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[コラム] 聞きたい事だけ聞く

  • 1200隻のペルシア艦隊は、ギリシャの戦艦がとどまっていたサラミス島海峡を圧迫していた。
    テミストクレス(Themistocles)が率いるギリシャ艦隊の規模は約370隻。戦艦の大きさや兵士の数でペルシア軍が圧倒していた。

    さらに、ペルシア軍には海戦の経験豊富なエジプト軍とフェニキア軍が配置されていた。

    B.C480年ギリシャとペルシア間の第二次戦争当時のことだ。

    ギリシャの艦船が逃げさえしなければ、勝利はペルシアの方へ傾いている状態だった。ペルシアの王、クセルクセス(Xerxes)はエジプト軍を退却路に配置し、退却路を塞いで物資の補給さえ遮断した。戦闘を行わなくても勝利を収めることができるはずだった。

    クセルクセスの前に泳いで逃げたテミストクレスの奴隷シキンヌス(Skinnus)が現れた。彼はギリシャの軍隊が混乱に陥ったという耳寄りな情報を流した。奴隷の言葉を信じたクセルクセスは、進軍のラッパを吹いた。

    ギリシャの艦隊は海峡の狭い空間にペルシア戦艦を閉じ込めて攻撃を始めた。図体は大きいが機動力の低いペルシア艦船は、互いにぶつかりながら沈み散らばり、逃げた戦艦はギリシャ海軍の餌になっただけだ。

    クセルクセスに情報を流した奴隷はいち早く消えたが、彼の行方を注視するペルシア軍人は一人もいなかった。

    クセルクセスはサラミス海峡で戦艦、ベテラン船員、勇猛な軍人、そして自分の兄弟まで失ってしまった。

    無事に生還した奴隷のシキンヌスは、自由を得てアテネ市民となり、立派な事業家へと変貌した。

    クセルクセスが奴隷の話を聞かなかったら、世界史はどうなっただろうか?
    ギリシャとローマ文明が歴史書に登場しなかったかもしれないし、キリスト教も伝播しなかった可能性が高い。

    クセルクセスはなぜ奴隷の言葉を聞いたのだろうか?
    彼が聞きたがっていた甘い言葉をささやいたからだ。討論が好きなギリシャ人だから、どうして戦うのか簡単には決定を下せないだろうし、同盟軍とはいえ、都市国家全域から集まっただけに、一糸乱れぬ行動はしにくいだろうと予測していたからだ。

    自分が聞きたい話を誰かに言われると聞き流せない。

    新型コロナウイルスで、韓国で論争になっている中国人の入国禁止も政派によって自分たちの耳に入る情報だけを選ぶ。わずか1週間前に会った50代のタクシー運転手は「新型コロナウイルスの発源地は中国だが、今でも月に40万人ほどの中国人が入国している」と怒っていた。

    2月以降、中国人の入国者が大幅に減少し3月には1000人を下回ったが、ずいぶん前の統計数値で同調することを望んでいた。

    SNS、YouTubeで作成される偽ニュースは、聞きたいことだけ聞きたい人を満足させる。
    聞きたいものだけを聞くと、どんなことが起こるのか歴史が教えてくれているのだが、新型コロナウイルスで腹を立てた人は、誰かを噛み砕かないと耐えられないようだ。

    そのため各陣営のリーダーの役割が大きくならざるを得ない。聞きたがる言葉だけ聞かせてあげずに、嘘と真実を選り分けて口を開かなければならない。少なくとも偽のニュースがはびこる世の中から抜け出すように力を合わせなければならない。今日そうしなければ、明日は偽ニュースの矢が誰を狙うか分からないからだ。
  • Lim, Chul | 入力 2020-03-13 00:00:00