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[社説] スティーブ・ユの入国、防ぐことが能事ではない


  • [社説] スティーブ・ユの入国、防ぐことが能事ではない
数日間、スティーブ・ユ(ユ・スンジュン)がポータルサイトの検索語順位の上位を占めている。しばらくの間「本当に反省している。韓国に来たい」と泣いた放送で注目を集め、まもなく放送が終わってから罵り言葉が聞こえる放送事故で一気に「たくさん読まれた記事」1位になった。

彼を擁護する書き込みを投稿しても、ツイッターでメッセージを残しても反応はすぐに熱くなる。

ユ・スンジュンは韓国から入国を拒否された人物だ。10年余り前に軍の身体検査を受けて入隊を控えた状況で、外国での公演を理由に兵務庁の職員を保証人に立てて出国した後、米国の市民権を得て韓国国籍を放棄したことにより発生した事件だ。

以来、韓国行きの飛行機に乗った彼は空港で入国を拒否された。米国市民である彼が韓国に入ることのできない理由は、ただ一つ、「韓国人を怒らせた罪」だ。軍隊に行くからと人気を得た歌手、軍が広報モデルにと念頭に置いていた彼は、いざ時がきたら韓国国籍を放棄してしまったのだ。

法的に米国市民権者であるスティーブ・ユの入国を防ぐ理由はあまりない。韓国と米国は観光や親戚を訪問するための短期の旅行に対してはビザを免除する協定を締結しているため、実際にはビザの審査も必要ない状態だ。

韓国の出入国管理法の条項を入念に確認してみても、該当する項目は「経済秩序又は社会秩序を害したり、善良な風俗を害する行動をするおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある人 」程度だ。

いわば、歌手スティーブ・ユは韓国の善良な風俗を害するおそれがある疑いを受けているせいで入国を拒否されていると見ることができる。彼が害する韓国の善良な風俗とは、うそを日常茶飯事のようにして、偽りで人気を得て、軍に行かないという言葉に要約することができる。

韓国で軍隊に行かなくても大口をたたきながら暮らしている人はいくらでもいる。聴聞会を控えている黄教安(ファン・ギョアン)首相内定者も軍免除を受けている。黄氏は、77年から79年までに3回も徴兵検査を延期し、最終的には慢性じんましんを理由に軍免除を受けた。現政府と与党の実力者の中には、肺結核、顎関節症、椎間板ヘルニアなどの様々な疾患により軍免除を受けた者が数多い。

米国市民権を放棄して自発的に兵役義務を終えた歌手ジェイ・ユンが自身のツイッターに「そんなに侮辱するつもりなら、あたりまえなのは何か、この国でも悪知恵を働かせて楽に暮らしている君は何なのか、そんな君を育てた親はなぜ政治をしているのか」と投稿したのは、軍隊に行かなかった人に対するダブルスタンダードを狙ったものかもしれない。

過去のスティーブ・ユの行跡は当然非難されるべきものだ。彼の人気が歌や舞台掌握力だけでなく、教会に通う模範青年というイメージからも発生していたため、このようなイメージを一挙に崩したことに対する非難も彼が甘受しなければならない役目だ。

しかし、韓国入国を防がなければならないかについては、 振り返って見る余地がある。彼が韓国に来て 就労ビザを取得して、放送活動やコンサートを開くことは、ほぼ不可能に近いと見られる。ただ韓国にいる親戚や知人を訪問したり、子どもに韓国の地を踏ませてあげる目的で韓国に来ることまで防ぐ名分は弱い。さらに、一介の芸能人の入国を政府と国民が阻止しているという状況も見苦しい。

スティーブ・ユを許しがたいほどお憎いなら、彼を無視すればいい。彼の行動や、言葉に耳を傾けず、一切無視してしまうのが人気で生計を立てて暮らす芸能人には最も残酷な刑罰ではないだろうか。
  • O2CNI_Lim, Chul/写真=アフリカTV
  • 入力 2015-05-31 09:00:00




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