【韓国コラム】小川から龍が出たところで


「小川から龍は出ない」(意味:トンビは鷹を生まない)

大韓民国で成功するための一番目の条件が「親の財力」という、あるアンケート調査にメディアがつけたタイトルだ。

就職サイト「ジョブコリア」と「アルバモン」が20~40代の成人男女3883人を対象に実施したアンケート調査だった。
調査結果から見てみよう。

回答者のうち29.5%が成功要因として「親の財力と経済的支援」を1位に挙げた。個人の力量が22.7%、誠実性15%、人脈および対人関係10.9%、学閥および出身校それぞれ7.7%。

アンケート調査を見ると「小川から龍は出ない」というタイトルはあまりにも性急な判断だと思う。

それでもこのようなタイトルをつけた理由は多分、新型コロナウイルスで公教育がオンライン中心に実施され私教育が強化されたという社会的雰囲気にあるだろう。

金持ちたちは新型コロナウイルスでも子供の教育にあまり影響を受けない。能力のある家庭教師を採用すればそれでいいからだ。新型コロナウイルスが猛威を振るう前と同じだ。

親の財力で良い学校に入って人脈を築き余裕があるので対人関係も広がるとすれば、タイトルが妥当だと考えられる。

ソウル市教育庁教育研究情報院が「学業成就度上位25%に属する生徒100人のうち、低所得層の生徒の割合は3人にすぎない」という研究調査を扱った記事にも「小川から龍が出る」のは昔の話だという説明が付け加えられた。

親の財力は学校の成績と進学に結びつくだけでは終わらない。財力でいいスペックを築き、結局は社会進出もいい席を先取りして始めることになる。

成功の要因として親の財力と個人の力量が占める比重はほぼ同じように見えるが、個人の力量も親の財力によって支えられていると思えば、最初から勝負が決まっているということに同意するしかない。いや、それよりいい遺伝子が代々受け継がれると考えるのが正しいだろう。

「小川から龍が出る」という言葉には、卓越した遺伝因子がなく環境は悪く周辺からの支援を受けられないという前提条件がついている。

科挙及第、司法試験合格で180度違う人生を夢見ることができた昔と変化したのだろうか。

あの時代にも良い遺伝子と家族の世話が成功への近道であることは変わらない。

偶然に本当に偶然の出来事だから「小川から龍が出る」という表現を使ったのだろう。

現在、韓国社会が直面している問題は「小川から龍が出ない」という社会環境ではない。小川から出た龍であれ大河から飛翔した龍であれ、自分の目の前の事に追われ龍の本分を全て忘れているのが問題だ。

少なくとも東洋社会で龍は神通力で干ばつに苦しむ農村に慈雨を降らせる存在だった。

「小川から出た龍」の話をしていると、MBC時代劇『トンイ』の一場面を思い出す。

朝鮮第21代王の英祖の母親の淑嬪崔氏(スクピンチェシ、ハン・ヒョジュ)の一代記を扱ったこのドラマに天才として生まれた英祖(延礽君、ヨンイングン)が師匠のキム・グソンとともに勉強する場面がある。

キム・グソン:王子様は文章の勉強が面白いようですね。
延礽君: はい! 先生、私は書籍を読むのが一番楽しいです。
キム・グソン:でも、そんなに一生懸命読んで何をするつもりですか?
延礽君:え…?何をするのかって?それは分けるためではないですか?
キム・グソン:分ける…ためですか?
延礽君:はい!お母さんは、いつもそうおっしゃっていました。天が誰かに貴重な才能を与えたら…。それは、人の才能を集めてくれたものだから私のものではないとおっしゃいました。そのため、一所懸命身につけ磨いて私にそれを貸した力の無い貧しい人々に返さなければならないというわけです。
キム・グソン:ただ、自分のお腹をいっぱいにして生きろと言えばいいのに…。そんな言葉を聞かせるお母さんをお持ちだなんて、王子様の将来も心配です。

大河で生まれようが小川で龍が大きなげっぷをしようが、このような話を聞かせてくれる母親が何人いるだろうか。
  • Lim, Chul
  • 入力 2021-02-28 00:00:00