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[世智園] ポンゲタン(稲妻炭、着火炭)


  • [世智園] ポンゲタン(稲妻炭、着火炭)
ガスや石油ボイラーがなかった時代、真冬に練炭の火を絶やしてしまうことは、主婦の最大の過ちだった。隣の家から火がついた練炭を借りることができればいいが、それもできない場合は、仕方なく冷たい部屋の床の上で寝なければならないからだ。そんな困難を解決した製品は、まさに「ポンゲタン(稲妻炭、着火炭)」だった。練炭を平たくした形で、乾いたおがくずと炭粉がついている部分に火をつければ、一瞬にして火がつく。

庶民たちに有用に使われていたポンゲタンは、最近はとんでもないことに、自殺の道具として使われている。2004年には50人に過ぎなかったポンゲタンの自殺死亡者数は、2013年には1825人へと10年ぶりに30倍以上に増えた。2008年に有名芸能人がポンゲタンを燃やして自殺し、「ウェルテル効果(Werther effect)」が現れたためだ。一酸化炭素中毒は、痛みが相対的に少ないと知られ、美化されている側面も大きい。

保健福祉部が最近では自殺率を下げるため、ポンゲタンの販売規制案を積極的に検討することにした。これは、香港で試みられ効果が現れた方法だ。香港では、1998年にある女性化学者がバーベキュー用の木炭を燃やして自殺を試みたことが報道され、模倣自殺が急増した。そこで、特定の地域でポンゲタンを棚からなくし、10分間待たせた後、電話番号を記録するようにしたところ、自殺が半分も減少した。

もちろん、このように接近手段を遮断すれば、他の方式で自殺することもあるだろうが、自殺者が衝動的に実行に移す事を考慮すると、時間を稼ぐ効果があることは明らかだ。2011年に猛毒性農薬の「グラモキソン(Gramoxone)」の販売を中止した後、農薬による自殺死亡者が2011年の2580人から2013年に1442人に減ったことも似たような事例だ。

しかし、ポンゲタンの販売を制約すれば、練炭産業全体に悪影響を与えうるという反論も少なくない。また、政府の規制に対し、根本的な原因の解決は回避したまま、手段のみを削除するという非難も殺到している。しかし、10年以上経済協力開発機構(OECD)加盟国中、自殺率1位という不名誉を抱き続けるのか。

海外でも自殺の道具への接近を防ぐ予防策をとっている。また、フィンランド、オーストラリアなどの自殺率を下げた国は、メディアが自殺関連の報道を最大限自制するという。罪のないポンゲタンだけを防ぐのではなく、自殺を減らす様々なアイデアを集める時だ。
  • 毎日経済_シム・ユンフイ論説委員 | (C) mk.co.kr
  • 入力 2015-04-06 17:25:12




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