義できる人は多くないだろう。それは私も同じだ。韓服も時代に応じてチョゴリやチマの長さがそれぞれ異なる。このように韓服は韓国人にはなじみがあるが、いざ「韓服とは何か」と明快に説明することは難しい。BLACKPINKが(『How you like that』のミュージックビデオで)着た衣装のことで、この服を果たして韓服ということができるかをめぐって論議を起こしもしたが、このようなことが韓服のグローバル化のための成長の痛みだと思う。

- キム・リウルが定義する韓服は?

△ 韓服の「モッ(粋)」は二つあると思う。ラインと生地だ。ライン、つまり韓服の線の美学を生かしたことが生活韓服だ。韓服の姿(形態)は持ち込んだが、私たちになじんだ綿などの素材で作るのが生活韓服だ。反対に、生地を生かしてスーツなどの現代服飾に適用することができる。私は後者を選んだ。韓服の再解釈だ。ふだん着として韓服の布や色味、紋様、あるいは刺繍などを活用することに重点を置いている。例えばスーツやライダージャケットに韓服の生地を適用するような試みをする。人々にこのような韓服もあるということを示したかった。

- 「リウル」というブランド名がユニークだ

△ ハングルの子音の「リウル」から取ってきた。世宗大王が口腔構造を模して「訓民正音」を創製したと聞いた。ハングルの子音と母音のうちでリウルは想像の中の単語だという。想像力を刺激するという意味で、リウルという名前を付けた。外国人はギャラクシースマートフォンを見てメーカーである韓国企業のサムスンに対する話をするが、自然に会話のトピックは「韓国」に移る。いまや韓国企業だけでなく、韓国文化について話をすれば良い段階だと思った。だからブランド名に悩んだが、「ハングル」を連想させることになった。ハングルの子音リウルは顔立ちがアラビア数字の2と似ていて、外国人も身近に感じる。

- 韓服をいくつか作ったが、完成服の販売は行わないと聞いた

△ 韓服のデザインはお金を稼ぐために始めたのではなかった。「21世紀の韓服を作る」「文化に韓服を着せる」などのコンセプトでデザインをしてきた。 リウルを大韓民国の代表ファッションブランドにしたかったので慎重だった。そんな中にBTSが羽織った韓服が話題になって、「リウル」にも多くの問い合わせが殺到しており、今では販売に対しても少し考えている。

  • インタビュー:BTSの「韓服」をデザインしたキム・リウル氏

  • 2017年に話題になった黒人モデルの韓服グラビア。


- 「リウル」はどのように始めることになったのか?

△ もともとの夢はサッカー選手だったが、転地訓練費がかなりかかるだろう?そこで転地訓練費を集めようという考えで事業を始めた。もちろん生まれ変われるなら、本来の夢だったサッカー選手に挑戦してみるつもりだが(笑)。最初は広告業界で仕事をしてみたかったが、最終的にデザインをすることになった。デザインを学んだことはなく、韓服スーツのデザインは本当に偶然をきっかけに始めた。

- どのようなきっかけがあったのだろう?

△ 全州のハノンマウル(韓屋村)を訪問した時だった。韓服を借りて着た外国人の友達が「韓服は生地がきれいなのに着てみると不便だ。だから君も着ないのじゃない?」。このように言うわけだ。その瞬間、しまったと思った。韓服は絹の服とも呼ばれるほど素晴らしいが、注意して扱わなければならない。この服を主に着ていた両班も管理が難しかったという。自然に現代人とは距離の離れた服になった。きれいな韓服の生地で着やすい服を作ることになった理由だ。 19世紀の伝統的な服を、21世紀の人に着せれば不便になるしかない。だから考え出したのが「韓服スーツ」だ。スーツは世界中の人が精通している服装だからだ。

- 事業は順調ではなかったはずだが?

△ 最初は韓服レンタル業をやろうとした。ただし一般的な韓服ではなく、高級そうなものを。全国各地の生地屋と製造業者を歩き回ったが、多くの反対にぶつかった。韓服の生地でスーツを作るのはとんでもないことだと、引き止める人が多かった。それでも確信があったからこそ、自分を信じて屈せずに押していった。韓服の名匠を訪ねて教えを受け、よりステキな韓服スーツを作るために今でも努力している。

- リウルが知られることになった決定的な契機は?

△ 2016年に「カッ(冠)」をかぶってキセルをくわえた黒人モデルに韓服スーツを着せて撮影した写真集が、SNSで爆発的な反応を引き出した。「韓服スーツ」を全世界の人に知らせる契機になった。韓服スーツのデザイナーが誰なのかに対する好奇心から、自然に私を訪れる人も増えた。韓服スーツはユニークで新しいファッションとして浮かび上がらせたわけだ。スポーツブランドのニューバランス(New Balance)が似たようなコンセプトで広告を依頼してきたことがあるが、モデルのハン・ヒョンミン氏を掲げて広告を作った。ハン・ヒョンミン氏が着た韓服スーツとスニーカーが妙に似合って、これも話題になった。その後は韓服スーツでのファッションショーも開かれたし、より多くの人に韓服スーツを知らせることができた。有名になったおかげなのか、私がロッテ七星「トレビ」の広告にモデルとして出演したことがある。その顔をあちこちで発表された(笑)。

- 創造性は必須だがインスピレーションはどこから得るのだろう?

△ とんでもない答えに聞こえるかもしれないが、正しく生きようと努力する。好きで服を作れば人も好むと考えているからだ。 (デザイナーの私が)私のやりかたで表現したときに人々が好むはずだろう。もし私の考えが歪んでいるなら、製品にそのような考えが自然に溶け込むからだ。

- 「キム・リウル方式」は何だろう?

△ デザインという言葉の意味は、じぶんの目で見てじぶんの方法で表現するという意味だろう。デザインをした瞬間に、私が持っている武器だと説明できるだろう。私の武器を最大限に表現することがキム・リウルの方式ではないかと思う。

- 今後の目標は何だろう?

△ リウルを韓国の名品ファッションブランドの隊列に加えたい。歴史が短いから名品になりにくいのではない。トム・ブラウンは20年を切ったブランドだが、ブランドの仲間入りとなった。韓国のファッションブランドの中でも「メイド・イン・パリ(Made in Paris)」のロゴをつけて売られるケースが多いが、今は「メイド・イン・ソウル(Made in Seoul)」を付けたブランドが認められる日が来ることを望む。

▲ He is...

1993年全羅北道南原で生まれた。サッカー選手をめざしたが、偶然にデザイナーになった。 2017年にブランド「リウル」をローンチした後、3ヶ月めで単独ショーを進行して業界の注目を浴びた。 BTSやジーコ、BLACKPINLKなどのKポップスターたちとキム・ヨンギョン選手などのスポーツスターの「韓服スーツ」をデザインして世界的に話題になった。韓服のデザインに加えて、「2020青年の日祭り」の総監督などを務め、さまざまな分野でキム・リウルだけの方法で彼の考えを表現している。
  • 毎日経済_イ・ヨンウク記者 | (C) mk.co.kr
  • 入力 2020-11-20 17:19:10




      • facebook icon
      • twetter icon
      • RSSFeed icon
      • もっと! コリア