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【韓国コラム】はしご外し

  • 医師たちが「はしご外し」をするのに、また成功をおさめた。
    政府の医大定員拡大と公共医大設立に反対してストライキ(集団休診)に突入していた医師たちが、政府と合意した。
    新型コロナウイルスが安定するまで議論を中断するというのが合意の骨子だ。

    新型コロナウイルスがいつ沈静化するか分からない状況なので、医大の増員、つまり医療人材の拡充策がいつまた議論されるか分からない。そして政権が変われば、いつそのような話が交わされたのか、すっかり忘れてしまうこともあるだろう。

    医師たちの集団行動は初めてのことではない。2000年の医薬分業反対、2007年の医療法改正反対、2014年の遠隔診療反対など、すでに3回にわたって集団行動を行ったことがあり、その度に勝者は医師たちだった。

    集団行動は行わなかったが、軍部独裁時代にも医師たちはロビー活動を通じて自分たちの意思を貫いてきた。医大を作ってほしいという地域住民の願いを聞いた国会議員と地方大学の念願を聞き入れようとする教育部が攻勢に出ても、医師増員はダメだという医師の意思を曲げることは簡単ではなかった。

    このような騒動を経たせいか、韓国の医療人材体系は少し奇形的だ。医師に比べて看護師と薬剤師が多い構造になった。看護人材も不足しているが、劣悪な労働環境のため看護師免許を使わない人がいるだけで、排出する人材はたくさんいる。医学大学の新設を要求する地方大学に薬学大学の誘致を許可したため、医師に比べて薬剤師は多い状況だ。ある研究によると、韓国の薬局は病院に隣接して処方薬を調剤する場合、月平均1,086万ウォンほどの収益を上げているが、近くに医療機関のない町の薬局は月平均70万ウォンほどの赤字を出している。

    薬学大学は、すでにすべての総合大学が保有している状況なので、政府が増員を論議する理由も薬剤師がストライキに出る理由もない状況だ。

    人口1000人当たりの韓国の医師数はOECD平均の3.4人にはるかに及ばない2.3人だ。OECD国家の中で最下位だ。

    医師の絶対数が足りないだけに医師たちの労働強度も強い方だ。OECD医師の平均値に比べ、韓国医師の診療件数は3.15倍になる。韓国大学病院の内科医は一日平均80~90人の患者を相手に診療をする。多い時は130人に達する時もある。

    この状況でまともに診療ができるだろうか?患者は患者なりに不満で、医師たちはきつい仕事のため、余暇を楽しむ暇もない。

    医師数が増えるなら患者も医師も皆いいはずなのに、なぜ医師たちは命がけで医学部増員に反対するのだろうか?

    様々な理由を挙げているが、考えてみると結局お金の問題に帰着する。
    OECD諸国の医師賃金は、一般労働者より2.75倍ほど多い。これに比べ、韓国の医師は一般労働者に比べ5.45倍、個人医院の場合は6.1倍の所得を上げる。医師の数が増えれば休み時間が増える代わりに賃金が減る。

    医大増員に反対する根底には、医師という職業の希少価値を維持したいという欲求が内在している。
    延世(ヨンセ)大学のチョン・ヒョンソン教授(保健行政学)は、ある新聞への寄稿文で「私はすでに上がっているから、他人は上がってくるなという「はしご外し」の典型的な姿だ」と指摘した。

    他の人がよじ登ってきたら手狭な空間になるのを防ぐという意味だ。

    昔、地方大学の医学部新設に反対してきた医師協会の幹部からこんな言い訳を言われたことがある。

    「医師の数が増えれば国民医療費の負担が増加します」
    「どうしてですか?」
    「医師の平均報酬が3億ウォンだとすると、医師の数だけ医療費がかさむのは当たり前でしょう」

    こんな算法が現実には通じないだろう。一時期有望な職業だった薬局、特に町の薬局が赤字で廃業する状況を見て「自分の分け前は自分が守らなければならない」という医師たちの覚悟が固まったようだ。
  • Lim, Chul | 入力 2020-09-04 00:00:00