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自己幹細胞でパーキンソン病治療…世界初で成功

キム・グァンスKAIST教授 


    • KAIST出身でハーバード大学医学部のキム・グァンス教授は、幹細胞を活用したパーキンソン病の臨床治療に世界で初めて成功した。 [写真提供= KAIST]


    「今回の研究結果はパーキンソン病(Parkinson's disease)の治療のための新しい治療方法に踏み出す第一歩だ。今は幹細胞による治療でパーキンソン病を治療するための本格的な臨床実験とそのための米国食品医薬品局(FDA)の承認を準備している」。

    韓国科学技術院(KAIST)で博士号を取得して現在はハーバード大学医学部の教授として在職中のキム・グァンス教授は、世界初の幹細胞を活用した臨床治療に成功した。現在、母校のKAISTで海外招聘客員教授と総長の諮問委員を務めているキム教授は、神経科学と幹細胞分野で世界的な権威だ。

    キム教授は、「今回の研究チームは世界初で、患者の皮膚細胞をドーパミン神経細胞にする逆分化幹細胞(細胞を分化前の段階である生細胞に戻す技術)技術でパーキンソン病の患者を臨床治療することに成功した」とし、「新しい臨床治療の結果、患者の免疫システムの拒否反応なしに、靴ひもを結んだり泳いだり、あるいは自転車に乗るほどの運動能力を回復した」と研究成果を説明した。

    パーキンソン病は、脳の神経伝達物質であるドーパミンを分泌する神経細胞が消えることから発症する疾患だ。特に筋肉の震え、ゆっくりとした動き、身体硬直や歩行や言語障害などの症状をともなう。ドーパミンを分泌する神経細胞が原因の病気であるため、パーキンソン病を治療するためにはドーパミンを継続して供給しなければならない。これまではドーパミン薬を使用して供給したが、腫瘍形成などの副作用の問題があった。

    キム教授が率いる研究チームは、患者本人の皮膚細胞を、ドーパミン神経細胞に変形させて脳に移植する方法を使用してこのような問題点を解決した。自己細胞を使用したことから、免疫抑制剤の投与なしに移植された細胞は拒否反応なしにドーパミン神経細胞に分化して、ドーパミンをうまく分泌できるようにすることができた。キム教授は、「パーキンソン病の自己幹細胞治療のために、患者の体細胞を安定的に幹細胞に転換した後、これを再びドーパミン細胞に分化させた後に脳に移植しなければならない」とし、「このすべての過程が有害性や副作用のなしに、効果的に進行されなければならないことから、これまで自己幹細胞治療のための研究に長年集中してきた」と明らかにした。

    キム教授は特別な縁をきっかけに、パーキンソン病の治療のための自己幹細胞の研究を開始した。同氏は2013年にジョージ・ロペス(George Lopez)と呼ばれる見知らぬ医師から1通のメールを受け取った。ロペス氏は本人がパーキンソン病を診断されて苦しんでいるが、なんら恩恵を受けなくてもいいからパーキンソン病の研究を行って欲しいと依頼した。今回の研究で2度の手術を経て自己幹細胞の移植を受けたロペス氏は、その年からキム教授の研究チームに対する全幅の支援を行った。キム教授は「2年間のあいだ磁気共鳴画像装置(MRI)の画像と医療スタッフの検査結果、腫瘍形成などの副作用なしに患者の運動症状が好調したことを確認した」とし、「このような結果は自己幹細胞の移植治療がパーキンソン病患者の治療に応用された世界初の事例」だと説明した。

    ただしキム教授は、「まだ一人の患者に治療が試みられただけで、安定性と有効性に対する正確な実証のためには今後さらに多くの臨床研究が必要だ」と強調した。同氏は「10年ほど後続研究を行えば、自己細胞治療はパーキンソン病の治療のためのもう一つの一般的な治療方法として定着するだろう」と付け加えた。現在、キム教授はより多くの患者を対象に臨床試験を行うためにFDAの承認を受けようとしていることが伝えられた。

    1983年にKAISTで生命科学の博士号を受けたキム教授は、マサチューセッツ工科大(MIT)、コーネル大学、テネシー州立大学などを経て、ハーバード大学医学部マクレーン病院(McLean Hospital)で分子神経生物学研究室所長を務めている。

    キム教授は2017年、臨床適用が可能な新しい逆分化技術に関する論文を発表した。今年はこれまで開発した技術を土台に、ドーパミン神経細胞をパーキンソン病がある動物に移植して、副作用なしの症状が好転することを立証することもした。

    一方、パーキンソン病は認知症や脳卒中に加えて3大変性脳疾患にあげられる疾病で、国内のみで11万人に達する患者がいる。特に前世界ヘビー級チャンピオンであるモハメド・アリなど多くの有名人が闘病した病気であり、世界的には600万人から1000万人に達する患者がいることが知られている。
  • 毎日経済_イ・ジョンファ記者 | (C) mk.co.kr | 入力 2020-06-02 17:25:36