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北エリートの亡命・民心動揺…中国の支援が終われば金正恩体制崩壊

    「白頭血統」の長子だった金正男(キム・ジョンナム)が毒物テロで殺害された。金正恩(キム・ジョンウン)の恐怖統治が頂点に駆け上がり、3代世襲の金氏王朝が重要なターニングポイントを迎える可能性も提起されている。極端な方法で体制を維持している金正恩北韓労働党委員長が今後どのような姿を見せるのか、外部の視線は衝撃の中で見守っている。金正恩の残酷な統治方式に国際社会の制裁と圧迫が加われば、北韓(北朝鮮)の高位層内で政権崩壊の引き金を引くという予測も出ている。 △高位層の相次ぐ脱北行列、△中国の拒否感の拡大、△北韓の中産階級内の動揺など、北韓内部の亀裂信号と分析される現象も一様ではない。

    北韓体制の矛盾を最もよく示しているのは、まさに「面従腹背」現象だ。金正恩の前では服従するが、別の考えを持つというのが太永浩(テ・ヨンホ)もと英国駐在公使など、脱北した北韓高位層の共通の証言だ。太永浩もと公使によると、ヒョン・ヨンチョル人民武力部長も自分の私邸で金正恩に批判的な言辞をならべたのが盗聴され、けっきょく処刑された。政府筋は「北韓高位層の人士は、睡眠薬がないと眠れないほど気が逆立っているという証言がある」と語る。これまで金正恩の恐怖統治は権力基盤の強化に貢献したが、長期化すれば北韓体制の不安要素を大きくする要因として作用する可能性もある。北韓は内部的に金正男関連のニュースを徹底的に統制しているが、高位層を中心に急速に話が拡散していることが伝えられた。

    趙漢凡(チョ・ハンボム)統一研究院専任研究委員は、「何かの策動に金正男が直接または間接に関与しない限り、これほど無理をすることはない」とし、「このようにヒステリーにかかるほど金正恩政権が脆弱だというわけ」だと診断した。金正恩は恐怖統治で社会をリードするが、いつまで続くかは未知数だ。このような緊張状態が長期化すると権力層内部での不安と動揺が大きくなり、北韓の体制をおびやかす「両刃の剣」になりうるという観測もある。

    ▶ 恐怖政治で金正恩と幹部層が乖離

    金正恩体制の基盤が脆弱になっているということは、脱北者の類型の変化から感知される。政府が公式集計した韓国入国脱北者は、毎年1000人以上着実に続いている。しかしこれまでは生活苦などで北韓を離れるケースが多かったのに対し、最近は北韓体制に対する幻滅とより良い生活環境への憧れが結合した「移民型脱北」が増えている。チョン・ソンユン統一研究院研究委員は、「脱北民の調査を見ると、過去には飢えや生存のためだったが、最近では将来や価値、夢などの回答が出てくる」とし、「脱北民が住んでいた地域もこれまでは北と中国が境を接する奥地の地域から、最近では大都市住民の割合が急増して知識人も増えている」と語った。

    一昨年から北韓の幹部層の脱北事例が増えたことも、恐怖政治のゆえに幹部層と金正恩のあいだに亀裂が発生したことによる結果だとの観測が提起されたことがある。

    ◆ ドイツ分断の時も東独人が大挙して西独へ

    このような脱北の類型変化は、ドイツが東・西ドイツに分断されているときに、多くの東独人が西独に行き、けっきょくベルリンの壁の崩壊の背景になったことを勘案すれば単純ではない問題だ。ドイツは分断当時、東・西間のさまざまな交流を通じて東ドイツ人は西ドイツに精通していた。ビリー・ブラント西ドイツ首相が推進した東方政策の基本は、「接近を通じた変化(Change through Approach)」だった。尹徳龍(ユン・ドンニョン)対外経済政策研究院選任研究委員は、「東ドイツの変化をもたらすきっかけは、互いを十分に知ることができようにする交流を通じて作られた」とし、「このような過程が持続され蓄積されて、最終的に統一することに役立った」と語った。

    北韓の政権維持を外部から助ける最大の勢力である中国の態度変化も重要な変数だ。ドイツ統一がソビエト連邦崩壊後に発生したように、中国国内でも金正恩体制に対する不満が爆発すると、事態がどの方向に展開するか測ることは難しい。中距離ミサイルの挑発に続いて行われた金正男毒殺は、金正恩に対する中国指導部の不安や懸念が急激に上昇するきっかけになる見通した。中国内部では「北韓の予測不可能な行動は当惑をともなうほど」だとし、「国際社会で北韓を援護するところに疲れた状態で、第3国で毒殺まで犯す状況は、中国指導部の国際的威信を深刻なまでに傷つけることだ」という声さえ出ている。

    ▶ 体制維持のための統治資金流入を遮断

    金正恩体制が自らの内部亀裂に向かっているならば、国際社会の経済制裁は外部から加わる圧力だ。昨年末、国連安全保障理事会が5回めの核実験に対応して採択した決議案2321号は、北韓で金正恩が使用する可能性のある現金の流入をさえぎることに焦点を置いている。北韓の石炭輸出に上限を定め、鉱物の輸出禁止品目を増やすなど、資金源を遮断するための措置が細かく追加された。日・米などが独自に対北韓制裁を通じて北韓の経済活動を制限することも、金正恩政権の現金窓口をふさぐという次元だ。韓国政府の関係者は、「北韓に打撃を与えることができる」と評価したように、北韓の体制維持に必要な潤滑油である統治資金を締め付ける方法だ。

    金正恩を取り囲んでいる権力層と北韓体制の核心層は、全人口の約10%と推定される。金正恩体制を支える基盤であり、金正恩の運命共同体ともいえる。政府関係者は「金正恩政権が維持されるためには、彼らかの忠誠心が絶対的に必要だ」とし、「金正恩はその反対給付として、北韓内で快適な生活を確保する互恵的な関係」だと述べた。端的な例として、昨年開催された朝鮮労働党7次党大会で、参加者らは中国産の45インチLEDテレビを贈答品として受け取った。党大会の参加者は約3600人と推算された。これとあわせて平壌市民には1カ月分の配給がボーナスの概念で支給されたし、世帯別に菓子類も供給されたことが分かった。

    このように金正恩が体制維持のためにかかる費用の源を遮断すると、結果的に核心層の内部で亀裂が起こるきっかけになることがあるということだ。

    ▶ 予告なしに訪れる急変事態への準備必要

    金正男毒殺で北韓体制の脆弱性が明らかになった。ドイツの統一がある瞬間に予告なしに訪れたことを教訓に、北韓の状況を注意深く観察して備えなければならないという声が出てくる理由だ。

    一方では、急変事態につながるにはまだ北韓内部の監視体制と政府の組織が非常に堅固だという評価もある。チョン・ソンジャン世宗研究所統一戦略研究室長によると、△北韓の最高指導者とシステムの同一視、△金正恩のリーダーシップに対する理解不足、△公安機関と軍の影響力を過小評価、△経済中心のアプローチの限界などは北韓の早期崩壊論を生んだ背景だ。
  • アン・ドゥウォン記者 | 入力 2017-02-19 09:07:42