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[世智園] 宮ステイ


  • [世智園] 宮ステイ
スペインで旅行客に最高級ホテルより人気のある宿泊施設は、パラドール(Parador)だ。スペイン語で城(castle)という意味のパラドールは修道院や古城、領主の家などの歴史的建造物を改装した国営ホテルだ。

スペイン政府は1910年から古城の宿泊施設化を可能にし、現在、スペイン全土に100か所余りが運営されている。特に中世都市のトレドやロンダ、アルハンブラ宮殿の中にあるグラナダのパラドールなどは、壮大な外観に息を呑むような中世ヨーロッパの絶景が目の前に広がって外国旅行者の訪問が絶えない。外観は古風ながら内部はモダンに改装して、古典的な家具や芸術作品を配置して古色蒼然な魅力を発散する。宿泊料は20万~40万ウォンで、旅行者の関心が高まって旅行会社が​​パラドール商品を出したりもした。

1666年に造られたロンドンの南にあるクリブデン城(Cl​​iveden house)は、歴史的建造物というよりは高級ホテルとして有名だ。チャーリーチャップリン、米国のルーズベルト大統領(Franklin Roosevelt)などが泊まって、より有名になったこの古城は、一日の宿泊料が最大300万ウォンになるにも関わらず、年間1万3000人が利用している。イギリス文化財保護機関であるナショナル・トラスト(National Trust)がホテルの専門業者に運営を委託しているが、莫大なメンテナンスコストがかかるものの年間数百億ウォンの黒字を出しているという。イギリスは外国首脳の訪問時もバッキンガム宮殿(Buckingham Palace)に泊めて確実な感動を抱かせる。朴槿惠(パク・クネ)大統領と盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の国賓訪問中の宿泊施設もバッキンガム宮殿だった。

「歴史的な建物で一晩」こそ、その国の歴史や文化を体験するための最良の方法だ。歳月の跡、歴史の一こまを経験してみたい欲求は誰もが持っているからだ。ヨーロッパの観光大国が文化財を保存しながら宿泊で収入を作る柔軟を政策を展開しているのに対し、韓国はこれまで「閲覧式の観光」の枠組みを崩すことができずにいた。2009年から「息づく宮殿作り」という標語を掲げて宮殿を利用する45個のプログラムを作ったことは、それでも発展したものだ。昌徳宮の月光紀行、昌慶宮の夜間特別拝観など、ヒット作はあるものの、古宮の宿泊体験プログラムはまだない。

そのような点で、文化財庁が昌徳宮楽善斎を一般に開放する「宮ステイ」を推進することにしたのは朗報だ。楽善斎は高宗の娘の徳恵翁主と英親王の夫人である李方子女史が1989年まで住んでいた所だ。キッチン、バスルームなどの内部改造の問題により、文化財委員会の承認を経なければならない。石造りの建築物が大部分であるヨーロッパとは異なり、韓国の文化財の多くは木造建築であるため、火災による焼失の可能性を挙げて開放に反対する世論もある。しかし、人が住んでいない家はすぐに廃家になりやすい。文化財の毀損を防ぐ対策だけしっかりと建てれば、文化財保存と収益という二匹のウサギを捕まえることができる。「故宮での一晩」商品はベストセラーとなることだろう。
  • 毎日経済 シム・ユンヒ論説委員 | (C) mk.co.kr
  • 入力 2015-07-01 17:14:13




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