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【コラム】カラオケ店の店長の夢


カラオケ店を運営中の若い店長には全国的なチェーン店を構築するという大きな夢があった。
チェーン店が300店くらいあるとカラオケ客を対象に「歌謡祭」も開きカラオケ出身のスターが作れるという希望からなかなか眠れなかった。

食事の途中も道を歩いていても、ふと思い浮かぶアイデアを実践に移す具体的な計画も立てた。YouTubeなどSNSが発達した最近は新たにチャンネルを作る必要がないため、YouTube自体を放送チャンネルにする計画も立てていた。どうすれば質の良い動画を確保するのか、リアルタイムで中継しながらどのような方式で画質を高めるのか、テレビや映画館の画面のようにワイド画面を作る方法はないのか、そちらに詳しい専門家たちと徹夜で研究に没頭した。

巨大な放送ではなくても巨大な企画会社でなくても苛酷なトレーニングなしに自分の持っている才能と実力だけでスターを誕生させる番組を制作するという夢を見た。

チェーン店の店長を株主として参加させれば自分の計画に情熱的に参加してくれるだろうという信念も持っていた。

夢を実現させるため直接運営するカラオケ店を3店舗に増やした。店舗が建っている場所も大学街、商店街、住宅街などとまちまちだった。これから管理する加盟店がどこにあっても運営ノウハウを伝授できるようにするという戦略が伺えるだろう。

新型コロナウイルスが韓国人の日常を襲う前の彼の未来は順調に見えた。チェーン店の構築はまだ一歩も進んでいなかったが風変わりなサービスが目につくという口コミで客が集まり部屋は満室だった。

新型コロナウイルスとともに店長の夢も繁盛していたカラオケ店も中止になった。新型コロナウイルスの流行が繰り返されカラオケ店を開ける日よりも閉める日が多くなった。オープンしても以前の好況は期待しにくい状況になった。

3店舗のカラオケ店の賃貸料だけで月3000万ウォンにも達する。また室内装飾をして機器をレンタルするために銀行から借りたローンの利子も彼を苦しめていった。

「社会的距離の確保」でカラオケ店を閉めることになると店長は銀行利子でも稼ぐために1日3か所でアルバイトをした。24時間コンビニで夜間アルバイトをしながら、ろくに眠れなかったほどだ。

忍苦の歳月を過ごして結局挫折した。身も心も疲れた彼はコンビニでアルバイトを終えて帰り道で朝方、倒れてしまった。

1週間ほど前、タクシーの運転手さんが聞かせてくれた話だ。カラオケ店の店長が自分の甥だそうだ。「助けてほしい」という電話を受け急いで病院に連れて行ってあげた後だと目頭を赤くした。

「建物のオーナーが賃貸料を安くしてくれればよかったのに…」
なんだか申し訳ない気持ちになって一言、伝えた。
「建物のオーナーも事情があるでしょう。まあ、銀行も利息を下げたり支払いを猶予したりしないじゃないですか」

世界の至るところに暗鬱な影を漂わせている新型コロナウイルス時代、共存の道はないのだろうか?。共生の道を探そうという声さえ聞こえないようで残念でならない。
  • Lim, Chul
  • 入力 2021-01-16 00:00:00




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