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[モノの哲学] 爪切り - 容姿端麗の理想

    すべての家に一つずつはあるにもかかわらず、ホラー映画の監督は絶対に使用しないものがあるとしたら何だろうか。それは「爪切り」だ。

    東洋でも西洋でも「幽霊」と「魔女」の必須条件は長い爪だ。指の長さは問題として取り上げられないが、爪の長さは問題になる。世界共通で、子供の幽霊遊びには両方の手を顔の周りに持って来て相手の子供を驚かせる仕草が登場する。この時、子供が持ち上げてみせるのは両手ではなく、実は十本の指の先に長く伸びていると仮定されている「爪」なのだ。ホラー映画を撮る監督が爪切りを好むはずがないではないか。

    爪は指の一部でありながら、柔らかな皮膚の表面を覆っており、さらにその先に突出して伸びている骨のようであるという点から、指と分離されたように見える身体部位だ。肉でも骨でもなく、肉と骨の中間に属する何かである気もする。ちょっと油断すると見違えるほどのスピードで伸びているという点で生長点が集中しており、表面化されている奇妙な身体部位だ。

    そのためだろうか。韓国の民間に伝わるタブーには夜に爪を切ってはいけないという話がある。夜に削った爪をねずみが拾って食べると「人」になるというのだ。世界のどこにでも爪を習慣的にかじる子供たちがいるが、大人はそれを「縁起が悪くなる」と注意する。現代人は忘れているが、これは衛生上の問題ではなく爪に対する原始的なタブー意識がかみ合っているのだ。子供の頃に実施していた小・中学校の容姿検査では手を出して爪の長さを先生に検査してもらうことが常だった。なぜ文明は、身体の一部である爪を切ることを「容姿端麗」の問題と考えているのだろうか。

    足を持つすべての獣が爪を持っているが、爪を継続的に切って整えるのは人間しかいない。爪切りは、幽霊と生きている人の違いを表わすモノであると同時に人と獣を区別する道具だ。この小さなモノは「人」の内部に折り重なっていて、一瞬だけ油断すると湧いて出てくる「獣性」と「幽霊」を呼び起こす。これらのモノは文化と文明という名前の「人らしさ」が自然に生じたり、不動の物理的な実体ではなく、絶えず管理して制御しなくてはいけない動詞的な行為であるという事実を暗示するのではないか。
  • 毎日経済 ハム・ドンギュ文化評論家 | (C) mk.co.kr | 入力 2015-01-16 16:08:34