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生まれつき嘘がつけない「ピノキオ症候群」は本当にありますか?

    2014年11月から翌年の1月中旬まで放送されたSBSドラマのヒロイン、チェ・インハは生まれつき嘘を言えません。嘘をつくとしゃっくりをし始めて、本当のことを言うまで止まらないのです。珍しい病気であるピノキオ症候群を患っているからです。

    この症候群にかかった人たちは人に会うことを避けたり、口数を減らして生きていますが、彼らは本音を打ち明ける方法で生きてきました。

    それにしても、ピノキオ症候群は生きていくうえで障害となるしかありません。好きな男が出来ても駆け引きができず、二股は考えることすらできないでしょう。真実から目をそむけるとしゃっくりが始まるので、常に真実に向き合わなければなりません。

    そのようなインハに、母が天下の悪い女だという事実は、衝撃を与えざるをえなかったでしょう。
    ピノキオ症候群の記者、そんな娘を持つ母親としては最悪の事態になるのは避けられない宿命でしょう。

    このドラマが放送される間、「ピノキオ症候群」というのが本当にあるのか、そんな患者はどう治療するのかという質問が殺到しました。

    制作陣が「仮想の疾患」と明らかにしたにもかかわらず、粘り強く質問が続きました。

    もしかしたら、自分で作り出した嘘を信じてしまうリプリー*症候群の対極点にあるからかもしれません。

    * 米国の作家パトリシア・ハイスミス(Patricia Highsmith)の小説『才能あるリプリー氏』(The Talented Mr. Ripley)の主人公トム・リプリー(Tom Ripley)に由来します。この作品は1960年に『太陽がいっぱい』というタイトルで映画化され、アラン・ドロン(Alain Delon)がリプリー役を演じました。

    リプリー症候群はかなり多くの作品で題材として扱われました。

    韓国でも映画『LIES/嘘』(KBS、2013)、KBSドラマ『ルビーの指輪』(2013)、MBCドラマ『ミス・リプリー』(2011)がこれを素材にしています。

    自分の嘘を信じてしまう人とは違って、嘘をつくと顔が赤くなったりしゃっくりをしたりする症状を見せるので、正反対の様相を展開するわけです。

    リプリー症候群があるなら、ピノキオ症候群になる人もいるのでは? という考えで、このような患者がどれくらいいるのか、治す方法はないのかを尋ねてくるのだと思います。

    しかし、残念ながらリプリー症候群も韓国で作られた都市伝説です。

    この症候群に名前を貸したリプリーですら、自分の嘘を真実だと信じているわけではなく、悪辣な知能犯に過ぎません。実際ではない情報を事実と信じたり嘘をつく虚言症はありますが、自分が作り出した嘘を実際に信じる人はいないということです。

    精神科医が「リプリー症候群は精神疾患とは考えにくい」と明らかにしたにもかかわらず、メディアがリプリー症候群に関する記事を掲載したことで実際に存在するように思われました。

    もちろん「ピノキオ症候群」という用語自体をドラマの制作陣が作り出したものではありません。

    1996年スロベニアのマイケル・ティジェ博士が「心と健康」というジャーナルで相手の日常的な笑いを自分をあざ笑うことで受け入れ、これによって体が硬直する現象を「ピノキオ症候群」と命名しました。

    ピノキオが「木で作った人形」とからかわれたのを例えて名前をつけました。心理的な現象が身体への反応につながるという点では似ているかもしれませんが、嘘とは程遠いです。
    犯罪捜査で広く使われる「嘘探知機」も心理的な現象が生理的な変化を起こすという点に着目して発明されました。嘘をつくと呼吸や脈拍が速くなり脳血管の酸素量にも変化が生じるそうです。

    そういう意味で人はみんなある程度ピノキオ症候群を患っているわけです。
    この症候群があるからこそ、道徳や倫理が人間関係を支えてくれるし社会システムが保たれるのではないか、そんな気もします。

    ドラマの主人公はちょっと極端な例に属すると言えるでしょう。

    参考までに、あるコミュニティに書き込まれたコメントも紹介します。
    「ピノキオ症候群はありますか?」という 質問に対するコメントです。

    - あります。私がその病気にかかりました。嘘をつくとしゃっくりを止められません。
    - 私の友達は嘘をつくといつも鼻を触ります。
    - 彼女の顔が赤くなったら、ああ、嘘だなと一瞬にして分かります。

    このようなコメントを見ると、ピノキオ症候群が学界が公式に認めた疾患ではなくても、全然関係ない話ではない、という気がします。
  • Lim, Chul | 入力 2020-08-14 00:00:00